地域の暮らしに寄り添い、住まいの困りごとを根本から整える
甲南防疫株式会社 代表取締役社長 山口 壮嗣 氏
防虫防鼠管理を主軸に、法人向けの衛生管理から一般家庭の困りごとまで幅広く対応してきた甲南防疫株式会社。創業から50年以上にわたり培ってきた経験をもとに、現在は地域の高齢者をはじめとする住まいの課題にも目を向け、新たな事業展開に取り組んでいます。虫が出たから薬をまくのではなく、虫が出にくい環境を整えること。目の前の依頼に応えるだけでなく、その先にある暮らしや事業の安心を支えること。長年続けてきた防虫防鼠管理の仕事への想い、組織づくり、そしてこれからの展望について伺いました。
目次
防虫防鼠管理を通じて、見えにくい安心を支える
——現在の事業内容について教えてください。
当社の主な業務は、防虫防鼠管理です。創業から50年以上、この仕事を続けてきました。お客様は法人が中心で、施設や倉庫などにおける衛生管理に関わっています。一度お付き合いが始まると継続してご依頼いただくことが多いものの、その一方で新たに入り込むことが難しい面もあります。
そのため、現在は法人向けの防虫防鼠管理を続けながら、一般家庭向けの対応にも少しずつ力を入れています。たとえば、ゴキブリで困っている、蜂で困っている、ネズミが住みついているといったお問い合わせを受け、ご自宅へ伺うこともあります。
そうした家庭内の困りごとを解決する事業を、新たに始めているところです。単に薬剤を使って駆除するだけではなく、虫やネズミが出にくい環境をつくることも大切にしています。
——会社として大切にしている理念やビジョンはありますか。
この仕事の面白さを、もっと多くの方に知っていただきたいという想いがあります。それ以前に、こういう仕事をしている会社があるということ自体を知っていただきたいです。
私自身も、以前は虫で困ったとしても、業者に頼むという発想がありませんでした。法人と防虫防鼠管理の会社が継続的に付き合っているということも、知らない方が多いと思います。
つまり、業界としてもかなりニッチな分野です。だからこそ、この仕事がどのように社会や暮らしを支えているのか、どのような面白さがあるのかを伝えていければと思っています。
防虫防鼠管理は、ただ虫を取る仕事ではありません。トラップを見て生息状況を確認し、環境の変化を読み取り、必要な対策を考えていく仕事です。災害時には消毒で走り回らなければならないこともあります。平時も非常時も、皆さんの困りごとを解決し、世の中の役に立つことが大切だと考えています。
先代の仕事を受け継ぎ、公益性のある仕事として磨いてきた
——経営に携わるようになった背景を教えてください。
当社は、私の父が創業した会社です。その後、私が二代目として戻り、法人のお客様をメインターゲットにする方向へと転換してきました。父のことを尊敬していたこともあり、この仕事を受け継ぐ道を選びました。
決して派手な仕事ではありません。華やかに見える業界でもありません。それでも、長く続けてきたからこそ分かる価値があります。
衛生管理というのは、日々の暮らしや事業活動の土台を守る仕事です。表立って目立つことは少なくても、誰かの安心につながっている。そこに、この仕事の意義があると感じています。
——経営判断をするうえで、大切にしている考え方は何ですか。
公益性です。この業界は、公益性が高い仕事だと考えています。防虫防鼠管理というと、虫やネズミを駆除する仕事と思われがちですが、実際には衛生環境を保つための管理業務です。
たとえば倉庫のお客様の場合、衛生状況を確認し、どのような虫が、どのような環境で、どれだけ発生しているのかを見ます。そして、どういった対策が必要なのかを報告書にまとめます。
その報告書は、倉庫を利用する荷主様に見せることもあります。倉庫側からすれば、悪いことは書かれたくないと思う場面もあるかもしれません。
しかし、そこで事実を書かないことは、本当の意味でお客様のためにはなりません。正しく報告し、必要な是正をしなければ、最終的に困るのはお客様自身です。
お客様の言いなりになることが、お客様のためになるとは限りません。そこは仕事としてのプライドを持ち、甘く応じず、必要なことをきちんと伝える姿勢を大切にしています。
個人を尊重し、職人の力を信頼する組織づくり
——社内のコミュニケーションで大切にしていることはありますか。
面談の時間を取ったり、社員の意見を聞いたりすることは大切にしています。ただ、何でも細かく指示を出すというよりは、個人を尊重することを意識しています。
「あれをしなさい」「これをしなさい」と押しつけるのではなく、一定の信頼を置いて任せる。もちろん、任せることの難しさもありますが、職人にしか分からない部分があります。
現場に出て、実際に状況を見て、経験を重ねてきた人だからこそ判断できることもあると思うので、そうした部分を尊重したいと考えています。
高齢者の住まいを支える、地域密着の新たな挑戦
——今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
これまで法人のお客様を中心としてきましたが、今後は地域の方々、特に高齢者の住まいに関わるサポートにも力を入れていきたいと考えています。
当社は西宮市の住宅街にあります。昔からこの場所で仕事をしているため、近所の方とは顔なじみの関係でもあります。その方々も年齢を重ねてこられています。
また、一般家庭へ伺う中で、高齢の方が住みにくい環境の中で暮らしている場面を見ることもあります。物が極端に多かったり、片付けが難しくなっていたり、住環境が整っていないこともあります。
そこで現在、整理収納の資格取得にも取り組んでいます。片付けをする中で不用品が出ることもあるため、買い取りができるような事業も進めています。
害虫や消毒だけでなく、片付けや整理収納も含めて、高齢者の方が一日でも長く自宅で過ごせるようなトータルサポートをしていきたいです。
——新しい事業を進めるうえで、課題に感じていることはありますか。
新しい事業を始めたことを、どのように周知していくかが課題です。特に高齢者の方に向けて伝えていくとなると、SNSだけでは届きにくいと感じています。
そのため、バス広告を出したり、会社の前に電光掲示を立てたりするような、地道な営業活動も考えています。派手な方法ではないかもしれませんが、地域の方に知っていただくためには、そうした積み重ねが必要だと思っています。
これまでの防虫防鼠管理で築いてきた信頼を大切にしながら、地域の方々に「こういうことも相談できる会社なんだ」と知っていただきたいです。困ったときに思い出してもらえる存在になることが、今後の挑戦です。
犬との散歩が、日々を整える時間になる
——日々のリフレッシュ方法を教えてください。
犬を飼っているので、近くの浜辺へ散歩に行くことがあります。忙しくてなかなか時間が取れないこともありますが、犬と一緒に歩く時間はリフレッシュになります。
また、たまに旅行に行くこともあります。仕事では日々、現場のことや会社のことを考える時間が多いですが、そうした時間を持つことで気持ちを切り替えられます。