売上づくりと文化継承を両立する――“中庸”の精神で職人文化の未来をつなぐ挑戦
株式会社中庸 代表 仁井田 紀之氏
株式会社中庸は、広告運用やSNSマーケティング支援を手がける一方で、日本各地の職人や伝統産業を取材・発信するメディア運営やEC事業にも取り組む企業です。地方企業の集客支援で培ったマーケティングの知見を活かし、売上づくりと価値発信の両面から事業者を支援しています。その背景には、「売上」と「想い」のバランスを大切にする仁井田氏ならではの経営哲学がありました。本記事では、創業の経緯や事業の特徴、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。
マーケティングの力で地方企業と職人を支える事業づくり
――まずは、現在の事業内容や特徴を教えてください。
現在は大きく2つの事業を展開しています。
1つは、企業向けのマーケティング支援です。Instagram運用の代行や広告運用などを中心に、集客や売上づくりのサポートを行っています。
もう1つは、日本の職人や伝統産業に関わる事業です。地方企業を支援する中で、優れた技術や文化を持ちながらも後継者不足や販路の課題を抱える職人の方々と出会う機会が増えました。そうした現状を受け、職人を取材・発信するメディア「Yesterday」を立ち上げています。
――会社を立ち上げた経緯についても教えてください。
もともとは出版社でマーケティングの仕事をしていました。その中で、良い商品やサービスを持ちながら十分に売れていない企業や、集客に力を入れられていない企業、自社の価値を過小評価している企業を数多く見てきたんです。
そうした経験から、「マーケティングの力で支援できることがあるのではないか」と考え、そのまま事業として立ち上げることにしました。
また、私は地方に住みながらマーケティングに携わってきました。そうした経験やスキルを持つ自分が地方にいることには意味があるのではないかとも感じていました。特に職人や伝統産業の分野では、優れた技術を持ちながらも事業として継続することが難しいケースが少なくありません。
もちろん私一人で何かを変えられるとは思っていませんが、少しでも売上づくりに貢献できれば、その産業に関わる人が増え、文化や技術を未来へつないでいくことにもつながるのではないかと考えています。そうした思いが、現在の事業につながっています。
――御社ならではの強みはどのような点にありますか?
組織面では、長年付き合いのある仲間が多いことが強みです。同じ高校や大学の友人、以前の職場の同僚や後輩など、10年以上の関係があるメンバーが中心となっています。信頼関係があるからこそ踏ん張りが利きますし、良い仲間がまた良い人材を連れてきてくれる好循環も生まれています。
実務面では、私自身が新卒時代から現在まで広告運用に携わってきた経験があります。さらに専門性を持つメンバーも集まっているため、広告だけでなく取材やコンテンツ制作まで幅広く対応可能です。規模の大きな会社ではありませんが、その分柔軟かつ横断的な支援ができることが特徴だと思っています。
「売上」と「想い」の両立を目指す経営哲学
――会社名に込めた想いや理念について教えてください。
「中庸」という社名そのものが理念です。過不足なく、バランスが取れた状態を意味する言葉ですが、私たちの仕事にも通じる考え方だと思っています。
私たちは商品を作る側ではなく、売る側の立場です。そのため、売上だけを追い求めることもできます。しかし、それだけでは本当に良い価値を届けているとは言えません。一方で、理念や思想だけを語っていても事業は続きません。
職人の方々と接していると、すぐには利益につながらない工夫やこだわりを持ちながら仕事をされていることがよくあります。その価値を正しく伝えながら、同時に売上も作っていく。その両方のバランスを取ることが大切だと考え、「中庸」という名前を選びました。
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
ひとつは、自分というリソースを投下した時に、より大きなことができると感じたからです。また、一般的な組織の中でみんなと同じように働くことが、自分にはあまり向いていないとも感じていました。
加えて、個人事業主として活動していた頃、独立した後輩たちから仕事の相談を受ける機会が重なりました。それなら会社として取り組んだ方が良いのではないかと思い、法人化を決めたという流れです。
強みにフォーカスする組織づくり
――組織づくりや人材配置で意識していることは何でしょうか?
できるだけ一人ひとりの強みにフォーカスした配置を心がけています。ドラッカーの考え方にもありますが、弱みを改善するよりも、強みを活かした方が大きな成果につながると考えているからです。
また、モチベーションが先にあるのではなく、行動が先にあるとも考えています。何かに取り組むことでやる気が生まれ、その結果として成果につながるという順番です。
私にとって強みとは、努力しなくても自然とできることです。例えば事務作業やIT系の業務よりも、クリエイティブな仕事の方が自然と取り組めます。同じように、メンバーそれぞれが無理なく動ける領域を見つけて任せることで、成果も出やすくなると思っています。
――今後、どのような人となら一緒に働きたいですか?
素直な人と一緒に働きたいですね。そして、自分だけでなく仲間や会社全体のことを考えられる人です。
個人の利益だけではなく、全体最適の視点を持てる人であれば、チームとしても良い方向に進んでいけると思います。
――これまでの経験の中で、影響を受けた人物について教えてください。
高校時代のラグビー部の顧問の先生と、小学生の頃からお世話になっているキャンプ場経営者のお二人です。
お二人とも自分の専門分野をやり切っている方であり、とても愛情深い人でもあります。また、幅広い知識を持ち、さまざまなことを教えてくださいました。そうした姿勢や生き方から学ぶことは多く、今でも大きな影響を受けています。
オフラインの価値を見据えた次の挑戦
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今後は出店に挑戦したいと考えています。
近年はAIの普及によってオンライン化がさらに進んでいますが、その反動としてオフラインの価値が見直される場面も増えていくのではないでしょうか。そうした流れを踏まえ、リアルな接点を持つ取り組みに力を入れていきたいと思っています。
――その実現に向けて、どのような課題を感じていますか?
特にありませんが、強いて挙げるなら資金面です。新しい挑戦を進める中で、お金が足りなくなる可能性はあると思っています。
その場合は資金調達を行うことも含めて検討しなければなりませんし、売上をしっかり作ることも必要です。今後の展開を見据える上では、資金調達がひとつのテーマになると考えています。