外国語人材のキャスティングで、1日からキャリアを築ける社会を目指す

株式会社トライフル 代表取締役 久野 華子氏

外国語対応人材のキャスティングを中心に事業を展開する久野氏。大型展示会や国際イベントに人材を手配し、国内の主要都市に加えて海外40カ国で対応しています。理念は「誰もが自分らしく働ける社会へ」。時間や場所に制約がある人も、語学力を活かし、単発の仕事からキャリアを築ける仕組みを提供する久野氏に、経営の道に進んだきっかけや経営判断で大切にしていること、リフレッシュについて伺いました。

語学力と現場対応力を組み合わせた独自のキャスティング

――現在の事業内容について教えてください。

当社は、イベントスタッフ、イベントコンパニオン、通訳、モデルなど、外国語に対応できる人材を大型展示会や国際イベントに手配している点が特徴です。売り上げの9割以上を、キャスティング事業が占めています。

本社は東京にあり、国内の主要都市だけでなく、海外40カ国にも対応。海外案件では日本から人材を連れて行かず、開催地に住む人材をキャスティングしています。

――通訳を専門とする企業とは、どのような点が異なりますか。

当社が提供しているのは、外国語を使ったコミュニケーションと現場業務です。一般的な通訳は、担当者が話した言葉を別の言語へ置き換えることが中心です。

例えば、外国語での受付やチラシ配布など、業務そのものをお任せいただきます。担当者が隣で指示を出さなくても、バイリンガル人材が能動的に来場者へ対応しているのが特徴です。

通訳を専門とする企業への依頼は1日5万円以上になる場合がありますが、当社は1日2万円から提供しています。語学とイベント業務に対応できることが、当社の強みです。

――理念には、どのような思いを込めていますか。

私は、週5日、1日8時間働かなければ、やりがいのある仕事に就きにくい面があると考えています。育児や介護などの事情により、フルタイムでは働けなくても、能力を持つ人はたくさんいます。

当社では、外国語を使う仕事を初心者向けのものから1日単位で提供しています。生活や自分の時間を大切にしながら、単発の仕事でもスキルアップし、キャリアを築ける環境をつくりたいと考えています。

世界一周で気づいた、能力を活かす機会の大切さ

――経営の道へ進んだきっかけを教えてください。

私は以前、通販企業のニッセンで3年間、Webマーケターとして働いていました。女性が多く、育児休業や産前産後休業などの制度も整った企業でした。

しかし、働くなかで、仕事とプライベートのどちらかを選ばなければならないように感じたのです。そこで退職を決めたのですが、お世話になった人から「逃げているのではないか」と言われたことがあります。それが、とても強く心に残りました。

そこで、これまで理由をつけて挑戦しなかったことのなかから、もっとも難しいことに取り組もうと考え、小さい頃から望んでいた世界一周へ出ました。

――世界一周の経験は、現在の事業へどうつながりましたか。

私は、バックパッカーとして約50カ国を巡り、発展途上国と呼ばれる地域にも滞在。そのなかで、能力がないのではなく、機会がないために力を発揮できない人がたくさんいることを知りました。

能力や人柄に優れていても、良い仕事に就く機会が限られている人がいます。生まれた環境によって挑戦できる範囲が異なる現実に、強い衝撃を受けました。

語学は年齢に関係なく学ぶことができ、努力を重ねるほど能力を高めやすい分野です。私自身がイベント業界で派遣される側として働いた経験もあり、外国語とイベント人材を結びつける事業を考えました。

――経営判断で大切にしていることは何でしょうか。

私が大切にしているのは、基本的には感情を入れず、事実と論理で考えることです。自分の好き嫌いや印象を判断に混ぜると公平さが失われやすいため、客観的な事実を積み重ね、誰に対しても説明できる判断を心がけています。

ただ、損得や論理を超えても譲らないことがあります。それは、自分のなかで「正しくあるべきだ」と強く感じることです。普段は論理的に考えながら、本当に大切な価値観については妥協しません。

本音と事実を共有するフラットなリモート組織

――現在の組織体制について教えてください。

当社は11〜12人ほどのチームで、全員が女性です。20代後半から30代後半が中心で、全員がリモートで働いています。フランスなど海外から勤務するメンバーもいます。

社内のコミュニケーションで大切にしていることは、本音をもとに話すことです。相手の顔色や立場を気にし過ぎると、本質的な仕事が難しくなるため、率直な意見を求めています。

意見を伝えるときは、感情だけではなく、事実をもとに話すことも重視しています。立場の面でも感情の面でも、できる限りフラットな状態で議論することが私の心がけていることです。

スキルを積み上げられる単発仕事を、より多くの業種へ

――今後、どのようなことに挑戦していきたいですか。

当社は「NEKONOTE(ネコノテ) 」という人材管理システムを開発しています。働く側はアプリで仕事を探し、1日単位で仕事を請け負えるのが特徴です。企業側も、必要な日に人材を依頼できる仕組みです。

当社ではすでに利用しており、今は精度を高めながら、ほかの業種へ展開するための開発を進めています。企業の負担となる人材管理をテクノロジーで解決し、語学以外の分野にも広げることが目的です。

――ほかの単発求人サービスとは、どのような点が異なりますか。

当社が目指しているのは、経験を重ねながらスキルを身につけられる単発仕事です。語学の仕事では、初心者は日給1万5,000円程度から始まり、高いスキルを持つ人は日給3万〜5万円になることもあります。

身につけたスキルと報酬の関係がわかれば、さらに能力を高めようという意欲につながるはずです。企業が安心して人材を依頼でき、単発の仕事からキャリアを積める仕組みを目指しています。

運動と大切な人との時間が、仕事へ向き合う力になる

――休日はどのようにリフレッシュしていますか。

私は、運動をすることが多いです。運動している間は目の前のことに集中するため、仕事について考える余裕がなくなります。意識を仕事から離し、気持ちを切り替えられる時間です。

家族やパートナー、友人など、自分を支えてくれる人との時間も大切にしています。最近は77歳の母と韓国へ旅行し、1年後にはオーストリアのウィーンへ一緒に行く計画も立てています。

――仕事とプライベートをどのように捉えていますか。

私は、仕事とプライベートを完全に分けているわけではありません。プライベートの時間に仕事の連絡が来れば、必要な対応はします。それも経営者としての仕事だと考えているからです。

一方で、仕事だけを続けていると、際限なく働いてしまいます。そのため、経営者同士の飲み会にはあまり参加せず、意識的に仕事ではない時間をつくっています。

仕事で成果を出すことだけでなく、自分を支えてくれる人との関係や、自分自身の生活も大切です。これからも仕事とプライベートの両方を守りながら、誰もが自分らしく働き、スキルを積み重ねられる選択肢を広げていきたいと考えています。

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