「仕事ってもっと楽しいはずだ」を体現。AI時代に問う企業の価値とブランド戦略
株式会社Dot. 代表取締役 安東剛志氏
企業の「あり方」を言語化し、発信の型をつくる――。
株式会社Dot.は、企業の想いや価値観を「ブランド戦略」として言語化し、SNS・Web・広告などの発信を一つの軸にまとめる会社だ。
福岡の親会社から独立する形で2020年に設立された同社は、この5年で多くの経営者に寄り添いながら“企業の核(コア)”を整えてきた。
代表の安東剛志氏はその理由をこう語る。
「ブランドとは会社の魂であり、事業の翻訳装置です。企業の核が定まれば、発信も、人も、組織も、迷わなくなるんです。」
Dot.の歩みと思想、そしてこれからの未来を聞いた。
目次
ブランドの核をつくり、共に成果へ向かうパートナーに
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
Dot.が最も大事にしているのは「ブランド戦略」を企業と一緒に作り上げることです。ブランドメッセージやビジュアルを言語化・体系化することで、SNS・Web・広告・動画といった各施策に一貫性が生まれますし、プロモーションやHR領域、商品サービス開発にも影響が及びます。
その核が定まると、企業が「何をどう伝えるべきか」に迷わなくなるんです。結果として、企業文化の醸成やファンづくりにもつながり、長期的な成長の土台になるわけです。
社内体制は、私が主導する“戦略パート”と、全国60名のクリエイターと連携する“クリエイティブパート”に分かれています。
戦略パートでは、ブランド戦略を軸にしながら、マーケティング、HR領域、DX支援などもアライアンスパートナーと協働して設計します。
その戦略をデザイナー、カメラマン、イラストレーターなど多様な専門家とチームを組み、アウトプットまで一貫した文脈で形にしていきます。
この“戦略から制作までをワンストップで編成する体制”が、規模の大きなプロジェクトにも柔軟に対応できる理由です。
テレビ制作から独立へ。変化の時代が背中を押した
――経営者になられた経緯を教えてください。
キャリアのスタートはテレビ番組制作です。ドキュメンタリー番組を主に担当していたのですが、自分で企画構成を作り、膨大な情報を編集し、ストーリーを組み上げ、視聴者に届けることをやっていました。
ただ、3.11の取材を経て、テレビの力を痛感する一方で、メディアとしては「本質的な発信が制限される構造」に悩むようにもなったのです。
転身を決めたのは、2013年頃。ちょうどスマホで動画が見られ始めた時期でした。企業のWEB動画広告に可能性を感じ、地元・福岡の制作会社に転職しました。そこでデザインやプロモーションを学び、東京支社の立ち上げを任されることになります。本格的に東京で活動をし始めたのは2016年頃のことでした。
大きな転機はコロナです。売り上げやPVといった数字だけを目標とした従来のやり方だけでは限界が見え、より自由に、スピード感を持って動ける体制を作りたいと思うようになりました。何より、「表層の制作ではなく、企業の核そのものをつくる役割が必要だ」と感じたことが大きなターニングポイントだったと思います。
そこで親会社と話し合い、東京支社をスピンアウトする形でDot.を設立しました。
経営をしてみて痛感したのは「自分ひとりでは何もできない」ということです。60名のクリエイティブパートナー、アライアンス企業の存在があるからこそ、大きな価値を提供できています。
少数精鋭で“目が届く”組織に。人との関係こそ最も重要
――組織運営で意識していることを教えてください。
「人と密に向き合える規模」であることにこだわっています。
趣味がこうじて100人規模のカメラコミュニティを運営した経験がありますが、人数が増えるほど関係性のケアが行き届かず、“温度の一致”を保つことの難しさを痛感しました。
だからこそDot.は、常に10人ほどの“目が届くチーム”を前提にしながら、プロジェクトごとに全国の専門家とチームを組む“編成型の体制”をとっています。
ブランド戦略を核に、HR・マーケティング・DX支援など多様な領域へ展開できるのも、この柔軟なチーム設計があるから。
企業の課題を、一つの文脈でつなぎながら解決へ導くことを大切にしています。
そして何より、企業の“核”を扱う仕事では、技術以上に相手の感情や温度を読み取りながら進める対話が欠かせません。
AIが進化しても、プロジェクトマネジメントや場の空気を整え、本質を引き出すコミュニケーションは、まだまだ人間にしかできない部分だと感じています。
3年後は“核づくりを再現できる人材”を増やし、価値提供を拡張したい
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
短期的には、企業の核を読み取り、構造化し、発信へ落とし込める人材を3名ほど迎えたいと考えています。
現在は私が戦略から窓口までを一貫して担っていますが、この形では支援できる企業の数にも、届けられる価値の深さにも限界があります。
ブランド戦略の設計はテンプレートでは動きません。
企業の本質を掘り起こし、順番と文脈を編み直し、未来へ向けた“芯”をつくる――この思考プロセスを再現できる仲間が必要です。
Dot.の思想に共感し、この編集プロセスを共に磨いていける人と仕事を広げていきたいと思っています。
売上はあくまで結果にすぎませんが、3年後には3〜5倍規模の成長ができると良いですね。 その先には、自社プロダクトの開発にも挑戦するつもりです。
“企業を支援する側”だけでなく、自ら価値を生み出す側に立つことで、Dot.としてのブランドの核もより鮮明になると考えています。
スポーツから写真へ。リフレッシュは“創作の時間”
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
去年までは社会人バスケをやっていましたが、アキレス腱断裂をきっかけに休止し、今はカメラが唯一続いている趣味です。散歩しながらスナップを撮る時間が、何よりのリフレッシュになっています。
私にとって写真は“思考を整える行為”です。街を歩きながらシャッターを切っていると、世界の見え方が澄んでいき、視点が整う。視点が整うと、仕事の言語化も自然と研ぎ澄まされていきます。だからこそ、写真は「技術」ではなく「視点」を写すものだと思っています。
その一方で、仕事での撮影は自分では絶対に行いません。プロカメラマンの技術と経験に敬意があるので、依頼をいただいた際は必ず専門家をご紹介しています。
私にとって写真は、“自分の核を整える行為”であり、ブランドづくりの思考とも地続きの営みなんです。
挑戦する経営者へ伝えたいこと
――これから経営に挑む方へメッセージをお願いします。
仕事はもっと楽しいはずだ――
まず、この感覚を取り戻してほしいと思っています。
そのためには、「自社の核を言語化すること」が欠かせません。
ブランド戦略は大企業だけのものではなく、むしろ中小企業にこそ必要です。言語化しないままでは、外からの“勝手なイメージ”に会社の価値が左右されてしまうからです。
ブランド戦略の本質は「言葉をつくること」ではなく「言葉が生まれるまでの対話」そのものにあると私は考えています。
経営者自身が“本当は何を大事にしていたのか”を再発見し、それが組織の軸として共有されていく。その変化は、プロセスを経たからこそ起きるものです。
AIが進化する今だからこそ、何をどう言葉にして届けるか―その解像度が最大の差別化になります。
自社をどうパッケージし、どんな未来へ進むのか。その“軸”をつくることこそ、ブランド戦略の役割であり、Dot.が最も大切にしている部分です。
Dot.の理念は「仕事ってもっと楽しいはずだ」。
働くことは、本来もっと自由で、もっと創造的で、もっと希望のある営みのはずです。
そして私は、この取り組みを通じて、日本のビジネスそのものをもっと元気にしたい と本気で思っています。
一社の核が整えば、その会社で働く人が変わり、
地域が変わり、やがて産業全体が変わっていく。
その連鎖の起点を、Dot.がつくれたらうれしい限りです。
企業と私たちが“掛け算”で成果を生み、手応えを共有し、未来がひらけていくこと。
その景色をもっとたくさん見たい。
Dot.はこれからも、企業の“まだ言葉になっていない核”をすくいあげ、その未来に寄り添いながら伴走していきたいと思います。その積み重ねが、日本のビジネスをまた前へ進める力になる。
Dot.は、そんな未来の一部でありたいと思っています。