“食”からペットの価値を変える――東北発ブランド「pekofull」が描く新たな市場創造

株式会社ぺこふる 代表取締役 菊地諒氏

ペットを取り巻く環境が大きく変化する中で、「食」を軸に新たな価値創出に挑む企業があります。東北発のペットフードブランド「pekofull」を展開する株式会社ぺこふるです。人間と同等の品質基準でつくられるペットフード、そして“思い出をつくる食事”という独自のコンセプト。その背景には、家業としての食品工場の存在と、経営者としての強い問題意識がありました。本記事では、代表取締役の菊地諒氏に、事業の特徴や創業の経緯、今後の展望について伺いました。

東北発・高品質ペットフードブランドの挑戦

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、東北発のペットフードブランドを展開しており、高品質なペットフードの企画・開発・販売を主な事業としています。背景には家業としての食品工場があり、人間向け食品と同レベルの製造ノウハウを活かしている点が特徴です。そのノウハウを応用し、ペットにとっても安心・安全で、かつ食いつきの良い商品を開発しています。

単なるペットフードではなく、「食べる体験そのもの」に価値を置いている点が重要です。ペットと飼い主にとって、食事が思い出になるような商品づくりを目指しています。

――販売チャネルについて教えてください。

売上は現在、自社ECと卸売がほぼ半々です。自社ECではブランドの世界観や想いを直接伝えることができ、ファンづくりの中心となっています。一方で卸売では、ペット専門の卸業者を通じて、ペットショップや楽天やAmazonなどのモールに展開し、両軸をバランスよく伸ばしている状況です。

家業と新規事業――経営の道を選んだ理由

――経営者になられた経緯を教えてください。

もともと家業として、水産加工を行う食品工場がありました。祖父が創業し、約50年続く事業です。自身は長男として将来的に家業を継ぐ前提で、大学では経営を学び、新卒で政府系金融機関に入社しました。東京本店と大阪で約6年間 、中小企業支援に携わってきました。

転機となったのは2023年、家業に戻る決断をしたタイミングです。水産業は原材料の確保やコストの問題など課題が多く、既存事業だけでは将来の成長に限界があると感じていました。そこで新たな柱として選んだのがペットフード事業です。家業とは別法人として株式会社ぺこふるを立ち上げ、ブランドをスタートしました。

――現在の組織体制について教えてください。

現在は基本的に一人で経営していますが、副業メンバーが3名います。EC運用、法人営業、アシスタント業務といった形で、それぞれ専門的に関わってもらっています。固定雇用ではなく、変動費型の柔軟な体制で事業を回しています。

“思い”が価値になる市場――ブランドづくりの本質

――事業における強みはどのような点ですか。

最大の強みは、食品工場由来の製造品質と、ブランドコンセプトの両立です。ペットフード市場は機能性だけでなく、「どんな想いで作られているか」が非常に重要です。ペット自身は言葉を話せないため、最終的に価値を判断するのは飼い主です。そのため、作り手の姿勢や思想がダイレクトに問われる市場だと考えています。

また、当社では「はらぺこたちのおなかもこころもフルにする 」というパーパスと、「食べる想い出をつくる」というミッションを掲げています。この軸をぶらさずに商品開発とブランド構築を行っています。

――商品面での特徴について教えてください。

当社では「国産フレッシュロールフード」という商品を展開しています。これは海外では一般的なカテゴリーですが、日本ではまだ普及していない分野です。日本産の食材を使用したロールフードとしては国内初であり、この新しいカテゴリーの認知拡大とともに成長しています。食いつきの良さが評価されており、今後さらに広がる可能性を感じています。

事業拡大と市場創造への戦略

――今後の展望について教えてください。

まずは年商1億円の達成を目標とし、単月1,000万円の売上を実現することを短期的な指標としています。そのために、自社ECでは商品ラインナップの拡充を進めています。どんな犬種や年齢、健康状態のペットでも「これなら食べられる」と思える商品を揃えたいと考えています。

法人向けでは、ペットショップとの取引拡大に加え、「お土産市場」への参入を進めています。ペットと旅行する人が増えている中で、旅先で購入できるペット向け商品の需要は確実に伸びています。サービスエリアや道の駅、ペット同伴可能な宿泊施設などへの展開を視野に入れています。

さらに国内で実績を積んだ後は、香港・シンガポール・台湾といったアジア市場への進出も計画しています。

課題は“人”――共感でつながる組織づくり

――現在の課題について教えてください。

最大の課題は人材です。単にスキルが高いだけではなく、ブランドの思想や価値観に共感できる人材が必要です。ペットフードは「想い」が重要な市場なので、そこを理解していないと本質的な価値は届けられません。

例えば言葉遣い一つでも、ペットをどう捉えているかが表れます。そうした細部まで共有できる仲間を増やしながら、少人数でも回る体制を構築することが重要です。今後はシステムやAIも活用しながら、効率的な運営を目指しています。

ペットの価値を変える――社会への問い

――社会に対してどのような影響を与えたいと考えていますか。

日本ではペットの法的な扱いが非常に未熟で、ペットフードも「雑貨」として扱われています。この現状に強い違和感を持っています。人間と同じように大切な存在であるにもかかわらず、制度や基準が追いついていません。

海外ではすでに食品レベル、あるいはそれ以上の基準でペットフードが管理されています。日本も同様に、ペットを“家族”として扱う社会へと変わっていくべきです。その第一歩として、「食」の領域から価値を引き上げていきたいと考えています。

経営者としての視点と日常

――リフレッシュ方法について教えてください。

食べることが好きなので、休日はさまざまなお店に行きます。ジャンルを問わず、新しい食体験を楽しむことがリフレッシュになっています。

経営そのものにも興味があり、気になる企業や店舗のビジネスモデルを調べることも多いです。趣味と仕事がつながっている感覚です。

挑戦する人へのメッセージ

――これから起業を目指す方へメッセージをお願いします。

まずはやってみることが大切だと思います。仮にうまくいかなかったとしても、その経験は必ず次に活きますし、経営経験のある人材は企業からも評価されやすいです。

自分が本当に好きな領域で、一度挑戦してみてほしいと思います。その経験が将来の選択肢を大きく広げるはずです。

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