人のセンスに“リスペクトフィー”を。ファッション同行サービス14年目のプラットフォームが挑む次の市場
Tyme Tech Lab株式会社 代表取締役 横路 一樹 氏
買い物に付き合ってくれる“おしゃれな人”を、Webで選べる――。ファッションアテンダントの運営を14年続けてきたTyme Tech Lab株式会社は、センスを持っている人達の「時間」と「目利き」に対価を払う文化づくりに挑んできました。現在はBtoCが中心の事業を軸に、対企業向けの福利厚生向けサービスや“ウィンドウショッピングの相方”を探せるマッチングアプリの新プロジェクトなど、次の成長に向けた仕込みも進行中。代表の横路一樹氏に、事業の現在地とこれからを伺いました。
目次
「時間を買う」発想から生まれた、ファッションアテンダントの現在地
――いまの事業内容と、サービスの核にある考え方を教えてください。
現在は「ファッションアテンダント」という、買い物に同行してくれる“センスのいいファッションオタク”をWebで選べるサービスを運営しています。
ユニクロでも百貨店でも、ルミネや伊勢丹でもアウトレットやイオン、リユース古着屋でも、「一人じゃ選べない」「オシャレ上級者に付き合ってほしい」「服装、装いの相談に乗ってもらいたい」という方が、サイトに登録されている登録アテンダントを選んで予約する形です。登録は副業中心で約500名、日本全国各地にいます。
大事にしているのは「時間を買う体験サービス」だという点です。日本はチップ文化が薄く、クリエイティブや目利き、センスにお金を払う概念が広がりにくかった。だからこそ、オシャレな人の経験やセンスに対して最低でも1時間5,000円、2時間1万円のように、きちんと“リスペクトフィー”を払うのが当たり前になってほしいと思っています。
使い方も、服だけに限りません。アクセサリーやバッグ、靴選びはもちろん、自宅に来てもらって断捨離を手伝ってもらうのは勿論、クローゼットの手持ち服で新しいコーディネートを提案してもらうこともあります。
アイテム購入を前提としなくてもいい。誰の時間をどう使うか、体験として選べるのが特徴です。利用者は女性が約65%、男性が約35%で、基本は個人向けが10割で、他には結婚相談事業者等の企業から毎月相談が届いている状態です。
22歳での起業から2度目の挑戦へ。印象的だった「機会損失」と「提携の難しさ」
――ご自身のキャリアと、経営で印象に残っている出来事は何ですか。
僕は22歳のときに学生起業し、渋谷区恵比寿で有限会社を立ち上げ、新潟県を中心とした買取リユース古着屋の店舗展開と東京でストリートブランドを展開していました。30歳のときに店舗とe-commerce事業をバイアウトして、そこからは個人で衣装スタイリストやアパレル&リユース業界のコンサルタント的な仕事をしながら、ファッションアテンダントを2012年11月に個人事業として事業化し、2019年にスタートアップとして勝負をかけるために株式会社タイムテックラボ(Tyme Tech Lab,inc)を立ち上げました。
当時の反省としては、出会い系最大手のペアーズさんとの業務提携の話を最終的に打ち切ったことです。秘密保持契約を結んで進めていたのですが、BtoB的な契約や調整の重さ、大企業との進め方のギャップもあって、悩みを抱えていサービスに駆け込んで着てくれている一般ユーザーさんをサポートする“Cに特化してきた起業家としてのプライド”も作用し、結果的に大きな機会損失になった感覚があります。
プラットフォームをやっていると提携の話は度々とどくのですが、受け止める体制がないと前に進めない。これを強く学びでした。
――新たなプロジェクトの構想が生まれたきっかけは何でしたか。
事業の変化を強く意識したきっかけは、自分自身がサービスのユーザーにならないという事実です。僕はアパレル側の人間なので、服のアドバイスは要らない。ただ、数年前の台北への視察で「古着屋とアートギャラリーを、センスのいい若い女性クリエイター目線で案内してほしい」と思ったとき、”THE出会い系アプリ”のTinderしか無く、私の求めていた相手を“今すぐ”見つける手段がありませんでした。
当時、Tinderでマッチした女性との無駄なメッセージのやり取りで貴重な時間を無駄にした後悔が残りましたね。僕ならデート相手でもスタイリスト的な方でもなく「センスが良いウィンドウショッピングの相方」にお金(リスペクトフィー)を払いたい。そこから新しいプロジェクトの構想が強まりました。
社員ゼロ・事務所ゼロで広がる組織。次に狙うのはBtoBと“街を歩く”マッチング
――組織運営の考え方について教えてください。
組織は社員ゼロ、事務所もゼロ(登記場所の神宮前はレンタルオフィス)です。以前、リユース買取古着屋の店舗経営で従業員の給料や固定費の重さを経験したので、次のステップでは「敢えて抱えない」と決めて、その制約の中で何が何処までできるか?を貫いてきました。運営は業務委託メンバーや学生インターン、社会人プロボノメンバー(副業登録しているアテンダントさん等)など、各サービス(プロジェクト)で適材適所なモチベーション高いメンバーを組み合わせて進めています。その分、固定費は圧倒的に低い体質です。
ただ、課題もあります。社員がいないからこそ、500人の登録アテンダントがいても、全員が“自分ごと”で動くわけではありません。特にこれからBtoBに広げるなら、法人の決裁権を持つ方への営業体制をどう作るかが大きなテーマです。
インセンティブを付けても、関わるメンバー全員が営業に向くわけではない。どのタイミングでマンパワーのある営業組織をどうやって構築していくか?楽しみでもあり不安でもあります。
――これから挑戦したいことをお聞かせください。
未来に向けて、大きく二つ進めていることがあります。一つは企業向けの“おしゃれ特化の福利厚生サービス「Benefit Styling」”で、理系のエンジニアや研究者など「オシャレをそもそも考えたくない」層のペイン(苦痛ストレス)を、サービス利用料を会社が負担する仕組みで解決することを目指します。
ローンチは2026年9月を想定しています。もう一つは、ファッションに限らず“今すぐウィンドウショッピングに合流してくれるパートナー(相方)”を探せるマッチングアプリ構想で、旅行者や出張で動く方々のり用想定を考えJR東日本さんのアクセラレータープログラムに応募し、こちらは2026年6月ごろのローンチに向けて都市での実証も含めて進めています。さらに、2026年4月にはコスメ領域の姉妹サービスもローンチも控えています。
――最後に読者の方へメッセージをお願いします。
本メディアの記事をご覧の経営者やこれから起業する方へ。うちのアテンダントには、服好きな経営者や複数の名刺を持つフリーランスや自営業の方もいて、「お金のため」だけでなく“好き”で参加してくれている方ばかりです。
斜め45度から一歩踏み込んでみると、自分の幅やブランディングが広がることもある。福利厚生領域など、B向けサービスの構築はまさにゼロからのスタートなので、協業できることがあればぜひ声をかけてください。