世界と日本の“架け橋”をつくるホテルへ。社員を大切にしながら挑む新たなステージ
株式会社王宮 専務取締役 橋本明元氏
大阪を中心にインバウンド特化型ホテルを展開する株式会社王宮。宿泊に留まらず、日本文化を体験できる“思い出づくりの場”として、多くの海外ゲストから支持を集めている。三代目として事業を継承した橋本氏は、「日本と世界の架け橋になる」という理念を掲げ、社員に徹底的に向き合いながら経営を進めてきた。本稿では、事業の特徴から未来の構想、そして経営者としての価値観まで話を伺った。
目次
日本文化を届ける“体験型ホテル”という挑戦
――事業の特徴についてお聞かせください。
当社は大阪で複数のホテルを運営していますが、単に客室を販売するホテルではなく、「日本と世界の架け橋になる」という使命を持って経営しています。海外のお客様に日本文化やおもてなしを体験いただき、日本を好きになってもらうきっかけになりたいと考えています。
ホテルでは毎日イベントを開催しており、着付け体験やたこ焼きづくり、寿司づくりなど、日本文化を手軽に体験いただける場を用意しています。専門的な講師を呼ぶのではなく、社員が中心となって運営することで、お客様との距離が自然と近くなることを大切にしています。
――インバウンド特化という戦略を選ばれた理由は何でしょう。
中小企業である私たちが選ばれるためには、何かに特化する必要がありました。インバウンド需要が本格化する前から海外のお客様に徹底的に向き合うホテルは少なく、そこに可能性を感じたのがきっかけです。現在ではフロントスタッフの66%が3か国語以上を話せるなど、強みとして育っています。
三代目としての決意と、海外修行で得た視点
――経営者となるまでの経緯について教えてください。
私はもともと家業を継ぐつもりはありませんでした。しかし社会人2年目のとき、祖父が苦労して築いた会社を改めて見て、「この会社をなくしてはいけない」と強く感じたことが転機でした。その後、能力不足を痛感し、一度会社を離れて中国で5年間働きました。海外ネットワークを持ち、語学力を身につけることが、将来インバウンドの時代が来たときに必ず役に立つと考えたからです。
――経営をされる中で印象に残っている出来事はありますか。
やはりコロナ禍です。海外どころか国内のお客様も来られず、ホテル業としては壊滅的な状況でした。しかし、アルバイトも含めて誰一人として雇用を切らず、給与も支払い続けました。従業員と一緒に弁当販売や掃除、イベント企画など、できることをやり続けた結果、会社として一体感が生まれ、コロナ後は一気に業績が回復しました。あの経験は大きな財産です。
社員の主体性を引き出す仕組みと、文化としての「誠実」
――多くの従業員をまとめる上で意識されていることは何でしょうか。
社員には20万円以内の決裁権を全員に持ってもらっています。お客様が喜ぶこと、もしくは仕事がしやすくなることであれば、何度使っても構いません。例えばお客様がパスポートを忘れたら空港までタクシーで届けたり、必要な備品を自ら判断して購入したりと、みんな主体的に動いてくれています。
また、社内研修や合宿、生和塾など外部研修への参加も積極的に行っています。組織として育つために、人材育成は最も重視しているテーマですね。
――経営者として大切にしている価値観はありますか。
「誠実であるかどうか」です。目先の損得ではなく、人として正しいかどうかで判断することを常に意識しています。ホテル業界は離職率が高いと言われますが、だからこそ社員を大切にし、正社員として迎え入れ、物心両面の幸福を追求する会社でありたいと思っています。
福利厚生の一環として、社員とその家族の医療費(上限あり)を会社が負担したり、別荘を福利厚生として開放したりする取り組みも行っています。言葉だけでなく行動で示すことを大切にしています。
ホテルを“思い出づくりのテーマパーク”へ
――今後の展望について教えてください。
今のイベントやサービスをさらに発展させ、「泊まる」という枠を超えて“思い出づくりのテーマパーク”のようなホテルをつくりたいと考えています。スタッフとお客様だけでなく、お客様同士が自然と仲良くなるような仕掛けも増やしていきます。
また、新規ホテルの開業にも挑戦しており、3年以内に5軒目の開業を実現したいです。さらに、福利厚生として所有する別荘を運用したい経営者向けに、稼働していない時間を当社が代わりに販売して収益の70%を還元する民泊事業もスタートしています。ホテル以外の形でも“日本と世界の架け橋”をつくっていきたいですね。
仕事も人生も楽しむために
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
テニスやランニング、釣りなど体を動かすことが好きで、休みの日は外に出ることが多いです。社員と飲みに行ったり、サウナに行ったりする時間も大切にしています。仕事そのものが嫌いではないので、趣味と仕事の境目があまりないのかもしれません。
挑戦する経営者へ伝えたいこと
――これから経営に挑む方へメッセージをお願いします。
この業界に興味のある方には、ぜひ思い切って起業し、一緒に盛り上げて行って欲しいですね。