宇宙技術で農業課題に挑む――スペクトル解析が切り拓く持続可能な未来

株式会社ポーラスター・スペース 代表取締役 中村 隆洋氏

宇宙分野で培われた技術を農業へ応用し、リモートセンシングを活用した農作物の病気の早期発見に取り組む株式会社ポーラスター・スペース。同社は、スペクトル計測を活用し、人の目では判別できない植物の変化を捉える技術を強みに、海外の大規模農園を中心に事業を展開しています。本記事では代表取締役の中村隆洋氏に、事業の特徴や経営理念、組織づくり、そして今後の展望について伺いました。

宇宙技術を農業へ――スペクトル解析による新たな価値

――現在の事業内容や特徴について教えてください。

当社は、リモートセンシング技術を活用し、農作物の病気を早期に発見するサービスを提供しています。特徴は、植物のスペクトルを解析することで、人間の目では同じ緑色に見える植物でも、異なる波長で観測すると違いを捉えられる点です。この技術を活用し、病気か健康かを判別しています。

上空からスペクトルを解析して農作物の病気を診断する取り組みは、現時点ではほとんど例がありません。当社は、さまざまな農作物に対応できる技術やノウハウを蓄積しており、それが他社にはない強みになっています。 

――なぜ海外市場を中心に展開されているのでしょうか。

当社のサービスは、大規模農園を対象としたソリューションです。日本では農園の平均面積が小さく、サービスを事業として展開しにくいため、現在はマレーシアやインドネシアなど海外の大規模農園を中心に展開しています。現地には数十万ヘクタールに及ぶ農園もあり、日本とは比較にならないスケールで事業を展開できるためです。

また、東南アジアではオイルパームやバナナ、生ゴムなどで病害が大きな課題となっており、市場規模が大きく、病害対策へのニーズも高いことから、この領域に注力しています。

社会課題の解決を目指し、宇宙ビジネスへの夢を形に

――経営者になられたきっかけを教えてください。

父が会社を経営していたこともあり、経営は幼い頃から身近な存在でした。学生時代には宇宙分野でビジネスをしたいという志を抱き、その想いを胸に航空宇宙分野を学びました。その後は人工衛星の開発設計に携わり、人工衛星の小型化や打ち上げコストの低下によって宇宙ビジネスが現実味を帯びてきたことを機に、独立を決意しました。

――宇宙分野の技術を活用する中で、なぜ農業分野を選ばれたのでしょうか。また、理念についても教えてください。

リモートセンシングの技術はさまざまな分野へ応用できますが、社会課題の大きさや市場性、そして自社の強みを総合的に考えた結果、農業分野に注力することを決めました。

経営理念として大切にしているのは、「世のため、人のためになること」です。リモートセンシングによる課題解決を通じて、将来的には世界的な食料問題の解決に貢献できる技術へ育てていきたいと考えています。

人を受け止め、自分らしさを尊重する組織づくり

――組織運営で大切にしていることを教えてください。

社員とのコミュニケーションでは、まず相手を受け止めることを大切にしています。一人ひとりが異なる人生経験や価値観を持っているため、最初から頭ごなしに考えを押し付けるのではなく、まずは意見や姿勢を受け止め、その上で対話を重ねることを意識しています。

――どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。

自分をしっかり持っている人に魅力を感じます。宇宙やアグリテックの知識があることももちろん良いですが、それ以上に、自分の好きなことや得意なことに夢中になり、自信を持って取り組んでいる人と一緒に働きたいと考えています。どの分野であっても、自分らしく生きている人は魅力的です。

技術への挑戦を続け、世界の農業へ横展開を目指す

――今後の展望についてお聞かせください。

これまで長い年月をかけて研究を続けてきた技術が、ようやく小規模ながら実際の案件につながり始めました。今後は現在取り組んでいるオイルパームでの実績を基盤に、バナナや生ゴム、さらにはブラジルやカリフォルニアなど、問い合わせをいただいているさまざまな地域・作物へ展開を広げていきたいと考えています。

――現在、技術開発において特に力を入れている課題について教えてください。 

現在、最も大きな課題は病気判定の精度向上です。当初は、人が判定した病気・健康のデータを教師データとしてAIに学習させれば精度は向上すると考えていました。しかし研究を進める中で、人間による判定そのものに限界があることが分かりました。人の目では判別できない初期段階の病気を検出するためには、教師データ自体の精度を高める必要があります。この課題を乗り越えることが、今後の技術発展における重要なテーマです。

無心で泳ぐ時間が、心と体を整える

――休日のリフレッシュ方法を教えてください。

休日は水泳を楽しんでいます。一人で無心になって泳ぐ時間は、心身ともにリフレッシュできる大切な時間です。また、夏には家族と海へ出かけ、一日中遊ぶことも楽しみの一つです。体を動かしながら気持ちを整えることが、日々の仕事への活力にもつながっています。

「世のため、人のためになること」を軸に、これからもリモートセンシング技術による課題解決に取り組んでいきます。まずは現在の事業を着実に発展させながら、世界の食料問題の解決に貢献できる技術へと育てていきたいです。会社名にもなっている「ポーラスター(北極星)」のように、周囲が変化しても自らの軸をぶらすことなく、一つひとつの挑戦を積み重ねていきます。 

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