AIと半導体で日本のものづくりを支える――Tokyo Artisan Intelligenceが挑む社会課題解決
Tokyo Artisan Intelligence株式会社 代表取締役社長/CEO・CTO 中原 啓貴氏
Tokyo Artisan Intelligence株式会社は、クラウドに依存しないAI技術を強みに、鉄道や製造業などの現場へAIソリューションを提供する大学発ベンチャーです。2020年の設立以来、現実世界の機器や設備、社会インフラと連携して動く「フィジカルAI」を活用した業務効率化や現場課題の解決に取り組み、近年ではAI処理を支える半導体チップ・ハードウェア分野へ事業を拡大し、AIソリューションを一貫して最適化する技術基盤の構築を進めています。本記事では、代表の中原啓貴氏に、事業の特徴や組織づくりへの考え方、今後の展望などについて詳しく伺いました。
目次
現場で動くAIが支える、日本のものづくりの未来
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、AI技術を活用した業務効率化・自動化ソリューションの開発を手掛けています。特に強みとしているのは、クラウド環境に依存せず、端末や機器上でAIを実行できる技術です。こうした技術を活用し、鉄道や製造業、ロボット、船舶といった現場で稼働するAIソリューションの開発・提供を行っています。
また、単にAIシステムを開発するだけでなく、エッジコンピュータや半導体チップを含むハードウェアへの実装、現場への導入・実装まで一貫して対応できることも当社の特徴です。研究開発と現場実装の両方を理解したエンジニアが実際に現場へ入り込み、運用環境に合わせた実装や最適化を行うことで、実用性の高いソリューションを実現しています。
――会社として大切にしている理念やビジョンは何ですか。
当社のミッションは、AI技術を活用して日本が直面する人手不足という社会課題の解決に貢献することです。特に、ものづくりの現場で活用されるフィジカルAIの開発・実装を通じて、生産性向上や業務効率化を支援し、日本の産業基盤を支える存在でありたいと考えています。
また、当社はAI開発にとどまらず、半導体技術まで含めた事業領域の拡大を進めています。将来的には「AI半導体企業」として独自の競争力を確立し、技術革新と事業成長の両立を実現したいと考えています。
社会課題の解決と企業としての持続的な成長を両輪で追求し、日本のものづくりの発展に貢献していくことが当社のビジョンです。
研究者から経営者へ――社会実装への挑戦が導いた決断
――経営の道に進んだきっかけを教えてください。
私はもともと大学で研究活動に従事しており、東京工業大学で准教授を務めていました。研究成果を社会に還元したいという思いは以前から持っていましたが、その考えを具体的な行動へと変えたのが、ロンドンでの研究留学です。
現地では、大学発の研究成果をもとに事業を立ち上げ、社会実装まで主体的に取り組む研究者が数多く活躍していました。その姿に触れたことで、研究成果を論文として発表するだけでなく、自ら事業を通じて価値を届けることも研究者の重要な役割だと考えるようになっていったんです。
その後、コロナ禍による環境変化を契機に起業を決断し、2020年に大学発ベンチャーとして当社を設立しました。現在は研究開発だけでなく、事業として価値を生み出しながら社会課題の解決に取り組んでいます。
――経営判断をするうえで大切にしていることは何ですか。
最も重視しているのは、お客様との信頼関係です。企業として売上や利益を追求することは重要ですが、それらは信頼のうえに成り立つ結果だと考えています。まずはお客様が抱える課題やニーズを正しく理解し、期待に応える価値を提供することが大切です。
特に当社が関わる鉄道業界などの社会インフラ分野では、高い品質や安全性が求められます。だからこそ、目先の成果だけを追うのではなく、一つひとつの仕事をていねいに積み重ねながら信頼を築いていくことが欠かせません。その積み重ねが継続的な取引や新たな機会につながり、結果として会社の成長にも結び付いていくと考えています。
一人ひとりの成長が、組織の力になる
――組織運営で大切にしていることを教えてください。
社員一人ひとりを尊重することです。人によって大切にしているものは違いますし、働く目的も異なります。その想いを理解しながら、一緒に成長していける組織をつくりたいと考えています。
また、社員には「組織で動くこと」「顧客起点で考えること」「挑戦し学び続けること」「信頼を積み重ねること」を大切にしてほしいと伝えています。AI業界は変化が速いため、常に新しいことを学び続ける姿勢が不可欠です。私自身も、経営者として学び続けることを意識しています。
――どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか。
成長意欲があり、前向きに挑戦できる方です。スキルや経験も大切ですが、それ以上に行動力や成長への意欲を重視しています。
当社は現在、事業拡大とともに成長を続けているフェーズにあります。その変化を楽しみながら、自分自身も成長したいという方にとっては、多くの成長機会がある環境です。
会社の成長とともに自身も成長していきたい――そんな前向きな方と一緒に挑戦していきたいですね。
二つの顔を持つからこそ生まれる発想
――休日やリフレッシュ方法について教えてください。
大学教員としての研究活動と経営者としての業務を行き来することが、私にとってはよい気分転換になっています。技術や研究に向き合う時間と、事業や組織運営に向き合う時間では視点が大きく異なるため、新たな発想や気づきにつながることも少なくありません。
ただし、社員にはしっかりと休息を取ってほしいと考えています。継続的に成果を出していくためにも、オンとオフの切り替えは大切にしてほしいですね。
AIと半導体を両輪に、日本の産業を次のステージへ
――今後の展望について教えてください。
現在は鉄道業界を中心に事業を展開していますが、今後は製造業やロボット分野など、より幅広い産業領域への展開を進めていきたいと考えています。フィジカルAIを軸としたソリューションの提供を通じて、多様な現場の課題解決に貢献できる事業基盤を構築していく方針です。
また、中長期的にはAI事業に加え、現在取り組んでいる半導体事業をもう一つの成長の柱へ育てていきたいと考えています。半導体業界では技術継承が大きな課題となっており、日本の産業競争力を維持するうえでも重要な局面を迎えています。AIと半導体の両領域で技術力を磨きながら、日本のものづくりを支える企業へと成長していきたいです。
――最後に読者へメッセージをお願いします。
当社は、AIと半導体を活用し、日本のものづくりや人手不足という社会課題の解決に挑戦しています。技術だけではなく、現場を理解し、お客様との信頼関係を築くことを大切にしながら事業を進めてきました。
これからも新しい挑戦を続け、日本の産業を支える企業として成長していきたいと考えています。技術の可能性を信じ、ともに未来をつくっていける方々との出会いを楽しみにしています。