高校生起業家が描く「地域インフラ」の未来——苦労と成長を楽しみ、ファーストペンギンとして挑む
株式会社MEFAR 代表取締役 谷村 拓紀氏
「誰かの役に立つのか」という極めてシンプルな問いを事業の起点に置き、地域が抱える課題に挑み続ける株式会社MEFAR。高校2年生という若さで創業した谷村拓紀氏は、自身の失敗や実体験をビジネスの種に変え、地域特化型の高校生就職ガイドブック『ハピワク』や、観光地の荷物預かり問題を解決する『ドコロカ』を展開しています。平均年齢18歳、学生インターンを中心としたエネルギッシュな組織を率いる谷村氏に、創業の背景から組織づくり、そして上場を見据えた未来への展望を伺いました。
目次
「誰かの役に立つか」を原点に。地域人口の流出を止めるインフラ構築への挑戦
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は、メイン事業である『ハピワク』と、現在リリース準備を進めている『ドコロカ』の2軸で展開しています。
『ハピワク』は、地域に特化した高校生向けの就職ガイドブックです。従来の求人票は高校生にとって非常に見づらく、学科に縛られた選択肢しか提示されないことが多い。その結果、地域にどんな魅力的な企業があるかを知らないまま、都市部へ流出してしまうケースが後を絶ちません。私たちはこの現状を改善し、「地域で働く」という選択肢を高校生に寄り添った形で提案することで、地域のインフラとなるサービスを目指しています。
一方の『ドコロカ』は、インバウンド観光客の増加に伴う「コインロッカー難民」問題を解決するための空きテナント活用サービスです。店舗の空きスペースに専用ボックスを導入し、荷物を預けることで周辺飲食店で使えるクーポンを発行するなど、観光客の満足度と地域経済の活性化を両立させる仕組みです。どちらの事業も「今までになかったサービス」であり、私たちはその先駆者である「ファーストペンギン」でありたいと考えています。
――経営理念や、組織として大切にしている価値観は何でしょうか。
私たちの根底にあるのは、「誰かの役に立つのか」という考え方です。たった一人でもいい、必要としている人がいるなら、そこから事業を真剣に考え、規模を広げていく。これが第一の基準です。
また、メンバーには「苦労を楽しみ、成長を楽しむ」というビジョンを伝えています。厳しい状況さえも楽しみながら乗り越えれば、その先には必ず成長がある。自分たちのレベルを上げ続けるプロセスそのものを楽しむ文化を大切にしています。
高校2年生での決断。父の背中と、盗まれたスーツケースから始まった経営への道
――経営者になられた経緯を教えてください。
父が経営者だったこともあり、幼い頃からその背中を見て「いつか自分もこうなりたい」という漠然とした憧れがありました。私には特別な特技があったわけではありませんが、パソコンやプログラミングといった、自分が唯一「勝負できる場所」を活かしてビジネスをしてみたいと考えたのが始まりです。
『ドコロカ』の発想は、私自身の苦い経験から生まれました。福岡でライブに行った際、周辺のコインロッカーがすべて埋まっていて、やむを得ず外に置いておいたスーツケースが盗まれてしまったんです。「なぜロッカーがないのか」という切実な悩みから、ビジネスとしての解決策を考え始めました。
――周囲の反応や、創業時の苦労はいかがでしたか?
学校側は全面的に応援してくれました。テレビ局を呼んでくださるなど後押しもありましたが、一方で「危ないのではないか」と心配する先生もいました。そういう声を無視するのではなくホームページを作り、電話番号を取得し、しっかりとした「会社」として信頼してもらえるよう準備を重ねました。
創業当初は高校の同級生3名でスタートしましたが、一番大変だったのはやはり資金面です。売上が立たない中でもメンバーに何かしらの形で報いたいと思い、必死に受託のホームページ制作などをこなして食いつないだのは、今ではいい思い出です。
――これまでの活動の中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
高校3年生の時、地元・鹿児島で大規模な花火大会を企画したことです。予算8000万円という巨大なプロジェクトに挑みましたが、結果としては失敗に終わりました。しかし、その時、鹿児島の花火会社さんが、私たちの活動に共鳴してMEFAR専用の花火を上げてくださったんです。「ビジネスとは人と人との助け合いなんだ」と肌で感じた瞬間でした。あの時の景色は一生忘れられません。
放課後のような自由な空気。大学生インターンと「成長を分かち合う」組織文化
――MEFARの組織構成や、社内の雰囲気について教えてください。
現在は取締役4名に、あとは全員が学生インターンという構成です。平均年齢は18〜19歳。一般的な会社とは少し特殊かもしれませんが、友達関係からスタートしているメンバーが多いので、非常にオープンな雰囲気です。
仕事がない日でも、メンバーが「放課後」のようにフラッとオフィスに立ち寄って本を読んだり、雑談したりして帰る。そんな「会社が生活の片隅にある」ような状態を目指しています。遊びながら話している時に、「あれはこうした方がいいかもね」とアイデアが生まれるような、楽しみながら真剣に向き合う空気を大切にしたいんです。
――採用において、どのような素質を求めていますか?
今後も学生を採用し続けていく方針ですが、重視しているのは「クリエイティブな視点」と「向上心」です。私たちが扱う『ハピワク』は高校生が対象なので、年齢の近い大学生の視点は不可欠です。
あとはコミュニケーションの質ですね。お互いに高め合える関係は歓迎ですが、周りを下げて自分を上げようとする子は採用しません。お互いの成長を喜び合えることが、私たちのチームの前提です。
関東進出、そして10年後のIPOへ。学生起業家コミュニティの創出も
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
1年以内には、現在進めている埼玉県など関東圏での『ハピワク』展開を確実に成功させたいと考えています。3年後には栃木や群馬など、学生の手だけで運営できるエリアを広げていきたい。
さらに、私たちが「高校生と企業」の間にいる立場を活かし、スタートアップを目指す学生が集まるコミュニティや協議会のような場を作りたいと思っています。若者が日本の将来について語り合えるコミュニティを、3年後にはスタートさせる計画です。
――さらにその先、長期的な目標はありますか?
10年後、15年後にはIPO(新規上場)を目指しています。現在の事業をただ広げるだけでなく、しっかりとブランディングとマネタイズを確立し、「地域インフラ」としての価値を不動のものにしたい。現在は大学生がビジネスマナーを一から学ぶ段階という課題もありますが、これを仕組み化し、企業成長を個人も喜べるような「成長を分かち合える」組織を突き詰めていきます。
遊びの延長にビジネスがある。圧倒的な行動力が生むリフレッシュの質
――経営以外で情熱を注いでいることや、リフレッシュ方法があれば教えてください。
基本的にはずっと友達と過ごしていますね。家に友達がいない日がないくらいです。ゲームをしたり料理を作ったり、サッカーをしたり、ドライブに行くこともあります。
この前も、思い立って大阪から車で香川までうどんを食べに行き、温泉に入ってから鹿児島まで走って帰ってくるという工程を3日でやりました。「やりたいと思ったらすぐやる」という感覚は、ビジネスもプライベートも同じかもしれません。
挑戦する経営者へ伝えたいこと
――これから経営に挑む方へメッセージをお願いします。
学生での起業は、周りから反対されたり、逆に過剰に持ち上げられたりすることもありますが、何より大事なのは「自分の軸」を持つことです。年上の方からいろいろなアドバイスをもらう機会も多いと思いますが、すべてを取り入れてしまうと、どこにでもあるありふれた事業になってしまいます。「ここだけは絶対に譲れない」という軸を死守してください。
そして、仲間を巻き込むなら、相応の責任と準備を持って向き合うこと。ビジネスである以上、情熱だけでなくキャッシュや責任も不可欠です。苦労を楽しみ、自分たちの軸を信じて、一緒に新しい時代を作っていきましょう。