地方の可能性をITで解き放つ──ふらっと株式会社が描く「伴走型DX」のかたち
ふらっと株式会社 代表取締役 宮地 寛将 氏
地方では「ITを導入したいけれど、何から始めればよいか分からない」という企業が少なくありません。ふらっと株式会社は、そうした企業に寄り添い、システム開発だけでなく企画・導入・運用改善までを一貫して支援するITコンサルティング会社です。本記事では、大手IT企業で20年以上の経験を積んだ宮地寛将氏が、地方でDXを推進する理由や、今後目指す姿について伺いました。
目次
ITで地方を中心とした中小企業を支える──ふらっと株式会社の現在地
――現在の事業内容について教えてください。
ITシステムの企画から開発、運用保守までを一貫して行っています。特にMicrosoft Power PlatformやAzureなどのクラウドサービスに加え、LINEなど身近なサービスと連携した業務システムの構築も得意としています。近年はAIも積極的に開発へ取り入れ、人とAIそれぞれの強みを生かすことで、少人数でも高品質かつスピーディーな開発体制を実現しています。
そのうえで、私たちは単なるシステム開発会社ではなく、経営や業務改善まで支援するITコンサルティング企業だと考えています。
現場に入って感じるのは、「ITを使っていない」のではなく、「使い方が分からないまま止まっている」ケースが多いということです。そこに壁がある以上、どれだけ良いサービスがあっても届かないと感じています。だからこそ、システムを納品して終わりではなく、導入後も利用状況を見ながら改善を重ね、企画・開発・運用まで継続して伴走することを大切にしています。
実際にお話を伺っていくと、「何から手をつけていいか分からない」という段階で止まっている企業も少なくありません。そうした状況に触れるたびに、優れたシステムを作ること以上に、現場に寄り添い、一緒に活用方法を考えることの重要性を感じています。
地域の企業が少しずつITを活用できるようになっていく過程に関われることにやりがいを感じていますし、その変化を目の当たりにするたびに、この取り組みには意味があると実感しています。
「何のために働くのか」──キャリアと起業の原点
――起業されたきっかけについて教えてください。
20年以上、大手企業で働き続けてきました。同じお客様のシステムを支える仕事で、社会インフラを担っているという誇りはありましたが、働き方としては厳しい場面も多くありました。年末年始や連休でも対応が必要になることがあり、家族との時間を後回しにせざるを得ない状況が続いていました。
特に印象に残っているのは、結婚記念日にまで仕事のトラブルで徹夜をしたことです。その瞬間に「自分は何のために働いているのか」と考えさせられました。その仕事に対する責任を果たせたと感じていた一方で、失っているものにも気づいた出来事でした。
その後、震災後の現地訪問や海外での経験を通じて、自分の仕事の意味を改めて見つめ直す機会がありました。復興の現場では無力感を覚え、インドでは何もできない自分に対して強い違和感を抱きました。そうした経験を重ねる中で、知っているだけでは何も変わらない、行動することが必要だと感じるようになりました。
地方を中心とした中小企業には、IT担当者がいない企業も多く、情報や相談相手が不足していることでDXが進まないケースを数多く見てきました。だからこそ、その差を埋める存在になりたいと思いました。そのような企業にとって「困ったときにまず相談できる存在」が必要だと感じています。そのため社名の「ふらっと」には、「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」という思いを込めました。
小さな組織だからこそできること──関係性を重視した運営
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
会社は大きくなく、私を含めて3人で運営しています。自分は東京にいて、他のメンバーは島根にいるため、物理的に離れた環境で仕事をしています。だからこそ、コミュニケーションは意識的に取るようにしています。
毎日朝会を行い、業務の確認だけでなく、その日の状態や考えていることまで共有する時間を設けています。これまでの経験の中で、IT業界ではコミュニケーション不足が原因で心身のバランスを崩してしまうケースを多く見てきました。そのため、放置しないことを前提に、小さな変化にも気づける関係性を築くことを大切にしています。
また、組織が小さい分、一人ひとりの影響が大きくなります。そのため、スキルだけでなく、理念や考え方に共感してもらえるかどうかを重視しています。利益だけでなく、誰のために取り組むのかという視点を共有できることが、長く一緒に働く上で重要だと感じています。
導入の壁を壊す──新しいIT支援のかたち
――今後の展望について教えてください。
中小企業にITが広がらない理由の一つは、導入のハードルが高いことだと感じています。見たこともないものに対して費用を払うことへの不安が大きく、それが導入の妨げになっているケースが多くあります。
そこで、従来の「システムを作って終わり」という形ではなく、初期導入の負担を抑え、月額制で継続的に改善していくサービスモデルを採用しています。まずは導入しやすい形で始めていただき、価値を実感しながら長く利用していただくことで、お客様にも安心してDXへ取り組んでいただけると考えています。
実際に現場の声を取り入れながらシステムを作ることで、より実用的なものが生まれ、それが別の現場にも広がっていく流れが見えてきました。こうした循環が生まれることで、地域全体の活性化にもつながっていくと感じています。これまでに販売管理システムや医療機関向け予約システム、防災分野など、業界を問わず現場に合わせたDXを支援してきました。いずれも「現場で本当に使い続けられること」を重視したシステムづくりを心がけています。
導入して終わりではなく、使い続ける中で新たな気づきが生まれ、それが次の価値につながっていく。その連鎖が少しずつ広がっている実感があります。
そのような中、AIの進化によって、小さな企業でも大企業に匹敵するIT活用が可能な時代になりました。AIは人に代わるものではなく、人がより価値の高い仕事に集中するためのパートナーだと考えています。だからこそ、私たち自身も積極的にAIを活用し、お客様へより高い価値を提供できる体制づくりを進めています。 今後はそうした技術も積極的に取り入れながら、地方を中心とした中小企業が、都市部の企業と変わらない環境で挑戦できる社会を実現していきたいと考えています。地方を中心とした中小企業がITを活用できるようになることで、都市との格差を少しずつ埋めていけるはずです。関わる人たちと協力しながら、その流れを広げていきたいと考えています。
人生は一度きり──譲れない価値観と向き合い方
――リフレッシュ方法について教えてください。
リフレッシュの方法としては、一人で歩く時間を大切にしています。スマートフォンやパソコンから離れて、頭の中を整理するようにしています。日々さまざまなことが入ってくる中で、一度立ち止まって考える時間が必要だと感じているからです。
歩きながら考えていると、自然と整理されていく感覚があります。その時間があるからこそ、また前に進める状態をつくれているのだと思います。
――最後に、ご自身の価値観について教えてください。
やはり「人生は一度きり」という考えが根底にあります。若い頃に読んだ本の影響もあり、世の中の仕組みは絶対ではないと感じています。誰かが決めたルールであって、それを変えていくこともできるものだと思っています。
だからこそ、自分が経験してきたことを伝えることで、誰かの役に立ちたい。それが自分の使命だと考えています。また、事業というのは必ず何かの課題を解決するものであるべきだと思っています。単に収益を上げるためではなく、誰のどんな困りごとを解決するのか。その軸はぶらしたくないと感じています。
これまでの経験をどう活かしていくかを考えながら、自分なりの形で社会に価値を返していきたいと思っています。
ITは目的ではなく、地域や企業の課題を解決するための手段です。だからこそ、現場に寄り添い、本当に役立つ仕組みを作り続けたいと思っています。そして、「困ったときには、まず『ふらっと』に相談してみよう」と思っていただける存在であり続けたいと思います。