技術革新に適応する“性能発注”の推進者として

澤田雅之技術士事務所 代表 澤田雅之氏

警察庁で長年にわたり情報通信分野のエンジニアリングを担当し、退職後に技術士として独立した澤田雅之代表。日本の発注制度に長年携わってきた経験から、現在は「性能発注方式」の普及を軸に、官公庁・企業の技術支援に取り組んでいます。これまでのキャリア、組織運営への考え、そして今後の展望についてうかがいました。

日本に根付く“仕様発注”の限界と、事務所の理念

――現在の事業内容と、理念やビジョンを教えてください。

警察庁で情報通信分野のエンジニアとして35年間勤務し、退職したのは12年前ですが、退職後に国家資格の技術士を取得し、退職後2年経って技術士事務所を開業しています。現在の柱は「性能発注方式」の普及支援です。

日本では長らく「仕様発注」が主流で、発注側が細部まで仕様を示し、その通りに作らせる手法が続いてきました。しかし技術革新が加速する現代では、この方式では柔軟に対応できず、トラブルや責任問題が発生しやすいのが実情です。

一方、欧米をはじめ多くの国で採用されているのは「性能発注」。何を作りたいのか、その機能・性能を示し、設計や具体化は受注側の技術力に委ねる方式です。私はこの考え方こそこれからの日本に必要な発注モデルだと考えています。

“自分にしかできないことを続けたい” その思いで独立

――キャリアの中で、特に印象的だった出来事や独立のきっかけは何でしょうか。

発注の元締めを担当した初年度、仕様発注によるトラブルが続発しました。発注者が責任を負う構造そのものに疑問を感じたことが、現在の活動の原点になっています。

また、退職後の選択肢として「天下り」のような進路を選ぶことも可能でしたが、私には警察在任中に自分にしかできない仕事がありました。その“自分にしかできない仕事を続けたい”という強い思いがありました。

技術士資格を取得して独立したのは、自分の専門性を社会に還元し続けるためでした。

資格取得までの2年間は、博士号を持つOBのコンサル会社に籍を置き、コンサルとして経験を積むことで、開業後の基礎が築けたと感じています。

少人数だからこそのコミュニケーションと信頼

――社員や関係者とのコミュニケーションで意識していることはありますか。

私は個人事業主です。そのため、社員はいませんが、技術士協同組合に加盟しています。個人事業主の場合、なかなか性能発注の分野で意見を述べることが難しいのですが、昨年からほかの仲間たちと結束し、5人の組合理事の連盟で業界を刷新するためにさまざまな活動をしています。

また、日本技術士会にも加盟しており、そこを通して講演などの活動も行っています。

性能発注の定着へ。日本の技術力を再び世界水準に

――今後挑戦していきたいこと、事務所としての展望を教えてください。

4、5年前は、性能発注に関して理解してもらえませんでしたが、だいぶ道が開けてきました。今後も組織としてさまざまな分野の方と協力して、セミナーや講演会などのメディア露出もしつつ、日本で性能発注が定着していくよう尽力したいと思っています。

日本の官公庁・企業に性能発注方式を広め、技術革新に強い社会をつくることが目標です。大阪・関西万博の海外パビリオン建設が仕様発注では成立しなかったように、日本の発注制度は世界標準から大きく遅れているのが現状です。

性能発注のノウハウを持っているのは、私しかいないという自負があります。性能発注が普及すれば、国内企業の技術力向上にも資するはずです。この考え方をより多くの現場に届け、社会が抱える構造的な課題を改善し、日本を世界と並ぶ水準にしていきたいと考えています。

長く仕事を続けるためのリフレッシュ方法

――お仕事以外でのリフレッシュ方法があれば教えてください。

実は家内はずっとソプラノ歌手をしていまして。彼女の活動を支援するために、YouTube動画を作ったり、またFacebookに投稿したりなどのSNS活動をしています。

それが私の趣味です。

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