挑戦する人の足元を支え、創造に集中できる環境をつくる

六甲法律事務所 共同代表弁護士 松田 昌明氏

松田昌明氏は、弁護士として、企業の日常的な法律相談や契約書の確認をはじめ、相続、不動産、交通事故など、法人・個人を問わず幅広い案件に携わっています。弁理士としての登録も行い、商標や著作権といった知的財産、アプリやWebサービスの利用規約などにも対応。挑戦する事業者やクリエイターが、本来の仕事へ安心して集中できるよう、法律面から事業の土台を整えています。今回は六甲法律事務所の共同代表を務める松田昌明氏に、現在の業務、共同代表になるまでの歩み、専門家として大切にしている姿勢、今後の展望について伺いました。

企業法務から相続まで支える

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

事業者向けには、顧問契約を結び、日頃の法律相談や契約書などの文書チェックを行っています。また、弁理士として登録しているため、商標や著作権などの知的財産が関わる案件についても、法律と知財の両面から総合的にアドバイスしています。

特徴の一つは、アプリ制作やWebサービスなど、ITが関わる分野の支援です。対面で取引する場合には契約書が必要になりますが、アプリやWeb上でサービスを提供する場合には、利用規約やプライバシーポリシー、特定商取引法の表示が必要です。そうした法律文書はもちろん、文章の作成や確認もお手伝いしています。

――個人の方からは、どのような相談が多いのでしょうか。

割合として多いのは相続分野です。そのほか、不動産関係や交通事故なども幅広く扱っています。相続は、問題が表面化し、家族の間で話し合いがまとまらなくなってから相談を受けることも少なくありません。

特に、事業を築いてきた方が亡くなり、複数の子どものうち誰が会社を引き継ぐのか決まっていない場合には、事業承継と相続が大きく絡みます。株式や個人財産の分け方をめぐって対立し、兄弟間で激しい争いになることもあります。依頼者を守りながら、先代が築いた事業をどのように残していくかを考える案件は、強く印象に残っています。

――相続の問題を防ぐために、大切なことは何でしょうか。

遺言を残すことです。遺言は、子どもたちへの”最後のラブレター”といわれます。一つの文書があることで、亡くなった後に子どもたちが何年も争う事態を防げる場合があります。最初から完璧なものを作ろうと、重く考えすぎる必要はありません。遺言は作り替えることもできます。残された家族が揉めないように、今できる準備をしておくことが大切です。

専門性と寄り添う心を胸に

――共同代表になられるまでの経緯を教えてください。

司法試験に合格し、研修を受けた後、現在の事務所に雇用される形で入りました。そこから約10年間、勤務弁護士として経験を積み、その後、先代から承継した弁護士とともに、共同経営という形へ移行しました。共同代表になったのは、2021年1月です。

――仕事をする上で、譲れない姿勢は何ですか。

資格を持つ専門家として、プロフェッショナルである自覚と責任をしっかり果たすことです。一方で、個人の案件では、特に相談者が抱える感情や心理的な部分にも寄り添う必要があります。

相談者の気持ちを受け止めながらも、第三者である専門家としての立場は崩さず、必要なことをわかりやすく伝え、解決へ導く。その両面を大切にしています。特に個人の案件では、その方の人生に大きく関わることがあります。その分、責任は重いですが、解決した際に感謝していただけることもあり、大きなやりがいを感じます。

情報発信で支援の輪を広げる

――組織体制について教えてください。

現在、事務所には弁護士が3人、パラリーガルが3人います。弁護士3人でそれぞれの特性を活かして事務所を経営しています。

――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。

AIやITを活用したサービスをWeb上で展開する事業者への支援を広げたいと考えています。新規事業では、利用規約だけでなく、商標などの問題も関わります。著作権なども含め、そうした分野を、一体的に支援できることが私の強みです。

大きな企業であれば、費用をかけて大規模な法律事務所の弁護士チームに依頼できます。一方、成長途中の企業や、これから事業を広げようとしている会社にとっては、同じ方法が適しているとは限りません。私はチームではなく個人で案件へ対応するため、まだ規模の大きくない事業者にも近い距離感で寄り添い、機動的に対応できます。

事業が軌道に乗り始めた段階で足元を固め、トラブルが起きる前に備えることが重要です。顧問弁護士の相場は月額5万円(消費税別)程度です。この金額を支払える規模になれば、顧問契約を締結すべきでしょう。何かが起きてからでは、取れる手段が限られてしまいます。挑戦する経営者が安心して次の展開へ進めるよう、顧問弁護士として、事業を守る盾を整える役割を担いたいです。

――現在の課題と、取り組んでいることを教えてください。

課題は認知の拡大です。仕事は人とのつながりからいただくことが多いのですが、より必要としている方へ、こういう弁護士がいることを届けたいと考えています。特に、さまざまなことへ挑戦している経営者に、自分の存在や支援内容を知っていただくことが重要です。

そのため、ホームページのブログを定期的に更新し、SNSで発信しています。Googleマップを活用した対策なども、自分で試しながら取り組んでいます。効果を見て別の方法へ切り替えるなど、試行錯誤を続けています。自分自身が実践しているからこそ、これらについても事業者の方へアドバイスできることがあります。

また、企業内研修や業界団体の研修、大学の授業など、弁護士の中でも、人前で話す講師としての経験が非常に多くあります。このような研修についても、毎回実践しては反省を生かして改善し、よりわかりやすく、より伝わるように工夫しています。ハラスメント対策などをテーマに講師を務めることもあり、今後はこうした活動をさらに増やしていきたいです。

作る側に立ち、創造を支える

――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。

休日は子どもと過ごすことが多く、一緒にボードゲームをして遊んでいます。その延長で、刑事裁判を題材にしたボードゲーム、裁判カードバトル「逆転無罪」を自分で作りました。社会人のイベントや子ども向けの職業体験イベントに出展し、活用ししています。

昨年には、NHKの企画によるゲームコンテストへ応募し、決勝にも出場しました。現在は製品化に向けて動いているところです。今後は、学校での探求儒教での活用や社会人向の研修などでも活用したいと考えています。趣味から始まったものですが、創作的な活動にも挑戦していければと考えています。

――ボードゲームの制作は、弁護士業務にもつながっていますか。

クリエイターやアプリ制作、Webデザインなど、創造的な仕事に携わる事業者に繋がることも多く、支援する機会があります。私自身も、クリエイターのように何かを作る側を経験してみたいという思いがありました。

実際に自分で企画し、形にすることで、作り手が抱える課題や権利に対する感覚も理解しやすくなります。その経験を、クリエイターへの支援にも生かしていきたいです。

法律の仕事を通じて、挑戦する人が不安なく創造へ集中できる環境を整えること。そして、ボードゲームを手段に、子どもや教育の分野にも関わっていくこと。法律と創造の両方を行き来しながら、新しい支援の形を広げていきたいと考えています。

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