キャリアも家族も諦めない――夫婦に寄り添う起業支援で、新しい働き方を広げる
株式会社エス・プロモーション 代表取締役 山本 佳典氏
「キャリアも家族もどちらも諦めない」を掲げ、起業や副業を目指す人を支援する株式会社エス・プロモーション。起業ノウハウだけでなく、家族との関係や人生全体を見据えたサポートを特徴としています。約10年間で延べ3,000人近くと向き合ってきた代表の山本氏に、事業への想いや経営理念、今後の展望を伺いました。
家族も含めて支える起業支援
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社では、会社員として働きながら副業に挑戦したい方や、起業によるキャリアチェンジを目指す方を支援しています。独立だけを勧めるのではなく、自分らしい人生を選ぶ手段として、副業や起業を考えてもらうことが目的です。
支援してきた方の多くは、ご家族を持っています。だからこそ、仕事だけでなく、家族との関係も含めてサポートすることを大切にしています。
起業は人生を懸けた大きな決断と思われがちですが、本来はもっと自然なキャリアの選択肢であっていい。家族がいるから諦めるのではなく、安心して挑戦できる環境をつくることが私たちの役割ですね。
――他社にはない強みはどのような点でしょうか。
特徴の一つは、状況に応じて、ご夫婦双方をサポートしていることです。
どちらかが起業したいと考えていても、パートナーはある日突然、その話を聞くことになります。起業に関する情報量にも差があり、二人だけで話し合うと、将来への不安などから感情的になってしまうことも少なくありません。
そのような場合には、私たちが第三者として話し合いに入り、起業の仕組みやリスク、今後の可能性についてお伝えすることもあります。住宅購入や保険については夫婦で説明を聞く機会がありますが、働き方や起業について、夫婦で一緒に話を聞く場は意外と多くありません。
もちろん、すべてのご家庭に同じ支援を行うわけではありません。それぞれの状況やご希望に応じて、仕事と家庭の役割分担や、夫婦間のコミュニケーションの取り方まで含めて支援しています。
夫婦の理解が挑戦への一歩になる
――印象に残っている支援事例を教えてください。
ご主人が起業したいと伝えたことで、ご夫婦の関係が大きく揺らいだケースがあります。「そんな話は聞いていない」「それなら離婚する」という状況になり、ご主人から相談を受けました。
私が間に入り、お互いの考えを整理しながら説明すると、「夫から直接聞くより、山本さんから聞いて理解できた」と言っていただき、前向きに話し合えるようになったんです。このように、第三者が入ることで、感情だけでなく、事実や考え方を整理できる場になることがあります。
また、私自身も仕事と家庭を両立する姿を発信しています。新聞やテレビでは「イクメン社長」と名付けていただき、特集として取り上げていただいたこともあり、「家族を大切にしている人が支援してくれるなら安心」と理解を得られるケースもありますね。
「努力が報われる社会」を目指して
――経営理念について教えてください。
創業当初から掲げているのは、「頑張っている人の努力が報われる社会をつくる」という理念です。
新卒で三井住友銀行に入社し、営業成績でも評価をいただいていました。しかし、入社3年目に異動した部署で厳しい職場環境を経験します。
仕事を取り上げられ、長時間何も与えられない日々が続き、心身ともに大きなダメージを受けました。声が出なくなり、自分の存在価値まで見失いかけた時期もあります。
その経験から、努力してきた人が、その力を活かせる場所を自分で選べる社会が必要だと感じました。自分自身で人生を選択する力を持ってもらいたい。その想いが、起業支援を始めた原点ですね。
挑戦するなら、人と違う道を選ぶ
――経営判断で大切にしている価値観を教えてください。
「怖いほうを選ぶ」「人がやらないことをやる」という考え方です。
安心できる道と、難しくてもその先に大きな価値がある道があれば、私は後者を選びます。人と同じことは、すぐに当たり前になってしまうからです。
自分の内面から生まれた想いを貫き、まだ多くの人が進んでいない領域へ挑戦することを大切にしています。
――現在の組織づくりについて教えてください。
当社では業務委託を中心に組織をつくっています。
起業支援のノウハウを仕組み化し、現在は全国約60名のメンバーが、それぞれ一人ひとりに寄り添った支援を行っています。
起業は、全員が異なる状況にあります。一人の講師が大勢に同じ内容を伝えるだけでは、十分な支援はできません。だからこそ、個別に向き合える体制を重視しています。
「起業を応援する会社」が従来型の雇用だけにこだわるのも違うと感じ、多様な働き方を実践できる組織を目指しています。
――コミュニケーションで大切にしていることは何でしょうか。
オンラインで仕事をすることが多いため、特にテキストでのコミュニケーションを重視しています。
文章だけでは冷たい印象を与えることもありますよね。なので、相手の気持ちを考えた言葉遣いや伝え方を意識し、気持ちよく仕事ができる関係をつくりたいんです。
一緒に働く方に求めるのは「バランス感覚」です。相手からどう見えるか、どう感じられるかを考えながら行動できる方とは、仕事がしやすいと感じます。
教育を通して「当たり前」を変える
――今後の展望について教えてください。
今後、さらに力を入れたいのが教育分野です。
神戸大学大学院では、家族や働き方、ジェンダーについて研究しました。仕事と家庭の両立が当たり前になる社会を実現するには、ビジネスだけでなく教育も変える必要があると考えています。
これまで小学校から大学まで、延べ1万人ほどの学生にキャリア教育を行ってきました。「良い学校へ行き、大企業へ入ることだけが幸せではない」「これまでの常識が今後も通用するとは限らない」と伝えています。
これからは保護者や地域の方々にも考えを届け、親子で価値観をアップデートする機会を全国へ広げたいですね。
社会に根付いた当たり前を変えるのは簡単ではありません。教育や行政に関わる方々とも対話し、信頼を積み重ねながら、少しずつ社会を前へ進めていきたいと思っています。
――最後に、休日はどのように過ごしてリフレッシュされていますか。
子どもと過ごす時間が一番のリフレッシュです。
一緒にテニスをしたり、旅行へ出掛けたり、ゲームをしたりと、楽しめることは何でもやります。一人で旅行に出掛けたこともありますが、結局は家族に会いたくなって早く帰ってしまうんです。
家族は、仕事を頑張るための原動力でもあります。だからこそ、仕事か家庭のどちらかを諦めるのではなく、どちらも大切にできる社会をこれからも広げていきたいですね。