“ありがとう”が返ってくる農業を目指して──株式会社かがやきいちご園が育てる、日本一喜ばれるいちご園

株式会社かがやきいちご園 代表取締役 齋藤大輝 氏

群馬県伊勢崎市でいちご園を運営する株式会社かがやきいちご園。家庭菜園から始まったいちご作りは、今では全国規模の品評会で評価される農園へと成長しています。前職で培った商品企画の視点を農業へ落とし込みながら、“お客様に喜んでもらえるいちご”を追求し続ける齋藤大輝氏。今回は、農業を始めたきっかけや経営への想い、今後描いている未来について伺いました。

“息子のための家庭菜園”から始まった、いちご農園への道

――現在の事業内容について教えてください。

現在はいちご農園を運営しており、直売を中心に展開しています。家庭用だけではなく、贈答用として利用されるお客様も多く、品質やパッケージにもこだわっています。

特に意識しているのは、“お客様に喜んでもらえる商品作り”です。前職で商品企画をしていた経験を活かし、肥料・栽培環境・トレンドの3つを意識しながらいちご作りを行っています。

肥料選びやハウス内の温度・湿度管理を徹底し、できるだけ農薬に頼らない栽培にも取り組んでいます。また、パッケージデザインにも力を入れ、「誰かに贈りたくなるいちご」を目指しています。

――いちご園を立ち上げたきっかけについて教えてください。

もともとは家庭菜園でいちごを育てたことがきっかけでした。私は大学卒業後、赤城乳業に入社し、営業や商品企画の仕事を8年間していました。ただ、30歳を迎えた頃に「もっと家族との時間を大切にしたい」と思うようになり、退職して実家の農業を手伝うようになったんです。

実家では和牛や露地野菜を育てていたのですが、当時2歳だった息子が「一番好きな食べ物はいちご」と言うほどいちご好きで。それなら家庭菜園で育ててみようと思い、ホームセンターで苗を10本買ってきたのが始まりでした。

育てたいちごを友人や親戚にお裾分けすると、ナスや大根とは違う、“特別なありがとう”が返ってきたんです。その嬉しさが、「これを本業にしたい」という気持ちにつながりました。

その後、隣町の農家さんのもとで1年半ほど研修を受け、苗を2万本まで増やした状態で事業をスタートしました。

前職の商品企画経験を活かした、“売れるいちご作り”

――他のいちご園にはない強みや、こだわっている点を教えてください。

前職で商品企画をしていた経験は、今のいちご作りにもかなり活きています。当時、「良い商品には3つの要素が必要」と教わっていました。素材へのこだわり、製法へのこだわり、そして市場性やトレンドです。

私はその考え方を、そのまま農業に応用しました。例えば素材であれば、肥料選びに徹底的にこだわる。製法であれば、ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素濃度など、“いちごが一番快適に育つ環境”を追求する。そして市場性の部分では、できるだけ農薬に頼らない栽培を採用したり、パッケージデザインにも力を入れたりしています。

特にパッケージは、赤城乳業時代に一緒に仕事をしていたデザイナーに協力してもらいました。農家っぽさだけではなく、少し洗練された雰囲気を出したかったんです。

その結果、美味しさだけではなく、「誰かに贈りたくなるいちご」として選んでいただけるようになりました。実際、贈答用として利用されるお客様も多いですね。

うちでは「日本一のいちご園を目指そう」とスタッフにも話しています。ただ、販売量や規模で日本一になりたいわけではありません。小さくても強い農園でありたいんです。

お客様が胸を張って贈れる商品を作ること。その先に、“日本一喜ばれるいちご園”があると思っています。

“お母さんたちに支えられている”現場づくり

――組織運営やスタッフとの関わりで大切にしていることはありますか。

現在は、私と妻を含めて15名ほどのスタッフがいます。ほとんどが50代後半から60代の女性で、世代的には本当に“お母さんたち”みたいな存在ですね。

正直、私が引っ張っているというより、皆さんに支えてもらっている感覚の方が近いです。ありがたいことに本当に優秀な方ばかり集まってくれているので、そこにかなり助けられています。

農業は応募条件の幅が広く、さまざまな方が応募してくる業界だと思っています。 その中で、一緒に働きたいと思うのは“自責思考”を持っている方ですね。

何かうまくいかなかった時に、「あの時こうしておけば良かった」と自分の中で改善点を考えられる人は、ちゃんと成長していきます。一方で、全部を周囲のせいにしてしまうと、なかなか前に進めないんですよね。

農業は天候にも左右されますし、思い通りにならないことも多い仕事です。でも、その中で試行錯誤しながら前向きに改善を積み重ねていける人とは、長く一緒に働けると感じています。

品質を磨き続けながら、地域の風景も守っていきたい

――今後の展望や挑戦したいことについて教えてください。

ありがたいことに、開業初年度には群馬県の品評会で金賞をいただき、2年目には全国規模のいちごグランプリで最高金賞を受賞しました。その後も毎年何かしらの賞をいただいています。

やはり、品質で評価され続けることは大事にしたいですね。賞を取ること自体が目的ではありませんが、お客様に「本当に美味しい」と思っていただくための分かりやすい指標でもあると思っています。

一方で、いちご業界は若手農家が増えていて、ライバルもどんどん増えています。その中で埋もれないよう、もっと実力をつけて勝ち続けていける農園にしていきたいです。

また、長期的には地域の景観も守っていきたいという想いがあります。うちの周辺は田園地域なのですが、高齢化も進んでいて、このままだと耕作放棄地が増えてしまう可能性もあります。

だからこそ、同世代の仲間たちと声を掛け合いながら、この地域に農業を残していきたいんです。いちごだけではなく、ぶどうやさつまいもなど、新しく挑戦する仲間も増えてきています。

作物は変わっても、“農業のある風景”そのものは残していきたい。その想いはこれからも大切にしていきたいですね。

“仕事が人生”と思えるほど、いちご作りが楽しい

――最後に、リフレッシュ方法やプライベートについて教えてください。

いちごは12月から5月まで収穫が続くので、その期間は基本的に休みがありません。毎日仕事をしているような感覚ですね。

ただ、不思議とそれが苦ではないんです。ずっと頭の中でいちごのことを考えていますし、「そろそろハウスの換気をしないとな」とか、常に環境のことを気にしています。でも、それがストレスになっていないんですよね。

趣味が仕事になっている感覚に近いと思います。だから“仕事とプライベートを分ける”というより、生活そのものにいちご作りが溶け込んでいる感じです。

その中でも楽しみなのは、息子の少年野球ですね。収穫シーズン中はなかなか難しいですが、夏場など時間を作りやすい時期は応援に行ったりしています。

家族との時間を大切にしたくて始めた農業でしたが、今はその家族に支えられながら、自分自身も本当に楽しく仕事ができています。これからも、お客様に喜んでもらえるいちごを追求しながら、地域に愛される農園を目指していきたいです。

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