人と動物、人と人が支え合う社会へ――株式会社ANELLA Groupが描く、持続可能な福祉の未来
株式会社ANELLA Group 代表取締役 伊東 大輝氏
犬や猫の保護活動は、多くの善意によって支えられています。一方で、寄付やボランティアだけでは継続が難しいという課題もあります。株式会社ANELLA Groupは、人間福祉と動物福祉を組み合わせた独自の仕組みで、持続可能な保護活動を実践しています。創業の経緯や事業への想いについて、代表取締役・伊東大輝氏に伺いました。
目次
人間福祉と動物福祉を組み合わせ、新しい保護活動の形を築く
――現在の事業内容について教えてください。
2017年に創業した当初は、シェアハウスのプロデュースや映像制作、飲食プロデュースなど、さまざまな事業を展開していました。その後、2019年に現在のペット事業へ転換し、トリミングサロン兼保護施設としてスタートしたのが今の事業の始まりです。
現在はトリミングサロンに加え、フードメーカーやペット保険代理店、犬と利用できる飲食店、宿泊施設なども運営しています。さらに保護犬猫ふれあいカフェと、就労継続支援B型事業と組み合わせることで、障がいのある方の就労支援と犬猫の保護活動を両立できる仕組みを構築しました。
犬猫のお世話を仕事にすることで、利用者の方が毎日通えるようになったり、外へ出るきっかけになったりするケースも多くあります。その福祉事業の収益が犬猫の医療費や活動費にもつながるため、人間福祉と動物福祉が循環する形になっています。寄付や募金に頼らず、自立して運営できる保護活動を目指してきた結果、この形にたどり着きました。
――ペット事業へ転換したきっかけを教えてください。
きっかけは、妻が長年続けていた保護活動でした。活動を続ける中で、多くの団体が寄付やボランティアだけで運営され、支援する側も活動する側も大きな負担を抱えている現実を知りました。
「何か解決できないだろうか」「少なくとも継続できる仕組みを作れないだろうか」。そんな想いから、まずは保護施設を併設したトリミングサロンを立ち上げました。
最初から大きな理想を掲げていたわけではありません。「まずはやってみよう」という気持ちで始めた挑戦でしたが、試行錯誤を重ねる中で、現在の事業モデルへと発展していきました。
一頭、一人と向き合う積み重ねが、社会を変える力になる
――経営をする上で大切にしている価値観を教えてください。
私が判断の軸にしているのは、「三方よし、四方よし」という考え方です。お客様だけが満足しても成り立ちませんし、障がいのある方や犬猫、従業員など、関わる人、動物すべてにとって良い形でなければ、本当の意味で持続する事業にはならないと思っています。
この業界は、利益を優先すると犬猫に負担がかかり、犬猫のためだけを考える従業員の負担や経営が苦しくなるという難しさがあります。だからこそ、その両方を成立させることを常に意識しています。
こういった事業は特に利益を出すことに対して、ネガティブな印象を持たれることもありますが、私はそうは考えていません。利益があるからこそ、犬猫へより良い環境を用意でき、スタッフも十分に配置できます。活動を長く続けるためにも、収益性から目を背けず、持続可能な仕組みをつくることを大切にしています。
――経営者になったきっかけを教えてください。
実は会社員として働いた経験がありません。気付けば経営者になっていたという感覚ですね。経営者になることを強く意識していたわけではなく、「自分でやるものなんだろうな」と漠然と思っていました。特別な憧れがあったわけではありませんが、自然な流れで今の道を歩み、現在につながっています。
仲間同士の思いやりが、より良いサービスにつながる
――組織づくりで大切にしていることを教えてください。
得意不得意は人それぞれなので、適材適所を意識しています。数字が得意な人には数字を任せ、マネジメントが得意な人には組織を任せるなど、一人ひとりが力を発揮できる環境をつくりたいと考えています。
また、福祉や保護活動の現場では、お客様や犬猫への愛情を持って働いているスタッフが本当に多い一方で、スタッフ同士の思いやりが不足してしまう場面もあると感じています。
だからこそ、お客様だけではなく、一緒に働く仲間にも愛を持って接してほしいと伝えています。仲が良いだけではなく、お互いを尊重しながら働くことが、結果として利用者の方や犬猫にも伝わると思っています。
本社では対面でのコミュニケーションも大切にしています。全国展開しているため出張も多いですが、なるべくオフィスへ足を運び、役員や社員と直接話す機会をつくっています。何気ない会話も、円滑なコミュニケーションにつながっていると感じています。
――どのような人と一緒に働きたいですか。
一番重視しているのは、「いい奴」だと思える人です。
ビジネススキルの高さよりも、素直さや人柄を大切にしています。その上で、分からないことを自分で調べたり学んだりする意欲がある人には魅力を感じます。
福祉や犬猫に関する知識は仕事をしながら身に付けられますが、学び続ける姿勢は本人次第です。そうした積み重ねが本人の成長につながり、会社全体の成長にもつながると考えています。
今ある事業を磨き続け、その先の課題にも向き合う
――今後の展望について教えてください。
組織が大きくなるにつれて、新しい役職や責任を担うメンバーも増えてきました。これからは、一人ひとりがより主体的に活躍できる組織をつくっていきたいと考えています。そのためにも、権限移譲を進めながら、それぞれが責任を持って仕事に取り組める環境を整えていきたいですね。
新しい事業を次々に立ち上げるというよりは、まずは今取り組んでいる事業をしっかり伸ばすことを優先しています。この仕組みを全国へ広げていくことが、殺処分0やその先の未来に近づく一番の近道だと思っています。
一方で、障がい福祉や犬猫を取り巻く環境には、まだ多くの課題があります。今後は中度・重度の方への支援など、現在の事業を軸にしながら、新たに解決できる領域にも挑戦していきたいです。
店舗数が増えれば、これまで経験したことのない課題も出てくるはずです。ただ、未来を過度に心配するのではなく、その都度向き合い、一つひとつ解決していけばいいと考えています。予測できることは準備し、予測できないことは柔軟に対応する。その積み重ねが、事業をさらに前へ進めていく原動力になると思っています。
家族との時間が、明日への活力になる
――休日はどのように過ごされていますか。
休日は、子どもたちと過ごす時間がほとんどです。3人の子どもがいるので、土日は一日中一緒に遊んでいることが多いですね。友人家族と集まってバーベキューをしたり、アスレチックへ出かけたりと、にぎやかに過ごしています。
正直なところ、体力的には平日より土日のほうが大変なこともあります。それでも、家族と過ごす時間は私にとって大切な時間になっています。子どもたちの成長を間近で感じられる貴重な時間でもあります。
本当の意味で一息つけるのは、子どもを寝かしつけた後の少しの時間かもしれません。仕事を始める前の朝の静かな時間や、サウナで過ごすひとときは自然と気持ちが切り替わります。
だからこそ、これからも目の前の一人、一頭に真摯に向き合いながら、自分たちらしい歩みを続けていきたいと思っています。