現実世界に“時間と場所”のデジタル情報を重ねる――AR×AIクローラーで挑む、次の当たり前
株式会社VISUALIZ 代表 高尾 雅史 氏
コロナ禍で需要が伸びた仮想空間向けのCG・3D制作事業。コロナの収束とともに市場が一気に縮小しました。そんな中で、株式会社VISUALIZは、最盛期は11名、現在は代表がワンオペで開発を続ける体制へと変化しました。一方で2018年から温めてきたAI領域の取り組みが、特許取得やピッチ採択を機に次の柱として立ち上がりつつあります。全国の避難所をARで案内する仕組み、そしてイベント情報を取得してAR上に表示する広告構想。現実世界にデジタルをただ載せるのではなく、「時間」と「場所」で整理し、体験として届けるという発想の原点から、事業のこれからを伺いました。
目次
「コロナ後の急変」を越えて、ワンオペで磨くAR×AIの2つのPOC
――現在の事業内容や現状について教えてください。
会社としては去年で10期になりました。もともとは仮想空間系のCGや3Dデータを制作していて、コロナの時期に需要が高まり、だいたい11名ほどの規模でした。ただ、コロナが収束したタイミングで、その仕事の需要がなくなってしまったんです。企業のプロモーションで、来客できない分をWeb上でリアルに見せるといった需要が消えたからですね。
仕事が減少したことで、一昨年の夏頃からは私が1人で会社を回している状況です。ただ、2018年頃からAIに関する仕組み作りも進めていたので、次の事業として考えているところです。大規模な学習システムは難しいと考え、狙った情報だけを取得してくるAIクローラーを開発。一昨年には関連特許も取得できました。
さらに、広島県の「広島ユニコーン10」への採択や、昨年度のジェトロのスタートアップ事業でシンガポールに行かせていただくなど、海外での活動も増えている状況です。
デジタルと現実の融合は「時間」と「場所」から始まる
――なぜこの領域に取り組もうと思ったのでしょうか。
2018年の時点で、AIによって世の中が一気に変わるだろうと思っていました。同時に、現実世界にデジタル情報を組み合わせる時期が本当に近いとも感じていました。ただ、現状はまだ十分にできていない。そこにはアプローチの違いがあるのでは、という問題意識があったんです。
例えばGoogleマップでも「時間軸の検索」はできません。現実世界には絶対に時間という概念が必要です。一方でWebは古い情報から新しい情報まで混ざったまま出てきます。だから、まず「整理する仕組み」が必要と考えました。
現実世界に表示するなら、少なくとも時間と場所、この2つを同時に選択できる状態にしなければならない。極端に言えば、デジタルと現実世界を融合させたかった、というのが一番の思いです。
――経営者になったきっかけや、ターニングポイントは何でしたか。
前職の会社で、いわゆる「社内ベンチャー」の形でコンピュータ系の部署を立ち上げたのが始まりです。その後、2008年のリーマンショックで会社が大きく揺らぎ、部署が独立しました。
ただ、独立したといっても4人ほどの小さな規模です。2009年に個人事務所としてスタートし、2016年から株式会社にしました。
ターニングポイントも外部要因・内部要因があって、外部要因ではリーマンショックとコロナ。内部要因では、アイデアが枯渇せず生まれ続けたこと、そして特許が取得できたことが大きかったと思います。
春に向けて精度を磨き、提携先とサービス化へ踏み出す
――今後の展望と、挑戦していきたいことを教えてください。
目標はサービスの立ち上げです。そのために提携先を見つけたい。POCができても、実証実験からMVPまで進めるには時間もコストもかかります。1人では限界があるので、企業と一緒にやっていく形を目指しています。
開発面では、ARで見せるところまではもうできているので、今はAIクローラーの精度を上げることに注力しています。春頃までに仕上げ、偶然にも現在つながりのある大手企業にも提案していきたいと考えています。
変化の波はさらに大きくなる。だから素早く動ける立ち位置でいる
――業界の流れについてどのようにお考えでしょうか。
AIが個人レベル、パーソナルなものになっていくのは間違いないと思います。プログラムも今後さらに作りやすくなり、アイデアの重要性が増していくはずです。アイデア自体も組み合わせから生まれますし、そこにもAIが入ってくると思います。結局、AIと共存していくしかないというのが私の考えです。
一方で、今のところAIには弱点もあって、例えばチャットのメモリの制約で複雑になると遅くなったり、別のチャットに引き継げなかったりします。そうした弱点も踏まえながら、考えていく必要があります。
ARグラスのようなデバイスも来年・再来年あたりに進んでいくかもしれません。小型で省電力なAIがどこまで出てくるかとも絡みますし、何が待っているかは正直わかりません。ただ、時代に対応できるように、素早く動ける形にしていかなければならないと思っています。
――リフレッシュはどのように過ごしていますか。
ワンオペで会社を回していることもあり、外に出る時間が限られてしまうのですが、朝6時くらいから犬の散歩をしています。ゴールデンレトリバーを飼っていて、朝は愛犬に起こされるんです。
まだ日が昇らないうちから、愛犬と散歩に行って全力疾走。意外とそんな時間が気分転換になっています。