会社員時代の挫折を糧に。「絵の実力が足りない」と言われたイラストレーターが辿り着いた、ゲーム背景専門の匠道
安田画房イラスト制作株式会社 代表取締役 安田大輔氏
安田画房イラスト制作株式会社の代表、安田大輔氏は、主にゲーム業界を顧客とする背景イラストの専門家です。そのキャリアは、会社員時代に「実力不足」を理由に業界を去ることを促されたという挫折からスタートしました。しかし、彼はその言葉に屈せず、一貫して「絵の仕事」への情熱を貫き通し、独立から17年で国内外の有名タイトルに関わるまでに至ります。一本の筆と、卓球事業という意外な「二刀流」で、心身の健康と仕事の継続性を両立させる安田氏の挑戦に迫ります。
目次
背景イラストに特化した事業と、変わらない理念
――現在の事業内容と、会社として大切にしていることを教えてください。
事業内容としては、イラスト制作の中でも背景や風景イラストを専門に提供しています。主なお客様はゲーム会社様で、オーダーメイドの背景制作から、比較的安価に使える背景素材まで幅広く対応しています。
東京でアニメ背景の仕事をしていた経験もあり、その流れからゲームやアニメ分野が中心ですが、書籍の表紙やテレビ番組の挿絵、企業ポスターなども手がけてきました。
会社として大切にしているのは、「専門性を突き詰めること」です。背景に特化してきたからこそ、今も継続してお声がけいただけていると感じています。
挫折の連続から独立へ。自分の責任で描く道を選んだ
――これまでのキャリアと、独立のきっかけを教えてください。
東京で3年間、背景制作の現場にいましたが、正直うまくいかないことの連続でした。最初の会社は半年で退職し、その後も会社の経営悪化や実力不足を理由に職を離れることになりました。
それでも「絵の仕事を続けたい」という気持ちは消えず、会社の評価に振り回されるより、自分の責任でやってみようと地元に戻って独立しました。
個人事業として5年ほど続け、売上が安定したタイミングで法人化し、今に至ります。振り返ると、環境が合わなかっただけで、続ける選択をしたこと自体は間違っていなかったと思います。
――印象に残っている仕事はありますか。
自分自身、鳥山明先生が好きだったこともあり、ドラゴンボールのゲームの仕事に関わらせていただいたことです。また、子どもの頃から遊んでいたような有名ゲームの制作に、背景という立場で関われたりするのも、この仕事を続けてきてよかったなと思える瞬間ですね。その他、お客様から「安田さんにお願いしてよかった」と感謝の言葉をいただいたときも、非常に印象的でありがたいと感じています。
小さな組織だからこそ、無理のない関係性を
――現在の組織体制や、社員・外注との関係性について教えてください。
社内は私と妻の2名体制で、制作は基本的に私が担当しています。必要に応じて5名ほどの外注の方にお願いする形です。
過去に人を育てた経験もありますが、制作と育成を両立するのは想像以上に大変でした。今は信頼できる外注さんと必要なタイミングで協力する形が、自分には合っていると感じています。
コミュニケーションにおいては、無理をせず、誠実であることを心がけています。
専門性を守りつつ、AIとも向き合う未来
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今後も背景イラストに特化したスタンスは変えず、無理なく長く続けていきたいと考えています。売上規模も、今の1〜1.5倍程度を目安にしています。
一方で、AIによる画像生成には注目しています。現時点では修正が必要な部分も多いですが、生産性を高めるツールとして、勉強しながら取り入れていきたいですね。人の手だからこそできる部分を、より価値ある形で提供していきたいです。
――AI時代において、どのように生産性を高めていこうとお考えですか。
AIの進化は今後も続くと考えており、3Dモデルと組み合わせて矛盾のない絵を生成できるようになっていくでしょう。生産性を高めるために、自分自身もAIを否定するのではなく、味方につけるべく、その進化を勉強し、AIを使いこなせるようにしていくべきだと考えています。
卓球場オーナーという、もう一つの挑戦
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
半年前から、無人型の卓球場オーナー事業を始めました。もともと卓球が好きで、健康のためにも続けていたのですが、地元に需要があると感じたのがきっかけです。
体を動かすことで肩こりも減り、仕事の集中力も上がりました。イラスト制作と卓球場運営、どちらも自分がやりたいことを形にできている、今はとても心地よい状態だと感じています。