映像で“絆”を未来へつなぐ――株式会社Limage・田中伸和が描く、人に寄り添う映像制作のかたち
株式会社Limage 代表取締役 田中 伸和 氏
結婚式や七五三、入籍といった人生の節目に寄り添い、映像というかたちで“絆”を残し続けている株式会社Limage。代表の田中伸和氏は、営業、番組制作、ブライダル業界での経験を経て独立し、現在は「人」に特化した映像制作を行っています。本記事では、事業への思いや経営者としての転機、今後の展望について伺いました。
人の記念日を映像で残すという使命
――現在の事業内容と、その特徴について教えてください。
弊社は、映像制作をメイン事業として行っています。特にブライダルを中心に、入籍やマタニティ、七五三・結婚記念日といった人生の節目に関わる記念日を映像で残す仕事をしています。単にイベントを撮影するのではなく、その人の人生の流れの中にある“意味”や“想い”を映像として形にすることを大切にしています。
社名の「Limage(リマージュ)」は、フランス語の「リアン(絆・つながり)」と「イマージュ(映像・想像)」を掛け合わせた言葉です。人と人のつながりや、企業と人との関係性など、目には見えない絆を映像として未来に残したいという思いから名付けました。映像は単なる記録ではなく、その場の空気や感情、関わる人たちの背景まで映し出せるものだと考えています。
――御社ならではの強みはどのような点にありますか。
映像制作会社は全国に数多くありますが、技術やクリエイティブ性を重視する傾向が強いと感じています。もちろん技術は非常に重要ですし、私自身もカメラを持って現場に立ってきました。ただ、私は営業出身という背景があるため、「何をどう撮るか」以上に「誰の、どんな想いを残すか」という視点を大切にしています。
結婚式一つをとっても、その日だけを切り取るのではなく、これまでどんな人と出会い、どんな場所で時間を過ごしてきたのか、どんな方に感謝を伝えたいのかを丁寧にヒアリングします。そして、これからどんな夫婦でいたいのか、10年後、20年後にどんな家族の姿を描いているのかといった未来まで想像しながら映像を構成していきます。
私は、映像は“対話”から生まれるものだと思っています。お客様の話を深く聞き、その人らしさや価値観を一緒に整理しながら形にしていく。そのプロセスこそが、私の強みです。完成した映像が、時間が経っても何度も見返したくなる存在であること。それが私の目指す映像制作のかたちです。
また、映像を納品して終わりではなく、その後の人生の節目にも寄り添える関係でありたいと考えています。お客様とのつながりを長く大切にし続けることも、私にとって大事な使命の一つです。
どん底から始まった経営の道
――これまでのキャリアについて教えてください。
もともと文系で、機械が苦手な人間でした。新卒で地元のケーブルテレビ局に入り、番組制作を志望していましたが、最初の半年間は営業を経験しました。正直、営業は自分には向いていないと思っていましたが、実際に現場に立ってみると、人と向き合い、言葉で価値を伝える仕事の面白さに気づきました。そこから営業という仕事に強い魅力を感じるようになりましたね。
その後、番組制作の部署で5年間カメラを持つ経験を積みました。現場で撮影し、映像をつくる楽しさを知った中で、結婚式場のCM制作を担当したことが、ブライダルの世界に興味を持つきっかけになりました。もっとこの業界を知りたいという思いから、採用募集をしていない会社に自ら履歴書を送り、ブライダル情報誌の広告営業として5年間従事しました。
さらに「もっと結婚式の現場に入りたい」という気持ちが強くなり、映像会社へ転職しました。マネージャーとして3年間経験を積む中で、現場と経営の両方を見られる立場になり、自分のやりたいことがより明確になっていきました。営業、制作、マネジメントと、異なる立場を経験したことが、今の自分の土台になっています。
――経営者になられたきっかけは何だったのでしょうか。
独立のきっかけは、37歳のときに経験した大きな出来事です。会社での責任を負い、収入もなくなり、私生活も大きく変化しました。本当に何もない状態になったとき、「自分でやらなければ何も始まらない」と強く感じました。
それまでは会社員として部長を目指すことが目標で、独立や経営者になることは考えていませんでした。しかし、すべてを失ったように感じたその経験が、自分の人生を自分で切り拓く覚悟を与えてくれました。
あの出来事があったからこそ、今があります。振り返れば、あれが私にとって最大のターニングポイントでした。そして、その経験があったからこそ、人の痛みや不安にも寄り添える経営者でありたいと思うようになりました。
人を大切にする組織づくり
――現在の組織体制について教えてください。
現在、会社は私一人で運営しています。いわゆる社員という形では私だけですが、案件ごとに外部のカメラマンやクリエイター、関係各所のパートナーと協力しながらプロジェクトを進めています。規模としてはコンパクトですが、その分、一つひとつの仕事に対して自分の目が行き届く体制です。
私は「小さいからこそできる丁寧さ」があると思っています。人数が多い組織では分業が進む分、役割が明確になる一方で、思いの共有が難しくなることもあります。今の体制では、関わる人全員と直接対話しながら進められるため、方向性のズレが起きにくいという強みがあります。
また、案件ごとに最適なメンバーを組み合わせられる柔軟さもあります。固定されたチームではなく、そのお客様、そのプロジェクトに合った人材と組むことで、より質の高いアウトプットにつなげられると感じています。
――人との向き合い方で大切にしていることは何でしょうか。
仕事をする上で最も大切にしているのは、「誰と組むか」です。同じ思いで同じ方向を向いて進めるかどうかを重視しています。どれだけ技術が高くても、価値観が大きくズレていると、良い仕事にはつながらないと感じています。
私は、やらされている仕事ではなく、「一緒にやりたい」と思える関係性が重要だと考えています。お客様に対しても、パートナーに対しても、主体的に関わる姿勢があるかどうかを大切にしています。
今後もし採用をする場合でも、その人が何を大切にしているのかを最優先で見たいと思っています。お金なのか、時間なのか、やりがいなのか。その価値観が見えることで、一緒に進めるかどうかが判断できるからです。
お客様や会社に対して、どれだけ自分の力を注げるか。その思いが一致する人と、これからも長く、信頼関係を築きながら仕事をしていきたいと考えています。仕事は一人では完結しないからこそ、人との関係性を何よりも大切にしています。
結婚のその先まで寄り添う挑戦
――今後の展望について教えてください。
これまで結婚式の撮影を軸に活動してきましたが、結婚式のあり方は大きく変化していると感じています。規模の縮小や価値観の多様化など、業界は転換期にあります。結婚式を挙げない選択をする方も増えていますし、形もさまざまになっています。
ただ一方で、「結婚したい」という思いそのものがなくなったわけではありません。大切な人と人生を歩みたいという気持ちは、時代が変わっても変わらないものだと思っています。だからこそ私は、結婚式という“点”だけではなく、その前段階から関わっていきたいと考えています。
――具体的に取り組んでいることはありますか。
現在取り組み始めているのが、結婚を目指す男性のサポート事業です。結婚相談所に登録している方や、これまでお付き合いの経験が少なかった方に対して、心理学やマナー、コミュニケーション、エスコートの観点からアドバイスを行い、その人の魅力を引き出していく取り組みです。
単に「相手を見つける」ことが目的ではなく、まずは本人がより魅力的な人間になることが大切だと考えています。自分自身を理解し、磨き、相手を思いやる力を育てる。その積み重ねが、結果として結婚につながっていくと感じています。
最終的には、出会いから結婚、そしてその後の人生まで、一生を通じて「残す」ことに関われる存在でありたいと思っています。
――経営者として意識していることは何でしょうか。
私自身の課題は、自分を磨き続けることです。会社を経営しているから良いということではなく、一人の男性として、人として魅力的であることが大切だと感じています。
以前教えていただいた「やるか、するか」という言葉があります。迷う時間があるなら一歩踏み出す。その姿勢を持ち続けながら、これからも挑戦を続けていきたいと思っています。
走り続けることで見える景色
――リフレッシュ方法について教えてください。
私はドライブが大好きです。撮影の仕事で遠方へ行くことが多いですが、車を使います。移動そのものが、私にとって大切な時間になっています。
効率を考えれば飛行機や新幹線を使ったほうが早いこともありますが、あえて車を選びます。長い時間をかけて走ることで、道中の景色をじっくり眺めたり、ふと立ち寄った場所で新しい出会いがあったりします。そうした偶然の体験が、自分の感性を刺激してくれるのです。
目的地に早く着くことよりも、その過程で何を感じるかを大切にしています。山や海の景色、季節の変化、人との何気ない会話など、一つひとつが、自分の中に蓄積されていきます。
――ドライブが仕事に与えている影響はありますか。
映像制作の仕事は、人の人生や感情を扱う仕事です。だからこそ、自分自身の感性を磨き続けることが重要だと感じています。ドライブ中に感じた空気や光の変化、土地ごとの雰囲気は、そのまま映像づくりのヒントになります。
長距離を走る時間は、自分と向き合う時間でもあります。頭の中を整理し、新しいアイデアを考えたり、これからやりたいことを思い描いたりする貴重なひとときです。
時間をかけることで得られる発見や学びは、すべて仕事にもつながっています。これからも走り続けながら、新しい景色を見て、新しい価値を見つけ続けていきたいと思っています。