住宅ローン控除を最大化:合同会社住まいコンパスが挑む「知られていない優遇制度」の普及
合同会社住まいコンパス 代表取締役 寺澤 太造氏
中古マンションの購入は、新築よりも手軽な選択肢として人気が高まっています。しかし、複雑な税制優遇制度、特に「住宅ローン控除」については、専門家ですら全容を把握しきれていないのが現状です。IT業界で活躍する寺澤太造氏が、自身のマイホーム購入経験から得た気づきをもとに立ち上げたのが、合同会社住まいコンパスです。不動産業界の構造的な課題に着目し、独自のビジネスモデルで挑戦を始めた寺澤氏に、画期的なサービスの内容と、これからの展望について詳しく伺いました。
住宅ローン控除を最大化する「隙間」のビジネス
――合同会社住まいコンパス様の事業内容と、このビジネスの希少性について教えてください。
私どもの事業は、中古マンション購入者向けの住宅ローン控除額を増やすサポートです。既存住宅の控除上限額(2,000万円)を、「住宅省エネルギー性能証明書」を取得することで3,000万円に引き上げ、最大140万円の減税メリットを生み出します。
減税メリットを得るためには、「断熱性能」と「一次エネルギー消費量」の2種類の等級で基準を満たす必要があります。前者の「断熱性能」については、新築時に発行される住宅性能評価書の中で、「省エネルギー対策等級」という名前で確認しているマンションも多いです。一方で、後者の「一次エネルギー消費量」については多くの中古マンションが新築時に認定を取得していません。この基準はエアコンや給湯器など住宅設備の性能に大きく左右されるため、多くのマンションでは「一次エネルギー消費量」の基準を後からクリアできるのですが、認定の煩雑さから不動産業界ではこの制度がほとんど知られていません。
住宅省エネルギー性能証明書の発行は条件を満たした建築士であれば可能ですが、中古マンション独特の特例や計算式などが多く、一室単位での認定は計算や手続きが煩雑であるため、ほとんどの建築士はこの業務を行っていません。私どもは書類収集や説明を一元化し、建築士の方々には認定業務のみをお願いすることで、お客様、建築士、仲介業者様のすべてにメリットが生まれるウィンウィンの仕組みを構築できています。
また近年では、マンションの購入にあたって親族から住宅取得の資金の贈与を受ける方も増えてきています。住まいコンパスが発行する住宅省エネルギー性能証明書は、住宅取得資金の贈与にかかる贈与税非課税枠の拡大にも利用可能です。贈与税非課税枠を500万円から1,000万円に引き上げることができ、確定申告を行うことで数十万円の減税メリットを得ることができます。
また、省エネ基準適合と同様に、長期優良住宅やZEH水準省エネ住宅など、住宅ローン控除の拡大が可能となる様々な基準に対し、調査・認定及び証明書の発行業務を行っております。
制度の詳細については住まいコンパスのWebサイト(※リンク sumai-compass.com)をご確認ください。
ITキャリアからの転身と、お客様の「困った」への貢献
――なぜこの分野で創業されたのでしょうか。
自宅を購入した際、自分で制度を調べて初めて「中古でも省エネ認定が取れる」ことを知りました。しかし、実際に聞いても誰も詳しく説明できない。建築会社のベテランの方でも国税庁に確認しないと答えられないほど複雑で、これは多くの人が恩恵を受けられていないのでは、と感じたことがきっかけです。
その後知人の仲介業者などに確認しましたが、やはり不動産のプロの方も含めて制度を正しく把握している人がおらず、減税メリットを見逃している状態でした。そこで、「誰もやらないなら自分でやるしかない」と思い立ち、25年春にサービスを開始しました。
私は本業でITを活用した業務改善コンサルティングを行っており、建築士ではありません。だからこそ建築士の方、税務・法律の専門家と連携し、正確で再現性あるフローを整え、お客様にわかりやすく伝える役割に徹しています。
――創業から今までで印象的だった出来事は?
「自分で申請したが否認されてしまった」というお客様を、仲介会社経由で紹介されたことです。期限ぎりぎりで焦っておられましたが、状況を分析し、必要な資料を揃えることで無事に認定を取得できました。
“どこに聞いてもわからなかった”“本当に助かった”と心から感謝いただき、この事業の社会的意義を強く感じました。同時に、中古住宅を扱う不動産業界の情報不足やリスク回避姿勢も目の当たりにし、当社の役割は大きいと改めて実感しました。
また、仲介業者様からも「当社の全顧客に紹介したい」「自社サービスに組み込む形でお客様に提供したい」などのお言葉を頂戴しており、複数の業者様と業務提携も行っております。
組織運営の考え方と関係性
――組織づくりやパートナーとの関係で大切にしていることは?
当社は私と建築士の方々との協業で成り立っています。重要視しているのは「お互いが気持ちよく仕事できる仕組みをつくる」ことです。
中古マンションの省エネ証明は、資料収集も現地確認も物件ごとに異なり、非常に手間がかかります。だからこそ、こちらで資料や手順を徹底して整理し、建築士の方々には“専門家としての判断”と“認定業務”だけに集中していただける環境づくりを心がけています。双方が余計なストレスなく連携できることで、結果的にお客様への品質とスピードを最大化できます。
また、仲介業者様との関係づくりにおいても、「売買を邪魔しない」「追加の負担を増やさない」という姿勢を徹底しています。不動産取引の中で必要なタイミングで私たちがスムーズに介入します。結果として、お客様・仲介業者様・建築士・住まいコンパスのいずれにもメリットがある状態を構築することができます。
サービスは私一人で作るものではなく、多くの専門家やパートナーの力を借りて初めて成立します。だからこそ、感謝と敬意をもって関係性を育て、共に成長していけるような環境づくりを大切にしています。それが最終的に、お客様の安心と信頼につながると考えています。
また、お客様とのコミュニケーションは住まいコンパスが窓口になり、制度の説明や資料案内を丁寧に行います。建築と税の境界にあるグレーゾーンは特に誤解を招きやすいので、正確性と安心感を重視しています。
未来への展望
――今後の事業展開と、現在の課題についてお聞かせください。
3年後には今の10倍の規模を目指しています。制度が知られていけば十分に達成可能と考えています。今後は組織の拡大を急ぎ、一人でも多くの方にこの制度のことを知ってもらえるようにしていきたいと考えています。
挑戦する経営者へ伝えたいこと
――これから経営に挑む方へメッセージをお願いします。
ビジネスは、最初の一歩を踏み出す瞬間がいちばん不安で、いちばんワクワクするものです。完璧な準備よりも「やりながら整える」姿勢が、ビジネスの成功には欠かせません。小さく始めて、早く試し、反応を見て方向を微調整する。たったそれだけで、想像以上のスピードで前進できます。
世の中には大小さまざまな課題が溢れていますが、スモールビジネスにはその課題を“自分の視点”で掘り下げ、素早く形にできる強みがあります。大企業のような大きな資金や仕組みがなくても、身軽さと柔軟さがあるからこそ、ニッチな悩みに丁寧に寄り添い、本当に求められる価値を届けることができます。まずは目の前の一人を喜ばせる──その積み重ねが自信となり、次の一歩を後押しし、やがて大きな成果へとつながっていきます。小さな挑戦こそ、大きな未来のはじまりです。ぜひ「軽率に」一歩踏み出してみてください。