やろうと思ってやれば何でもできる――偶然から始まった少年合唱団の振興への道
一般社団法人日本少年合唱協会 代表理事 多田 文也 氏
日本国内外の少年合唱団の振興を目的として活動する団体を立ち上げた多田氏は、海外の著名な合唱団を日本に招聘しコンサートの場を作るなど、収益化が難しい芸術・文化の分野で孤軍奮闘されています。宝くじ当選という意外なきっかけからこの道に進み、病気を乗り越えて活動を続ける同氏に、その挑戦の軌跡を追いました。
少年合唱団の振興を目的として
――御社の事業内容を教えてください。
日本少年合唱協会は、日本国内や世界の全ての少年合唱会の振興を目的として活動しています。具体的には海外から少年合唱団を招聘しコンサートを開催したり、機会があれば国内の少年合唱団との共演の場を設けたりといった活動をしています。当協会自身が少年合唱団を保有しているわけではなく、各地で活動する少年合唱団を統括し、業界を全体として広げていくことが主なミッションです。
――事業の収益源はどのようなものでしょうか。
当協会は一般社団法人のため営利目的の要素は小さいですが、活動を続けるための経費が必要です。現在の主な収入源は、ウェブで運営しているファンクラブの会費や、海外から合唱団を呼んだ際のチケット収入、そしてYouTubeチャンネルからの広告収入です。これらを足しにして何とか運営しています。特にファンクラブでは、イギリスの「カーディナル・ヴォーン・スコラ・カントラム」や「オーストラリア国立少年合唱団」など、招聘した団体の独占的な映像やインタビューを配信しており、熱心なファンの方々に支持されています。
どんな話でも断らずに行動し続けてきた
――創業の経緯を教えてください。
私は元々、少年合唱団の一ファンでした。以前はネット関連のライターをしており、コンサート興行とは全く無縁の生活でした。転機は、宝くじが当たったことです。200万ほどの1等に当選したちょうどその時、知人からイギリスの少年合唱団を呼べるかもしれないよという話をもらい、「じゃあ呼びましょうか」と当選金を全てつぎ込んで招聘したのが始まりです。
――その後はどのような流れがありましたか。
その後はオーストラリアの合唱団からメールが来たり、ウィーン少年合唱団の本の執筆を依頼されたり、パリやリトアニアから招聘の打診が来たりと、次々に話が舞い込んできました。基本的にどんな不利な話でも断らずに行動した結果、今の活動につながり、今では日本で最も少年合唱団の招聘に関わる第一人者のような立場になりました。
オンラインストアの収益を業界へ還元
――活動を続ける上での課題はありますか。
今年8月に階段からの転落事故でくも膜下出血を起こし、以前のように動くことができなくなりました。また活動上の課題としては、資金面、特にスポンサー獲得の難しさがあります。少年合唱というジャンル自体が、ヨーロッパでの移民問題などセンシティブな要因もあって消えていく分野ではないかと危惧しており、現状では国や文化庁からの支援も得られていません。
――今後の展望をお聞かせください。
少年合唱団の音楽CD、グッズ、楽譜、オリジナルアパレルなどを取り扱うオンラインストア「ボーイズクワイアストア」を立ち上げたのですが、まずこれを軌道に乗せたいです。また、海外の合唱団はどこも資金難であり、これらで得た収益の分配、あるいは助成金や基金などの仕組みによって、なんとかこの少年合唱団の文化を継続させていきたいと考えています。
やろうと思ってやれば何でもできる
――これから起業しようとする方へメッセージをお願いします。
やろうと思ってやれば何でもできると伝えたいです。宝くじが当たり、遊んで終わることもできた中で、私は挑戦を選びました。挑戦しなければ今の私はなかったでしょう。世界中から声がかかるようになったのは私自身が挑戦し、行動し続けたからです。
――失敗を恐れる方も多いと思います。
成功は100%約束されていませんし、私自身も失敗したことはあります。ですが、失敗を恐れないでまず行動しなければ、決して結果は出ないということを皆さんに伝えたいです。少年合唱団のコンサート興行は親御さんや学校の協力など非常に複雑で苦労も多いですが、その苦労を含めて全てがいい思い出です。