飲食×車で築く2軸経営――フランチャイズ経営の現場で見えた現実
株式会社ONE 代表取締役 浅野氏
株式会社ONEは、仙台でビールバー「PERFECT BEER KITCHEN(パーフェクトビアキッチン)」のフランチャイズ運営と、車の買い取りを軸にした「カーマッチ」事業を展開しています。代表の浅野氏は、前職での環境変化をきっかけに独立し、飲食と車という異なる分野で経営に挑戦してきました。本記事では、フランチャイズ経営の現実や人との関わりを重視する姿勢、そしてこれからの展望について話を伺いました。
目次
飲食×車のフランチャイズで築く「2軸」の事業
――現在の事業内容を教えてください。
今やっている事業は大きく2つで、どちらもフランチャイズに加盟して運営しています。
飲食はビールバーで、「PERFECT BEER KITCHEN(パーフェクトビアキッチン)」という業態です。もうひとつが車の買い取り事業で、こちらは「カーマッチ」というフランチャイズになります。
――それぞれの事業は、どのような形で運営しているのですか?
「PERFECT BEER KITCHEN」は全国に店舗がありますが、私がオーナーとして運営しているのは仙台の一店舗です。
関東を中心に展開している中で、仙台ではうちの店がその役割を担っている形になります。地域に根差しながら、お客様との距離が近いお店づくりを意識しています。
車の方は、いわゆる高年式・高価格帯の車ではなく、走行距離が伸びた車や年式が古い車を中心に扱っています。一般的なローンが通りにくい方にも、低予算で車を届けることを意識した買い取りを行っています。
――いつ頃から始めたのですか?
最初に始めたのは飲食です。そこから少し時間が経って、車の買い取り事業をスタートしました。車の方は、まだ立ち上げて間もない段階なので、今は基盤づくりに力を入れています。
理念よりも「やれることはやる」――立ち上げ期の経営スタンス
――経営理念やビジョンはどのように考えていますか?
正直なところ、今は明確な経営理念をガチガチに固めている段階ではありません。
会社を立ち上げて、まだ2年に満たない時期ですし、体制も安定しているとは言えない状況なので、「やれることはやる」「できることはまずやってみる」というスタンスで必死に動いています。
理念やビジョンを掲げること自体は大切だと思っていますが、今はそれよりも目の前の課題に向き合い続けることを優先しています。
コロナ禍の収入減が背中を押した独立の決断
――会社経営を始めるに至った経緯を教えてください。
前職では、メンズ脱毛のお店で8年ほど働いていました。最初の頃は売り上げも良く、収入面でも恵まれていたと思います。ただ、コロナをきっかけに状況が一変しました。売り上げが落ち、それに比例して収入も下がっていったんです。
人って、一度上がった生活水準を簡単には下げられないものです。最初の1年は「そのうち戻るだろう」と思っていましたが、2年、3年と経っても回復の兆しは見えませんでした。
それなら、40歳になる前に一度、自分で何かに挑戦してみたい。そう思ったのが独立のきっかけです。
――最初の事業が飲食とのことですが、ビールバーのフランチャイズに惹かれた理由は何ですか?
独立にあたって、成功事例を活用できるフランチャイズという選択肢を考えました。その中で出会ったのがビールバーです。
実際に飲んでみて、ビールは注ぎ方や管理ひとつでここまで味が変わるのかと驚きました。その面白さに惹かれて、「これならやってみたい」と思ったのが始まりです。
FC経営で痛感した「頼りすぎる危うさ」と判断の重み
――経営の中で大変だった出来事はありますか?
フランチャイズ経営をして感じたのは、「頼りすぎると危ない」ということです。最初は、本部が上司のような存在だと思っていました。相談すれば何かしら助けてくれるだろう、と。
ただ、実際に始めてみると、オープン後はすべて自分で判断し、動かなければ何も進まない。本部を待っていても、レスポンスは遅く、経営は止まってしまいます。結局、決断するのは自分しかいない。その現実に気づくまでが、一番大変だった時期かもしれません。
――最初からお一人で始められたんですか?
最初は友人と一緒に始めましたが、商売を友達同士でやる難しさを痛感しました。言いたいことが言えなかったり、余計な気遣いが生まれたりする。結果的に、経営判断にも影響が出てしまいます。
商売自体、成功する人は限られています。その中で、さらに成功確率を下げる選択は避けた方がいい。そう学びました。
「楽しくなければ続かない」――人との会話が生む店づくり
――どのような社内風土をつくっていきたいですか?
仕事は、楽しくなければ長く続かないと思っています。楽しくない状態だと、覚えるスピードも遅くなりますし、気持ちもどうしても後ろ向きになります。
人生は一度きりなので、できるだけ楽しい時間を多くした方がいい。その考え方は、経営を始めてからも変わっていません。
とはいえ、経営者になると「嫌だから辞める」という選択は簡単にはできません。だからこそ、「どうやったら楽しめるか」を考えるようにしています。楽しい雰囲気があれば、自然と会話も増えますし、仕事に対する姿勢も前向きになります。
まずは楽しむこと。その土台があってこそ、成長や改善も生まれると考えています。
――アルバイトスタッフへの想いを教えてください。
アルバイトスタッフには、常に「働いてくれてありがとう」という気持ちがあります。スタッフが現場を支えてくれているからこそ、自分は別の仕事に時間を使えますし、こうしたインタビューを受ける余裕も生まれています。
自分が動かなくていい部分をスタッフが担ってくれているから、経営全体を見る動きが取れる。その環境は当たり前ではありません。だからこそ、「出てくれてありがとう」「動いてくれてありがとう」という感謝の気持ちは、ずっと持ち続けています。
――仕事の楽しさを感じる瞬間はどこにありますか?
一番楽しいのは、お客様と話している時間です。うちの店は、スタッフとお客様の会話が多いのが特徴で、常連の方が他店に行くと「静かだね」と言うくらいです。
人と話すことで、自分自身も助けられています。経営者になると、サラリーマン時代とは違うストレスがかかりますが、会話がその発散になっています。
――接客で意識している工夫を教えてください。
声掛けを徹底しています。ただ業務として話すのではなく、「伝える」ことを意識しています。
「メニューはこちらです」ではなく、「本日のおすすめはこちらです」と伝える。少しの違いですが、それだけで空気は変わります。気にかけることで、お客様との距離が縮まり、居心地の良い空間が生まれる。その積み重ねを大切にしています。
物価高・人件費・AI――飲食と車の“これから”をどう見るか
――飲食業と車業界の将来性をどう捉えていますか?
飲食業は、正直これからさらに厳しくなると思っています。物価高や人件費の上昇が続く中で、利益は圧迫される一方です。最低賃金が上がっても、その補填は企業側に委ねられています。
車業界も安泰とは言えません。車の性能が上がる一方で、整備できる場所は限られてきています。どの業界も、不安要素は多いと感じています。
――今後の集客で、何が課題になると感じていますか?
集客の考え方は、ここ数年で大きく変わったと感じています。
以前は、グルメサイトやテレビといったメディアが中心でしたが、今はSNS、特にInstagramが主流になっています。テレビを見ない人も増え、CMを流しても情報が届かない時代です。
さらに最近は、チャットGPTなどのAIを使った情報収集が増えています。Googleマップも、いずれ今までのような使われ方ではなくなっていくと思っています。
これからは、SNSとAIをどう活用するかを考えないと、集客はかなり難しくなる。チラシを配れば人が来る時代ではありませんし、デジタルを使えないと選ばれなくなっていく。その危機感は強く持っています。
――実際に、SNSやAIを事業に活用していますか?
私自身、チャットGPTを活用しています。ブログ作成などもAIに任せることで、短時間で形にできます。
人がやると時間とコストがかかる作業を、AIが担う。そういう流れは、これからさらに加速していくと思います。
繋がりから広がる次の一手――2軸を伸ばし、3つ目も視野に
――今後の展望や挑戦について教えてください。
飲食と車の2軸で動いてきたことで、人との繋がりが広がりました。その中で、新しい事業の声をかけていただくことも増えています。
今の2軸を強化するのか、新しい軸を増やすのか。できることがあれば、柔軟に挑戦していきたいと考えています。
――いま、どちらの事業に比重を置いていますか?
現時点では、車の事業に比重を置いています。立ち上げたばかりなので、基盤づくりが必要な段階です。
飲食の方はスタッフに任せつつ、数字管理や改善点の指示を行っています。
経営者として「自分が潰れない」ために守ること
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
経営を始めるなら、人に頼りすぎないことが大切です。「誰かが助けてくれるだろう」と思うと、甘えが出てしまいます。
自分で判断し、自分で決める。その覚悟がないと、経営は続きません。何より大事なのは、自分が潰れないこと。メンタルを守りながら、やりたいようにやる。その意識を持っていれば、何とかなると思っています。