「大事な話題ほど、家族だけで向き合わなくていい」対話を通じて後悔のない親子関係をつくる

オヤシル株式会社 代表 武田 勇 氏

親子は身近で大切な存在だからこそ、将来や介護、医療、相続といった重要な話題を切り出しにくいことがあります。「聞いておけばよかった」という後悔をなくすため、親子の間に第三者が入り、対話を支援するサービスを展開しているのが「オヤシル」です。母子家庭で育った自身の経験を出発点に事業を立ち上げた武田氏に、会社の理念や起業の背景、組織づくり、今後の展望について伺いました。

聞けなかった後悔を、聞けてよかったという安心へ

――現在の事業内容・特徴を教えてください。

オヤシルは、親子の間に第三者が入り、普段は話しにくい大切なことを言葉にするための対話支援を行っています。これまでの人生や家族への思いに加え、介護、医療、相続、延命治療など、もしものときに備えて確認しておきたい話題も対象です。

聞き手は、プロコーチや終活カウンセラーなど、対話に関する専門的なスキルを持つ人材です。安心して話せる環境を整えることで、家族だけでは表に出にくい本音を引き出します。

何かが起きた後ではなく、起きる前から対話を支え、備えに関する課題をコミュニケーションで解決することを目指しています。

――会社として掲げている理念やミッションについてお聞かせください。

オヤシルが掲げるミッションは、「後悔のない親子関係が続いていく社会」です。親が亡くなった後に、どのような思いで自分を育ててくれたのか、困難をどう乗り越えてきたのかを知りたくなることがあります。

そうしたときに、「聞いておけばよかった」と悔やむのではなく、「聞けてよかった」「残っていてよかった」と思える状態をつくりたいと考えています。

また、認知症などで本人が意思を示せなくなった場合でも、事前に考えを聞いておけば、家族はその願いに沿って判断できます。大切な思いや希望を共有し、家族の負担や後悔を減らすことを目指しています。

母との関係から生まれた、第三者が対話を支える仕組み

――この事業を立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

前職では、社外の人材が上司と部下の間に入り、1対1の対話を支援する事業に携わっていました。その経験から、身近な関係に第三者が加わることの意義を感じていたのです。

私自身は母子家庭で育ち、母親を大切に思う一方、家族だからこそ将来や介護について話を切り出しにくいと感じることがありました。

そこで、前職で学んだ仕組みを親子関係にも生かし、第三者を介することで、家族だけでは聞けないことや話しきれないことを共有できるのではないかと考えたことが、起業のきっかけです。

――起業を決意した背景と、経営で大切にしている考え方を教えてください。

母子家庭で育った経験を原点に、ボーダレスアカデミーで事業案を練り、経済産業省などが主催する起業支援プログラムへの参加やシリコンバレーでの学びを通じて、起業への思いを強めました。

自ら旗を掲げ、社会に価値を届ける事業だと確信したことが、決意の後押しになりました。経営では、「大事な話題ほど、家族だけで向き合わなくていい」と伝えられる存在であることを重視しています。

そのため、聞く技術だけでなく、安心して話せる信頼関係を築ける人材の育成にも力を入れています。

一人ひとりの願いを聞き、経営の状況も分かち合う

――組織内のコミュニケーションで意識していることを教えてください。

まだ少人数の会社ですが、インタビュアーとして関わるメンバーが多い組織です。そのため、採用の段階から、「なぜオヤシルに関わりたいと思ったのか」「どのような現実を変えたいと思っているのか」を聞くことを大切にしています。

入社した後も、一人ひとりが今どのようなことを感じているのか、どのような願いを持って仕事に取り組んでいるのかを聞き合うようにしています。現在は人数が少ないからこそ実践しやすい面もありますが、組織が広がった後も大切にしていきたい部分です。

――経営者からメンバーへ情報を伝える際に心がけていることはありますか。

相手の話を聞くだけではなく、会社の状況をオープンに伝えることも大切にしています。

経営が厳しいと感じているときには、どのような問題が起きているのか、全体の状況がどのようになっているのかを、関わる人たちに共有します。仕事が少なくなっている場合も含め、経営に関する情報を可能な範囲で開示し、オヤシル全体の状況を分かち合える関係を目指しています。

伝えることをオープンにすると同時に、相手の考えや、その奥にある願いを聞くことも欠かさないようにしています。互いに聞き合いながら、事業に関わる意味を一緒に育んでいける組織でありたいです。

終活を、人生を前向きに描くための文化に

――今後、どのようなことに挑戦していきたいと考えていますか。

終活について考える大切さを、より広く伝えていきたいです。生命保険などの金銭的な備えも重要ですが、まずは老いや死を含め、自分がどのような人生を送りたいのかを描く必要があります。

一方、終活やエンディングノートは、話題の重さや家族への切り出しにくさから、十分に普及していません。今後は保険会社や医療・介護施設と連携してセミナーやイベントを開催し、もしものときについて考える機会を増やします。

さらに、エンディングノートの作成支援や、親の人生と今後の希望を聞くインタビューを通じて、家族の対話と備えを支えていきたいです。

――終活を普及させる上で、どのような課題があると感じていますか。

もしものときについて考えることは、「まだ大丈夫」「できれば考えたくない」と遠ざけられがちです。そのため、終活に対するイメージを変えていく必要があります。

人生に限りがあることを受け入れ、自分がどう生きたいのか、どのような過ごし方を良い人生と考えるのかを見つめることは、今を大切に生きることにつながります。

老いや死を単にネガティブなものとして捉えるのではなく、よりよく生きるための機会として伝えたいです。終活を通じて前向きに暮らす方の事例も発信し、少しずつ認識を変えていきたいと考えています。

事業を続ける力を支える、運動と読書の時間

――影響を受けた人物や、印象に残っている言葉を教えてください。

松下幸之助さんの考え方に影響を受けています。特に心に残っているのは、「物事を達成できないのは、能力の限界ではなく、執念の欠如である」という趣旨の言葉です。

終活は以前から存在している一方、まだ十分には広がっていません。だからこそ、難しいテーマでも諦めず、執念を持って続けることが大切です。私も、終活が当たり前になる社会を目指し、粘り強く取り組んでいきたいと考えています。

――仕事から離れる時間は、どのように過ごしていますか。

会社を経営する上では体が資本なので、パーソナルジムに通っています。また、関西にいる友人と、半年に一度はハーフマラソンかマラソンに出ようと決めています。

関東の大会と西日本の大会に参加し、旅行も兼ねながら走ることが楽しみの一つです。そのほかには、本を読んだり、映画を見たりして過ごしています。運動や読書の時間を持ちながら、終活について考えることが当たり前になる社会に向けて、粘り強く事業を続けていきたいです。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。