地域文化の灯を未来へつなぐ――メイシアターとともに歩んだ40年、古矢直樹理事長が描く次の挑戦
公益財団法人吹田市文化振興事業団 理事長 古矢 直樹氏
大阪府吹田市の文化拠点として長年親しまれてきた吹田市文化会館メイシアター。1985年の開館以来、市民の文化芸術活動を支え、多彩な公演やイベントを通じて地域に文化を届けてきました。その運営を担う公益財団法人吹田市文化振興事業団は、貸館事業と自主事業を両輪に、時代の変化に合わせた文化発信を続けています。本記事では、開館当初から事業団に携わり、2025年3月に理事長へ就任した古矢直樹氏に、これまでの歩みや組織運営、今後の展望などについて詳しく伺いました。
市民の文化活動を支える総合文化センターとして
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当法人は、吹田市から委託を受けて吹田市文化会館メイシアターを運営しています。メイシアターは1985年に開館し、2025年度には40周年を迎えました。
事業の柱は大きく2つあります。1つは、貸館事業です。大ホール・中ホール・小ホールに加え、レセプションホールや会議室、展示スペースなどを、市民の皆さまやプロ・アマチュアを問わず幅広くご利用いただいています。そしてもう1つは自主事業で、音楽や演劇、オペラ、ミュージカルなど、多様な文化芸術事業を主催しています。
総合文化センターとして、市民の皆さまに文化芸術へ触れる機会を提供し続けることが、私たちの大切な役割です。
――自主事業にはどのような特徴がありますか。
自主事業では、既存のオーケストラや劇団の公演を企画するだけでなく、私たち自身が作品づくりに関わることもあります。演劇であれば作家や演出家、出演者、スタッフを集め、1つの作品を制作して上演するケースもあります。
また、ジャンルにこだわらないことも大きな特徴です。音楽や演劇はもちろん、古典芸能や落語、大衆芸能、ポップスなど幅広い分野を扱っています。市民のニーズにできる限り応えていくことが開館当初からの考え方であり、文化芸術であればさまざまな挑戦を続けています。
開館とともに歩み続けた文化ホール人生
――理事長に就任されるまでの歩みを教えてください。
私は、1985年4月1日のメイシアター開館と同時に事業団へ入職しました。いわゆる「こけら落とし」の時代から現在まで、主催事業の企画立案や運営に携わり続けてきたわけです。
40年にわたり現場で文化事業に向き合ってきたなかで、2026年3月に理事長へ就任し、現在に至っています。長年現場で培ってきた経験を、これからは組織全体の運営や将来づくりに活かしていきたいと考えています。
――文化芸術の世界へ進まれたきっかけは何だったのでしょうか。
学生時代から、音楽や演劇、エンターテインメントに強い関心を持っていました。大学時代には音楽イベントなどにも関わっており、そうした活動を通じて文化芸術の魅力を実感していました。
もともと趣味として親しんでいた世界でもありましたので、この仕事に就いたことは自分にとって非常に自然な流れだったように思います。好きなことを仕事にし、そのまま約40年続けてこられたことは幸せなことだと感じています。
27名で支える文化拠点の運営体制
――現在の組織体制について教えてください。
現在の職員数は、アルバイトを含めて27名です。組織は大きく3つの部門で構成されています。
1つは、総務部門で、経理や窓口業務、貸館受付などを担当する部門です。2つ目は事業部門で、自主事業の企画立案や広報活動を担っています。そして3つ目が舞台管理部門で、3つのホールを利用される方々へ、安全で快適なサービスを提供している部門です。
職員それぞれの専門性を活かしながら、市民の皆さまに安心して利用していただける環境づくりに取り組んでいます。
――組織運営で大切にしていることは何ですか。
文化ホールの運営は、多くの人の協力によって成り立っているものです。企画を考える人だけでなく、施設管理や受付対応、舞台技術など、それぞれの役割が連携して初めて、1つの公演や事業が実現します。
そのため、各部門が同じ方向を向き、市民の皆さまにより良い文化体験を届けるという共通の目的を持つことが重要です。今後も長年積み重ねてきた経験を共有しながら、安定した運営を続けていきたいと考えています。
文化ホールの未来を守り、新たな世代へつなぐ
――現在感じている課題についてお聞かせください。
全国には公共ホールや民間ホールを合わせて多くの文化施設がありますが、その多くが、1980年代から1990年代にかけて建設されたものです。そのため、現在は多くのホールが老朽化という大きな課題に直面しています。
施設の改修には、多額の費用が必要です。しかし、行政には福祉やインフラ整備など、ホールなどの改修より優先すべき課題も多く、文化施設への投資が難しいケースも少なくありません。そのため、今後は改修が進まず、継続が難しくなるホールも出てくるおそれがあります。
そのような状況のなかで、メイシアターはコロナ禍の2020年に改修工事を終え、良好な環境を維持できています。この環境を活かしながら、今後も地域文化を支えていきたいと思っています。
――今後、特に力を入れていきたいことは何でしょうか。
まずは、現在の高い稼働率を維持することです。3つのホールの平均稼働率は85%以上となっており、コロナ禍を経て再び安定した運営ができるようになりました。この状態を継続していくことが重要だと考えています。
もう1つは、若い世代の参加の促進です。市民参加型の演劇公演や吹田市民を対象とした事業などを実施していますが、利用者層は比較的高い年代の方が中心です。今後は若い人たちにも文化ホールへ足を運んでもらい、参加してもらえるような企画や仕組みづくりに力を入れていきたいと思っています。
文化芸術を次世代へつないでいくためにも、この2つを大きな柱として取り組んでいきます。
文化芸術は地域の未来を育てる力になる
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
文化ホールは、単に公演を見る場所ではなく、市民の皆さまが集い、参加し、地域の文化を育てていく場でもあります。
私たちは、これからも幅広い文化芸術事業を通じて、市民の皆さまに豊かな時間を提供していきたいと考えています。そして、これまで親しんでくださった方々はもちろん、まだ文化ホールを利用したことがない若い世代の皆さまにも、ぜひ足を運んでいただければ幸いです。
地域文化の拠点として、これからも多くの方々とともに新しい文化の価値を創り続けていきます。