「IKIGAI」を次世代へ。人生を丸ごと聞くインタビューから生まれる、新たなつながり
株式会社ミトミト 代表取締役 尾﨑 弘師 氏
営業の世界で経験を積むなか、英会話講師から投げかけられた「あなたのIKIGAIは何ですか」という問い。その言葉に答えられなかったことをきっかけに、尾﨑氏は日本に根づく「IKIGAI」という概念について調べ始めました。やがて、IKIGAIを次世代に残したいという想いから、経営者を中心に人生や価値観を聞くインタビュー活動を開始。現在は、インタビュー記事を発信するメディアを運営しながら、理念と経営を両立させる仕組みづくりに取り組んでいます。
目次
人生の歩みを聞き、「IKIGAI」を次世代へ残す
――現在取り組んでいる事業について教えてください。
経営者を中心に、その方の人生やIKIGAIを聞くインタビューを行い、記事として発信しています。
現在の立場や実績だけを取り上げるのではなく、そこに至るまでにどのような葛藤や苦労があったのか、何者でもなかった時期から、どのように今の思想や価値観へたどり着いたのかを深掘りしています。人生を丸ごと聞き、一つのストーリーとして伝えられることが、特徴です。
――会社の理念には、どのような想いが込められていますか。
理念は「みんなのIKIGAIを全力で応援する」です。私は、「IKIGAI」という概念を次世代に残していかなければならないと考えています。日本人は、日本人が持っている素晴らしさを、十分に理解できていないのではないかと思うことがあります。
人口が減少し、日本はもう終わったという空気が広がるなかでも、日本人はお金や時間、権威だけを求めて技を磨いてきたわけではありません。
IKIGAIを持ち、技を極めてきた人たちがいます。そうした志や思想を残すためにも、一人ひとりのIKIGAIを全力で応援していきたいです。
――事業を続けるうえで大切にしている判断軸は何でしょうか。
現在、特に考えているのは、理念と経営のバランスです。IKIGAIを残すという理念だけを追い続けると、活動がボランティアになり、継続が難しくなります。
2024年頃から活動を始めましたが、当初の2年間で執筆できた記事は10本ほどでした。続けられる仕組みがなく、収益が生まれないため、活動に使える時間も確保できなかったからです。
現在もインタビューや取材は無料で行っていますが、その後、興味を持っていただいた方に別の提案をしたり、自社の商品をつくったりすることも考えています。理念を追いながら、事業としてお金が回る状態をつくる。そのバランスを取ることを、経営判断で最も大切にしています。
夢を追った日々と挫折が、現在の経営につながった
――経営者になるまでの歩みを教えてください。
もともと、経営者になろうとは考えていませんでした。高校卒業後は大手の鉄鋼会社で働きながら、プロボクサーとして活動していたからです。
その後、ボクシングの夢を諦めたタイミングで、社会で通用するスキルを身につけたいと思い、大企業を離れて営業の世界に入りました。
ただ、最初の会社は3カ月、次の会社も半年ほどで退職しています。営業の仕事に悩み、自分にできることはないかと考えた結果、フリーランスとして営業を始めました。周囲の方々に助けていただきながら、少しずつ成果を出せるようになり、収入も伸ばすことができました。
何者でもなかった自分が営業で成果を出せるようになった経験を経て、自分が本当にやりたい営業やビジネスは何だろうと考えるようになりました。その時期に出会ったのが、「IKIGAI」という概念です。
――「IKIGAI」と出会ったきっかけは何だったのでしょうか。
営業代行の仕事をしていた頃、趣味として英会話を始めました。その際、英会話講師から「あなたのIKIGAIは何ですか」と聞かれたのですが、私は答えることができませんでした。
講師から、IKIGAIという言葉が海外で注目されていると聞き、調べ始めたことが最初のきっかけです。調べるなかで、これは日本に残さなければならないものだと心を動かされました。
その後、IKIGAIについての取材を始め、より多くの人に届けたいと考えて、インターネットメディアを立ち上げました。IKIGAIを残し、次世代につなげるために事業ができないかと考え、新しく会社を設立したという流れです。
――人生の価値観が大きく変化した出来事を教えてください。
大きな転機は、プロボクサーとしての夢を諦めた時期です。鉄鋼会社で働きながら競技を続け、最後の頃には不眠症となり、ほとんど眠れないまま夜勤へ行くほど心身ともに厳しい状態でした。
そんな中、新型コロナウイルスの流行で競技を休むことになり、妻と家でトランプやゲームをして過ごしました。
その何気ない時間が、今でも人生で一番楽しかったと思えるほど幸せでした。立ち止まったことで、上を目指すことだけでなく、日常の小さな時間こそ大切なのだと気づきました。
共鳴できる相手と、人生を聞くことから関係を築く
――現在の組織体制について教えてください。
現在は一人法人として運営し、必要に応じて業務委託や外部のメンバーと協力しています。協業する際は、まずインタビューを行い、その方の人生やIKIGAI、大切にしている価値観を聞いたうえで、自社の理念と合うかを見ています。
IKIGAIを残したいという想いに共感し、仕事を楽しみながら、何かを残したい、周囲を良くしたいという志を持つ方と、一緒に取り組んでいきたいです。
100人のIKIGAIをつなぎ、誰もが成長できる仕組みへ
――今後、挑戦したいことを教えてください。
IKIGAIインタビューは50人を達成し、今後は年内に100人を目指しています。100人のIKIGAIや価値観が集まった段階で、ビジネスだけを目的とせず、相性の良い人同士をつなぎ、新たな関係や活動が生まれる場をつくりたいです。
また、「一番最初にギブをする」という考え方も広めていきたいと思っています。私にとってのギブは、相手の人生を丁寧に聞き、時間をかけて記事にすることです。
記事を通じて本人や読者の心が動くことを大切にしながら、まず自分から価値を届ける姿勢を貫いていきます。
人生を聞くことが、仕事であり楽しみでもある
――現在、仕事に対してどのような想いを持っていますか。
現在は、仕事が趣味のような感覚になっています。メディアに本格的に取り組み始めたのは今年の3月頃で、それまでは緩やかに活動していました。本格的に進めるようになってから、仕事がとても楽しいと感じています。
さまざまな方の人生を聞くこと自体が、私にとって趣味のようなものです。インタビューに合わせて出張し、その機会に現地で過ごすこともあります。仕事と楽しみが自然につながっている感覚です。
――リフレッシュするときは、どのように過ごしていますか。
妻と遊びに行ったり、どこかへ出かけたりしています。また、お風呂に入ることや、サウナへ行くこともリフレッシュになっています。
今はそれほど多く休んでいるわけではありませんが、仕事自体をつらいとは感じていません。さまざまな方の人生やIKIGAIを聞くことを楽しみながら、一つひとつの記事を積み重ね、IKIGAIという考え方をより多くの人へつないでいきたいです。