「図」を日本人の新たな強みに。思考と対話を変える図解の可能性
株式会社Metagram 代表取締役 髙野 雄一 氏
株式会社Metagramは、図解の方法を体系化し、教育コンテンツとして提供する「図解」の専門会社です。代表の髙野氏は、ITコンサルタントとして働きながら個人で図解の活動を始め、大学院で研究を深めました。その可能性を広く伝えるため、2024年9月に同社を設立。現在は企業向け研修を展開し、将来は子どもたちの教育分野への展開も目指しています。
目次
言葉だけでは処理しきれない時代に、「図」という選択肢を
――現在の事業内容と、株式会社Metagramならではの特徴を教えてください。
Metagramは、図解の専門会社です。「図」と聞いても、すぐにはイメージしにくいかもしれません。しかし、身の回りを見てみると、図を使う場面は数多くあります。
例えば、会議でホワイトボードに図を書きながら話を進めたり、提案資料に図を入れて内容を説明したりすることも図解の一つです。こうした「図を使って考え、伝える方法」を体系化し、教育コンテンツとして広めている点が、当社の特徴だと考えています。
現在は主に、企業向けに図解の書き方を学ぶ研修を提供しています。単に見栄えのよい図を作るのではなく、情報を整理し、構造を捉え、相手に分かりやすく伝えるための方法として図を扱っています。
――会社として、どのようなビジョンを掲げていますか。
「日本を図解先進国にする」というビジョンを掲げています。
世界情勢や社会環境が変化するなかで、日本人としての強みを発揮する必要があると感じています。同時に、デジタル技術やAIの普及によって、一人の人間が扱う情報量は非常に増えています。
これまでは、言葉やテキストを中心に情報を考え、伝えてきました。しかし、情報量が増え続ける時代に、言葉とテキストだけですべてを処理し、伝達することは難しくなっています。SNSでも、テキストだけではなく、画像や動画を使ったコミュニケーションが広がっています。今後は、ビジュアルを使ったコミュニケーションがさらに重要になると考えています。
そのなかで、日本人が得意とする能力の一つとして、「図」を挙げられるようにしたいと思っています。海外の方と仕事をするときに、「日本人は図を使って説明してくれるから分かりやすい」と言ってもらえるような世界です。図解を日本人の新しいアイデンティティの一つにすることが、私たちの目指している姿です。
個人の活動から会社へ。研究を通じて気づいた図解の力
――これまでのキャリアと、事業を立ち上げた経緯を教えてください。
もともとは会社員としてIT企業に勤め、コンサルタントの仕事をしていました。その仕事と並行しながら、個人事業主として図解に関する活動を始めたことが、現在の事業の原点です。
当初は、図解に興味のある方に向けて、個人で図の書き方を教えていました。その後、仕事を続けながら大学院に進み、図に関する論文を書くようになりました。学会に参加し、研究として図と向き合うなかで、この方法には、自分が小さな範囲で教えるだけにとどまらない力があると感じるようになったのです。
図解の楽しさや実用性を、より大きな形で発信していきたい。そのためには、個人の活動ではなく、会社という箱を作る必要があると考えました。そして、2024年9月に株式会社Metagramを設立しました。
――経営における判断で、大切にしていることはありますか。
迷ったときは、図を書くようにしています。図解の会社を経営しているので、経営判断にも図を使っています。
経営者をしていると、さまざまな情報が入ってきます。そのなかには、自分が考える必要のないことや、判断に直接関係しない情報も含まれています。図を書くと、そうした情報を削ぎ落としながら、物事を客観的かつ合理的に捉えられます。
自分の考え方が本当に合っているのか、何を残し、何を手放すべきなのかを、一度図にして確認します。意思決定だけでなく、会社全体の構造を考えるうえでも、図は役立っています。
――これまでに、考え方や生き方へ大きな影響を与えたものはありますか。
大学院を修了するとき、研究室の先生から内村鑑三の『後世への最大遺物』という本を贈られました。そこでは、自分が亡くなった後、後世に何を残すべきかということが語られています。
最初に挙げられるのはお金です。お金があれば人を助けることができ、継続的な活動にもつなげられます。しかし、お金を残すことが難しければ、次は事業を残す。それも難しければ思想を残し、最後には高尚な生き方を残す、という内容です。
この本を読み、自分は人生を終えた後に何を残したいのかを考えるようになりました。まずは自分自身の生き方から挑戦し、思想を本として残し、さらにMetagramという事業を作っていく。そうした順序を意識しています。
現在は、2冊目の著書である『話のうまい人は頭のなかで「見えない図」を描いている』も出版しています。本を通じて思想を残し、会社を通じて事業を残すという考え方は、今の活動にもつながっています。
頭の中の背景まで可視化し、認識のずれを減らす
――現在の組織体制について教えてください。
現在、社員はおらず、私一人で会社を運営しています。その一方で、業務委託の方々と一緒に仕事を進めており、関わっている方は5,6名ほどです。
それぞれが異なる役割を担う体制だからこそ、仕事の目的や背景をどのように共有するかが重要になります。
依頼する作業だけを伝えるのではなく、なぜその仕事が必要なのか、全体のなかでどの位置にあるのかまで伝えることを意識しています。
――今後、一緒に働きたいのはどのような方ですか。
図が好きな方と働きたいです。普段の仕事で図を書いているかを聞くと、まったく書かないという方もいれば、なるべく書くようにしているという方もいます。
自分の考えを可視化し、構造化することを好み、自発的に取り組んでいる方とは、一緒に仕事をしたいと思います。
最初から高い技術を持っていることだけが重要なのではありません。自分の考えを整理し、相手に伝わる形にしようとする姿勢を大切にしています。
図解をビジネスの外へ。子どもたちの学びにつなげる
――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
現在は企業向けに図解研修を提供していますが、今後は小学生や中学生にも、図を使って考え、伝える力を身につけてもらいたいと考えています。
物事を整理し、自分の考えを相手に伝える力は、子どもの頃から必要です。一方で、教育現場に図解を導入する機会は、すぐに生まれるものではありません。
まずは、図を書くことが仕事だけでなく、日常や学びにも役立つと知ってもらう必要があります。学校や自治体、教育に携わる方々へ図の価値を伝え、誰もが自然に図を使う世界を広げながら、「日本を図解先進国にする」というビジョンの実現を目指します。
体を動かし、思考を切り替える
――日々の仕事から離れ、リフレッシュするために行っていることはありますか。
なるべくジムに行き、体を動かすようにしています。普段は、図を通じて情報を整理したり、事業について考えたりする時間が多いため、体を動かすことが気持ちを切り替える機会になっています。