「子育てを1人の責任にしない社会へ」――孤立を防ぐ情報集約と、多世代がワクワクつながる「地域家族」の未来

一般社団法人こっこぴあ 代表 小林 万紀氏

「母親なんだから、家事も育児も完璧にこなさなければならない」「人に頼るのは恥ずかしい」。そんな、かつての家族観がもたらす固定概念に縛られ、誰にもSOSを出せずにワンオペ育児で孤立してしまう母親たちが後を絶ちません。一般社団法人こっこぴあは、「子育てを1人の責任にしない社会へ」という力強いビジョンを掲げ、現代の育児世代が直面する孤独を地域の手で解消しようと奮闘しています。自身もワンオペ育児を経験し、娘を育て上げた代表の小林万紀氏は、制度や支援の情報をスマホ1つで簡単に探せる画期的なシステムを開発中。さらに、自己満足に陥らない真の支援のあり方を追求しながら、定年退職を迎えたシニア世代をも巻き込む「多世代循環型の子育てコミュニティ」の構築を目指しています。孤立の痛みを優しさに変え、誰もがワクワクしながらつながれる地域家族の未来について、熱い思いを伺いました。

孤立するワンオペ育児世帯と地域を、スマホとお祭りのような「楽しさ」でつなぐ

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

私たちは、主に「1人子育て支援」を行っています。地域の人々と一緒に家族のように子育てをサポートし合う「地域家族化」という社会の実現を目指して活動しています。

具体的な活動内容は、大きく2つの軸に分かれています。1つ目は、バラバラに点在している子育て支援や行政制度の情報を一元化し、スマートフォンから誰でも簡単に必要な情報へアクセスできるシステム「こっこナビ」の開発・運営です。これから地域の様々な支援情報を一つずつ集約し、活動されている方々への取材やアンケート内容を掲載していく予定です。2つ目は、地域と子育て世帯をつなぐ「イベントの企画・開催」です。日々疲れ果ててしまうと、地域とつながる気力すらなくなってしまい、どんどん孤立して辛い状況に追い込まれてしまう。ただ、行政のサービスは「何かあったら連絡してね」という待ちの姿勢が多く、「相談すると大事になってしまうのでは」と、連絡を躊躇してしまう方も多いのが現状です。

そこで、地域で小さくても誰もが参加できるようなイベントを企画しています。顔見知りを作ることから始められるような、楽しさをベースにした集まりを全国各地の様々な場所で展開していきたいと考えています。

自身のワンオペ育児と「帰る場所のなかった」経験から、社会の固定概念を変える決意へ

――小林代表が、この子育て支援の道を志し、一般社団法人を立ち上げられたきっかけや背景を教えてください。

私自身、周りに頼れる親族がいない中で、多くの方々に助けていただきながらなんとか娘を育ててきました。その娘が20歳になり、一通り子育てが一段落したタイミングで、今度は私がこれまでお世話になった恩返しとして、同じように苦しんでいるひとり子育てをしている方たちの力になりたいと周りに相談し始めたのがすべてのスタートです。

個人での活動から法人化へ踏み切ったのは、行政の制度をサポートしたり、社会の仕組みそのものを動かしていったりするためには、どうしても個人ではなく「組織」としての信頼や信用が必要になるとアドバイスをいただいたからです。そして、私の活動の根底には、自分自身の苦い経験があります。私は新潟県の出身なのですが、離婚を考えた際、経済的な不安や精神的なつらさから本当は実家に帰りたかった。しかし、地元の古い男社会の風潮や、母親との折り合いの悪さもあり、「離婚して1人で帰ってくるなんて恥ずかしい」という空気感に直面し、結局帰ることができませんでした。

今も不登校の子どもが増え、学校に行けない我が子を見て親が自分を責めて苦しんでいる現状がありますが、「ここじゃなくても、別の地域だったらもっと楽に生きられる場所があるよ」と言ってあげられる世の中にしたい。全国各地に、地域の支援活動や人々が温かくつながっている場所を増やし、親子で気軽にお試し移住のように遊びに行って、そこで新しい友達を作れるような選択肢を作りたいんです。

「女性はこうあるべき」「母親なんだから1人でやるべき」「人に頼るのは恥ずかしい」という核家族化が生んだ古い概念を変えない限り、このワンオペ育児の悲劇は続いてしまいます。「もうその考え方は今の時代に合っていないんだよ」ということを、社会全体で認識していけるような流れを、私たちが作っていきたいと思っています。

現場のリアルにそぐう支援を。「自己満足」に陥らず、関わる全員がワクワクする循環を

――組織の運営や周囲とのコミュニケーションにおいて特に大事にされていることは何でしょうか。

現在、一緒に動いてくれている理事が2人いるのですが、それぞれが全く異なる専門分野を持っています。役割を明確に分けてそれぞれが主体的に動いています。

私自身、一般社団法人という非営利の形をとっていることもあり、決してお金を全面に出すのではなく、まずは「何のためにこの活動をするのか」という私の思いやビジョンを心から理解し、共感してくださる方々と繋がって、少しずつチームの輪を広げていくことを何よりも大切にしています。

――支援の現場において、特に心がけている視点や哲学はありますか。

絶対に「自己満足の支援」に陥らないことです。私たちは関わる全員が「楽しい!」「ワクワクする」というプラスの感情の循環の中で、お互いが自然に対等な立場でつながれる環境づくりを徹底しています。

定年後のシニア世代を子育ての輪へ。多世代で支え合う「地域家族」の構築へ

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

非営利団体ではありますが、活動を持続させていくためには組織の運営資金が不可欠です。今後は、私たちの思いやこれからの社会課題の解決に深く共感し、共に未来を見据えて動いてくださるような企業様に向けて、積極的に営業活動を行い、パートナーシップを広げていきたいと考えています。

もう一つの大きな挑戦として、私と同世代から少し上の先輩方の男性たちを子育て支援の輪に巻き込んでいきたいと考えています。

先輩方の多くは、現役時代に仕事が忙しく、ご自身の子育てには深く参加してこられなかった世代です。そして、定年退職を迎えた後に不安を抱えているという声をよく耳にします。そんな先輩方に、ぜひ地域の「子育て」に参加していただきたいのです。まずは子育て経験のあるお母さんや、現役で活動している支援スタッフたちが間に入り、今の育児のリアルな大変さを知ってもらうことから始めます。その上で、彼ら自身のこれまでの経験や強みを活かした「新しい参加の仕方」を一緒に考えていけるような、多世代が自然に支え合えるプラットフォームを作りたい。

日常の小さなしあわせを見つけること、それがすべての活動のエネルギー源

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

お休みの日は、基本的には家で過ごすことが多いですね。家でお菓子を作ったり、料理をしたりするのがとても良いリフレッシュになっています。

外に出る時は、近所をのんびり散歩しながら、自然の景色を眺めるのが大好きです。道端に綺麗なお花が咲いているのを見つけると、つい嬉しくなってスマホで写真を撮ったりしています。

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