“杖”のイメージを変える――フジホームが目指す、自立歩行を支える新しい価値

フジホーム株式会社 代表取締役社長 岡野 健氏

フジホーム株式会社は、福祉用品・介護用品の中でも、自立歩行を支えるステッキを中心に開発・販売を行うメーカーです。親会社であるインテリアメーカーで培ったデザイン性を活かし、「使いたくなる杖」をテーマに事業を展開しています。単なる介護用品ではなく、持つことで前向きな気持ちになれる商品づくりに取り組み、近年では健康体操や健康経営分野への展開も進めています。今回は、代表取締役社長の岡野健氏に、事業への想いや今後の展望について伺いました。

デザイン性で“杖”の概念を変える

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、介護用品・福祉用品の中でも、自立歩行用品を中心に展開しています。主力商品はステッキですが、私たちは「杖」という呼び方ではなく、「ウォーキングステッキ」や「素敵なステッキ」と表現しています。単に歩行を補助する道具ではなく、持ちたくなる存在として提案したいからです。

親会社がインテリア業界ということもあり、デザイン性には特にこだわっています。介護用品業界では、機能面は重視されていても、利用者が「使いたい」と思えるデザインはまだ十分ではありませんでした。そこで当社では、さまざまなデザイナーとのコラボレーションや、障害のある子どもたちが描いたアート作品をステッキに取り入れる取り組みを行っています。売上の一部を寄付し、支援にもつなげています。

販売チャネルは大きく二つあります。一つは量販店などの流通チャネル、もう一つは介護保険を利用する介護チャネルです。介護事業所やケアマネージャーの方々にも提案を行い、デザインだけでなく新しい機能を備えた商品開発を進めています。

――事業を始めるうえでの原点はどこにあったのでしょうか。

私の母のために会社から杖を持って帰り 、自分で色を塗った経験があります。それが大きな原点です。

多くの方は「杖を使いたくない」と感じています。転倒を防ぐためには必要だと分かっていても、年齢を感じてしまうからです。実際、売り場ではご家族が「また転んだでしょう。危ないから使って」と勧めて購入されるケースが多いと聞きます。

だからこそ、持って外出したくなるようなステッキが必要だと思いました。周囲から「素敵ね」と言われることで、本人も前向きに外へ出られるようになる。引きこもりを防ぎ、健康につなげていきたいという想いがあります。

“足の耐用年数50年”から考える健康づくり

――会社の理念やビジョンについて教えてください。

人の足には“耐用年数”があり、50歳を境に差が出始めると言われています。50代以降、きちんと足のケアをしている人とそうでない人では、その後の健康状態に大きな違いが出てきます。

当社の商品は主に70代、80代の方に利用されていますが、最近では40代から健康意識を高めていく提案も始めています。現在、理学療法士の方と連携し、ステッキを使った健康体操にも取り組んでいます。

高齢者向けの商品だけではなく、もっと早い年代から健康を支える存在になりたい。健康寿命を延ばしていくことが、今後の大きなテーマです。

インテリア業界から福祉業界へ

――フジホーム設立の経緯についてお聞かせください。

会社自体は50年以上の歴史があります。もともとはインテリア商品を扱う会社でした。親会社であるトーソー株式会社の第2ブランドとして立ち上がったのがフジホームです。

30年以上前、日本にディスカウントショップやホームセンターが増え始めた頃、価格重視の商品展開が求められるようになりました。そこで、第1ブランドとは別に新しいブランドとしてフジホームが誕生しました。

当時の社長が「これから日本は高齢化社会になる」と考え、ホームセンターの売り場を活かして介護用品や福祉用品を展開し始めたことが、現在の事業につながっています。海外、特に東ヨーロッパから商品を仕入れ、販売したのが始まりでした。

その後、約12年前にインテリア事業を親会社へ譲渡し、現在はステッキを中心とした福祉用品専門メーカーとして事業を行っています。

“考える力”を重視した組織づくり

――経営で大切にしている考え方を教えてください。

働くメンバーが、ワクワクしながら仕事をすることを何より大切にしています。1日は24時間ありますが、そのうち約3分の1は仕事の時間です。その時間を楽しめなければ、人生の3分の1を損してしまうと思っています。

お客様はもちろん大切ですが、社員やその家族が幸せであることも同じくらい重要です。仕事を通じて充実感を得られる会社にしたいと考えています。

また、学生時代の全寮制生活で学んだ「時間を守ること」も、今の経営に大きく影響しています。1分1秒を大切にする姿勢は、社員にも徹底しています。時間を守ることは、相手への敬意でもあると思っています。

――組織運営で意識していることはありますか。

当社は東京と大阪に拠点がありますが、残業はほとんどありません。終業時間は17時30分ですが、多くの社員が17時35分頃には退勤しています。時間ではなく、限られた時間内でどれだけ効率よく成果を出せるかを重視しています。

また、コロナ禍以前からWeb会議やテレワークも導入していました。柔軟な働き方を早い段階から取り入れてきた会社だと思います。

採用では、「考える力」を重視しています。最近はインターネットやAIですぐ答えが出ますが、私は答えそのものより、そこへたどり着くまでのプロセスを大切にしています。自分で調べ、自分で考え、自分なりの答えを導き出せる人と一緒に働きたいですね。

“介護用品売り場”から飛び出す未来へ

――今後の展望について教えてください。

今後は、ステッキ以外の自立歩行商品にもさらに力を入れていきます。タイヤ付きカート用品も含め 、家の外だけでなく、家の中でも使える商品を展開していきたいです。

特に、インテリアと融合した商品づくりには可能性を感じています。家の中に置いていても違和感のない、おしゃれな商品を増やしていきたいですね。

実は以前、「Twin Z Stick」という商品をイタリアのミラノサローネへ出展する予定でした。コロナ禍で実現できませんでしたが、今でも大きな夢として残っています。

将来的には、介護用品売り場だけでなく、インテリア雑貨店などで当たり前に販売される存在にしたいです。杖を持つことへの心理的ハードルを下げ、「老眼鏡」が「ハズキルーペ」に変わったように、“杖”のイメージそのものを変えていきたいと思っています。

時間を守ること、自分の体を整えること

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

孫と遊ぶ時間が大きな楽しみです。娘家族が近くに住んでいるので、月に数回は一緒に過ごしています。

また、冬はスキーが大好きで、そのために週1回ジムにも通っています。筋力を維持することは健康づくりにもつながりますし、自分の体のデザインを整えることも大切だと思っています。

普段から、駅ではエレベーターやエスカレーターを使わず、階段を利用しています。50歳以降は、日々の積み重ねが大事です。

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