データの力で命を守る――Murakumoが挑む「リアルタイム」の先にある未来
株式会社Murakumo 代表取締役 新居 誠氏
株式会社Murakumoは、リアルタイム性と整合性を追求したデータベース技術を軸に、医療・介護領域でのソリューション開発を進める企業です。2000年の創業以来、既存技術では実現が難しい分野に挑み続け、AI時代に即したデータ基盤のあり方を追求してきました。現在は高齢化社会における課題に真正面から向き合い、“自分の身を自分で守る”ための仕組みづくりに力を注いでいます。本記事では、代表の新居誠氏にこれまでの歩みと現在の開発、未来への展望について伺いました。
目次
変わらない信念でつくり続けた独自データベース
――まず、御社の事業内容について教えてください。
当社は創業当時から「リアルタイム整合性を確保したデータベース」を自社開発してきました。もともとIBMやOracleといった大手メーカーの技術が主流の中で、「同じレベルのものを自分たちで作る」という発想からスタートしています。
受注のため開発を止めることもなく、手元に資金が少なくても地道に研究開発を進めてきました。銀行からは「怖くて貸せない」と言われるほど無茶な挑戦でしたが、リアルタイムで正確なデータ処理を実現することは、創業以来ずっと変わらないテーマです。
現在はその技術を応用し、医療・介護領域での見守りシステム「いぶき」の開発に力を入れています。毎日の睡眠データや朝の体調データを取り続けることで、AIが病気の兆候を予測する仕組みです。「自分の身は自分で守るために、正しいデータが必要である」、この発想が当社の基盤になっています。
経営者としての視点は「現場」から生まれた
――経営者になられた経緯を教えてください。
私はもともと金融機関に勤めていました。その後、コンピュータの世界に入ったときに「多くの人が触れにくく、しかし最も重要な領域はどこか」と考え、データベースに行き着きました。当時、日本で本格的にデータベースを手掛ける会社はほとんど残っておらず、「それなら自分たちでつくろう」と仲間とともに2000年から開発を始めたのが会社の原点です。
開発現場には長く携わってきましたので、技術者が抱えるこだわりや苦労、営業側の負担や悩みも、どれも実感として理解しています。その経験があるからこそ、「何を優先し、どこで踏ん張るべきか」を判断する際に迷いが少なく、現場と経営の両方を見ながら舵を取れていると感じています。
医療・介護領域への挑戦――リアルタイムデータで命を守る
――現在注力している「いぶき」について詳しく教えてください。
きっかけはコロナ禍でした。ホテル療養が急増し、医師が患者の様子を直接見られない状況が続きました。状態が急変しても気づくことができず、亡くなる方も少なくありませんでした。その際、研究者や医師から「何とかできないか」と相談いただき、リアルタイムの体調データを取得して解析する仕組みを作りました。
その後、急変で父を亡くした経験も重なり、「家族を守るにはデータの力が必要だ」と強く感じました。
血流の変化から推測して、近い将来の危険な兆候をAIが示す。1分単位でデータを取ることを理想として、現在も改良を続けています。高齢化が進む今、「家に1人でいても安心できる」環境をデータで支えたい。その思いが開発の原動力です。
組織と向き合う――「技術だけでは届かないもの」をつかむために
――組織運営で意識していることはありますか。
社員は12名で、ほぼ全員が専門性の高いエンジニアです。私は営業や対外的な調整を担い、技術者が開発に集中できる環境を整えています。
当社には“積極的に外へ売り込む文化”は多くありません。むしろ、困っている企業から相談を受けて動くことのほうが多い会社でした。そのため、「どう広げていくか」「どのように社会へ届けるか」という体制づくりは今まさに向き合っている課題です。
強みを生かしながら広げていく体制を整えることが、今後の大きなテーマだと感じています。
未来に描くのは“誰かの命をつなぐ仕組み”
――今後挑戦していきたいことを教えてください。
「いぶき」をはじめとする見守りの仕組みを、社会のスタンダードにしていきたいと思っています。高齢化が進む今、自宅で過ごす高齢者が急変しても気づかれずに亡くなるケースは後を絶ちません。
そんな状況を変えるためにも、
- データをリアルタイムに取得する
- 整合性の高いデータでAIが予測する
- 異常時は本人と家族に知らせる
この流れを当たり前にしたいと考えています。
AIは急速に発展していますが、私たちがやるべきことは“人に寄り添う形で技術を使うこと”。大量のデータを扱う技術に誇りを持ちつつも、最終的には「安心を届ける仕組み」をつくり続けたいと思っています。
静かな時間が心を整える
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
時間ができたときは、車で気の向くままに出かけることが多いです。遠出をするわけではありませんが、運転しながら景色を眺めていると気持ちが落ち着きます。映画を観る時間も好きです。
それから、美味しいものを探すのも楽しみです。いわゆるB級グルメのように、気取らないお店で“安くて本当に美味しいもの”に出会うと嬉しくなります。