「100万円プレイヤーを100人」――一人ひとりの挑戦を支えるSAKURA MILLの経営哲学
株式会社SAKURA MILL 代表 斎藤 岳夫氏
株式会社SAKURA MILLは、俳優やアーティスト、クリエイターのマネジメントと、テレビ番組、CM広告、SNSなどにおけるキャスティングを手がけています。現在はキャスティング事業が売上の大部分を占めていますが、斎藤岳夫氏が目指しているのは、人のマネジメントを中心に会社が成り立つプロダクションです。演者、マネージャー、事業主という複数の立場を経験してきた斎藤氏に、事業の強みや所属する「パートナー」への向き合い方、今後の展望について伺いました。
目次
演者と事務所、双方の立場を理解したマネジメント
――現在の事業内容について教えてください。
俳優やアーティスト、クリエイターのマネジメント業務と、テレビ番組、CM広告、SNSなどのキャスティング業務を行っています。数は多くありませんが、学校紹介動画や社内オペレーション動画など、業務で使用する映像の制作を請け負ったこともあります。
現在、会社の売上の約9割を占めているのはキャスティング事業です。ただ、今後メインにしていきたいのはマネジメント事業です。マネジメントだけですぐに会社の売上をつくることは難しいため、まずは比較的事業化しやすいキャスティングから始めました。
――御社ならではの強みは、どのような点にありますか。
私自身、19歳頃から20代半ば頃まで役者として活動していました。その後はタレントマネージャーも経験し、芸能事務所の仕組みや業務について学びました。
芸能関係の仕事を離れた後は、個人で営業代行のような仕事にも携わっています。不動産の賃貸・売買仲介やリフォーム、転職・人材紹介、保険関連など、提携先の企業と連携しながら幅広い業界のサービスを扱ってきました。
演者側、事務所側、事業主側という複数の立場を経験している人は、業界内でもそれほど多くないと思います。それぞれの立場の気持ちや事情をある程度理解できることは、現在のマネジメントやキャスティングにも生かされています。
才能ある人が活動を続けられる環境をつくる
――会社経営の軸となっている考え方を教えてください。
若い頃に演劇の世界で活動する中で、才能のある先輩や、素晴らしい作品をつくる劇団が活動をやめていく姿を数多く見てきました。当時から、とてももったいないことだと感じていたんです。
以前の芸能界は、極端に言えば収入がゼロか、大きく成功するかという、1か100かの世界だったと思います。しかし現在は、テレビ以外にもさまざまなメディアがあり、働きながら副業や兼業として芸能活動を続けることもできます。
専業として生活できなくても、年間100万円や200万円の芸能収入があれば、活動を続けられる人は増えるはずです。続ける人が増えれば、その中から突出した人が現れる可能性も高まります。
以前の芸能事務所が、100人の所属者の中から10人のスターを生み出す考え方だったとすれば、私は「100万円プレイヤーを100人つくる」という考え方です。年間100万円を稼ぐプレイヤーが日本一多い事務所をつくりたいと思っています。
――所属者を「パートナー」と呼んでいる理由を教えてください。
当社では、所属者をタレントではなく「パートナー」と表記しています。そこには、お互いが対等な立場であるという意味を込めています。
当社は、特別に大きな人脈や業界との強いパイプをもとに始めた会社ではありません。そのため、一方的に会社が所属者を支配するのではなく、お互いに足りない部分を補いながら、同じ方向へ進む関係をつくりたいと考えています。
やりたくないことをさせず、本人の意思を尊重する
――パートナーとのコミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
一言で言えば、「やりたくないことをさせない」ということです。
私自身、役者として所属していた頃、別の方向性で活動することを勧められた経験があります。事務所としては可能性を考えて提案してくれたのだと思いますが、私はその分野に強い興味を持てず、続けることができませんでした。
自分が望んでいないことや、好きではないことを「こちらの方がいいから」と勧めても、長くは続きません。本人のエネルギーや情熱も生まれにくいと思います。そのため、パートナーがやりたいと思ったことは、まず否定せず、本人の方向性に沿って支えることを大切にしています。
――パートナーはどのように決まっているのでしょうか。
現在のパートナーは、もともとの知り合いか、紹介でつながった方です。私から「入ってください」と積極的に勧誘した人はいません。会社の考え方をお話しした上で、入りたいと希望した方と一緒に活動しています。
私がつくりたいのは、やめづらい事務所です。熱狂的に「この会社が最高だ」と思われることよりも、「悪くないから、ここにいよう」と自然に思ってもらえる関係が理想です。
会社が仕事を一方的に与えるのではなく、本人が築いた信頼や実績から仕事につながることも大切にしています。本人が獲得した仕事に会社が関わる場合も、会社の取り分を最低限にし、できるだけ本人へ還元したいと考えています。
日本のトップで活躍する人を育てたい
――今後、挑戦していきたいことを教えてください。
最終的には、プロダクション業を確立し、人のマネジメントだけで会社が成り立つ状態を目指しています。簡単に実現できる業界ではありませんが、その入口としてキャスティング事業に取り組んできました。
今後は、人を育てることにも力を入れていきたいです。日本のトップレベルでパフォーマンスをする人、トップの仕事を担う人を育てたいと考えています。私自身が役者を経験しているからこそ、日本を代表する役者を育てたいという思いがあります。
――現在感じている課題は何でしょうか。
会社はまだ創成期にあり、立ち上げに伴う苦労は続いています。一方で、関わらせていただくテレビやCM広告、SNSの仕事は少しずつ増えています。
現段階では、できる仕事を可能な限り積み重ねていくことが重要です。キャスティング案件では、自社のパートナーに合う仕事があれば優先的に提案しながら、他社に所属する方やフリーで活動する方とも連携しています。
――経営を続ける上で、譲れない思いを教えてください。
会社がパートナーをコントロールしようとした時点で、会社を始めた根本の考え方が崩れてしまうと思っています。
あくまでも、タレントやアーティスト、クリエイターを陰ながら支える存在であり続けたいです。本人が進みたい方向を尊重し、その活動を支援することが、当社の役割だと考えています。
動物の動画で気持ちを切り替える
――休日や疲れたときのリフレッシュ方法を教えてください。
仕事では、年齢も立場も異なるさまざまな人と話し、向き合っています。その反動なのか、普段見る動画はほとんど動物の動画です。特に柴犬の動画をよく見ています。
現在は動物を飼っていませんが、実家では猫を飼っていました。将来迎えるとすれば、散歩の負担なども考えて、猫がいいかなと思っています。動物の動画を見る時間が、日々の癒やしになっています。