M&Aの民主化で業界を変える──120万社の未来を守るMANDAの挑戦

MANDA株式会社 代表取締役 森田洋輔 氏

中小企業の事業承継問題という社会課題に真正面から向き合い、M&A業界の構造そのものを変えようとするMANDA株式会社。売り手・買い手双方にとって透明性の高いプラットフォームを構築し、「M&Aの民主化」を掲げる森田洋輔氏に、創業の背景、経営観、組織づくり、そして未来への展望について伺いました。

事業承継問題に挑む──M&Aの民主化という挑戦

――現在の事業内容について教えてください。

私たちが取り組んでいるのは、中小企業の事業承継問題です。日本全国に約380万人の経営者がいると言われていますが、そのうち245万人が70歳以上、そして127万人が後継者不在という状況にあります。しかし、年間の第三者承継(M&A)の件数は約5000件弱しかなく、本来必要とされる件数とは大きなギャップがあります。この数字を知ったとき、正直「このままだと間に合わない」と感じました。

一方で、M&A業界の構造を調べてみると、売り手と買い手の両方から手数料を取る「両手仲介」が主流で、利益相反が起きやすい形になっています。価格だけでなく、ブランドを残すのか、従業員の雇用はどうするのか、取引先との関係はどうなるのか。会社には数字では表せない思いが詰まっています。その意思決定の場面で、本当にこの仲介という仕組みが事業承継の課題解決に最適なのかという疑問が拭えませんでした。

さらに、案件情報は各仲介会社に分散し、情報が囲い込まれている現状があります。売り手も買い手も、まずは仲介会社に相談しないと情報に辿り着けない。そこに、業界としての限界を感じました。

――その事業に込めている理念について教えてください。

私は「M&Aの民主化」という言葉を使っています。M&Aをユーザーの手に取り戻すという意味です。M&Aは仲介会社のものではなく、本来は会社を託したい人と引き継ぎたい人のものです。だからこそ、売り案件を自動で集約し、日本中の案件を一元検索できるデータベースをつくりました。売り手も買い手も、相手探しが簡単にできる環境を無料で提供しています。

私たちは「M&Aの入り口となるプラットフォーム」になりたいと思っています。まずはここから始めてもらう。そこから健全な市場が広がっていく。最終的には120万社のうち60万社を解決する。それが私たちのミッションです。課題解決が先にあり、その結果として利益がついてくる。私はその順番を、これからも大切にしていきたいと思っています。

原点は父の会社と、自らの経営体験

――この事業を始められたきっかけを教えてください。

私の父はソフトウェア開発会社を経営していました。私が27歳の頃に亡くなったのですが、そのとき私は会社を継ぎませんでした。当時は自分のキャリアのことで精一杯で、事業承継という選択肢を深く考える余裕がなかったのが正直なところです。ただ、時間が経つにつれて、「もし誰かに引き継ぐ道を探せていたら、会社は残せたのではないか」という思いが、消えずに心の奥に残り続けました。経営者の決断一つで、会社の未来は続くこともあれば、途切れてしまうこともある。その重みを後になってから強く感じるようになりました。

その後、36歳の頃に妻が経営していたまつげサロンを引き継ぎ経営することになり、私は当時働いていたヤフー社を辞めて中小企業の社長になりました。大企業にいると見えにくい中小企業の現実を、経営者という立場で初めて体感しました。日々の資金繰り、従業員の生活、お客様や取引先との関係、青年会議所や地域の商店街組合での活動。その一つ一つが重く、そして尊いものでした。そうした環境の中で、自然と事業承継の話が耳に入るようになりました。「次の世代へどう託すか?」という問いは、多くの経営者にとって避けて通れないテーマだったのです。

そこでM&A業界を調べていくと、構造に強い違和感を覚えました。この形のままで、本当に事業承継問題は解決できるのだろうか。業界の仕組みそのものを変えなければ、本質的な解決にはつながらないのではないか。そう考えたとき、「誰かがやるのを待つ」のではなく、自分たちで挑戦してみようと決意しました。ヤフー時代の仲間4人とともに、この会社を立ち上げたのが始まりです。

――経営判断の軸は何ですか。

利益はもちろん重要です。ただ、私の中では明確に順番があります。まずは課題解決が先にあるべきだと考えています。社会の課題を本気で解決しようとした結果として利益が生まれる。その順番を逆にしないことが、私にとっての経営の軸です。

私たちのミッションは、120万社の後継者不在企業のうち60万社を解決することです。簡単な数字ではありませんし、長い時間がかかる挑戦です。それでも、業界全体を健全にすることが事業承継問題の解決につながると信じています。父の会社を残せなかった経験があるからこそ、このテーマから目を背けず、最後までやり切りたいと思っています。

プロフェッショナルが集う、小さく強い組織

――組織運営について教えてください。

創業メンバーはヤフー時代の仲間4人です。エンジニア、デザイナー、弁護士、そして私。それぞれが専門性を持ったプロフェッショナルで、分野も考え方も違います。ただ、共通しているのは「社会の仕組みを良くしたい」という思いでした。そこが一致していたからこそ、一緒に立ち上げることができたのだと思います。現在はM&Aアドバイザーが4名加わり、実務面でも専門的な支援をしてくれています。

まだ小さな組織だからこそ、一人ひとりの力がダイレクトに会社の前進につながります。だから私は、細かく管理するよりも、それぞれの専門性が最大限発揮できる環境を整えることを大切にしています。エンジニアにはエンジニアの思考の流れがあり、デザイナーには1ピクセルにこだわる感性や美意識がある。弁護士には法的な視点があり、アドバイザーにはM&Aの知識と経験がある。互いの領域を尊重しながら、最終的に同じ方向に向かっていく。そのバランスを意識しています。

――コミュニケーションで大切にしていることは何ですか。

私が最も意識しているのは、ミッションをぶらさないことです。私たちは事業承継問題を解決するために集まっています。意見が分かれることがあっても、「それはミッションに沿っているか」という一点で判断します。そこが共通言語になっているからこそ、議論はあっても迷走はしないと感じています。小さな組織だからこそ、軸がぶれると一気に方向を見失います。そのため、意思決定の基準は常に明確にしています。

――どんな方と一緒に働きたいですか。

社会課題の解決に喜びを感じられる方と一緒に働きたいです。もちろん成功や収益も大切ですし、それを否定するつもりはありません。ただ、それだけが動機だと続かないと感じています。この事業は簡単ではありませんし、時間もかかります。それでも「この課題を解決したい」と思える人であれば、困難も前向きに乗り越えられると思っています。今在籍しているアドバイザーも、まさにそこに共感して加わってくれています。

私たちはまだ小さな組織ですが、一人一人の志は高いと思っています。その志を共有できる仲間と、着実に前へ進んでいきたいと考えています。

健全な市場をつくるために

――今後の展望について教えてください。

まず取り組まなければいけないのは、プラットフォームの認知度を高めることです。まだまだ存在を知られていませんし、機能面でも改善の余地はあります。情報量も圧倒的に増やしていかなければなりません。日本中の売り手、買い手が集まる場所になるためには、質も量も両方が必要です。

ただ、私たちだけでできることには限界があります。だからこそ、同じ課題意識を持つ方々とパートナーシップを組みながら進めていきたいと考えています。事業承継問題は一社で解決できるものではありません。地域の方々、金融機関、専門家、さまざまな立場の人と力を合わせることで、ようやく前に進むテーマだと思っています。私たちはそのハブのような存在になれればと考えています。

――業界の今後についてはどのように見ていますか。

売り手は確実に増えていくと思います。70代、80代の経営者が増えれば、体力的にも精神的にも限界を感じる方は増えていきます。一方で、買い手も増えています。以前は大きめの企業が中心でしたが、今は中小企業や個人でもM&Aに挑戦するケースが増えています。敷居は確実に下がっています。

だからこそ、健全で透明性のある市場が必要です。情報が閉ざされたままでは、不信感は消えません。誰もが公平に情報へアクセスでき、納得感を持って意思決定できる環境が必要だと思っています。

私たちは、その土台をつくる役割を担いたいと考えています。市場そのものを健全にすることが、結果として事業承継問題の解決につながると信じています。時間はかかるかもしれませんが、確実に前に進めていきたいと思っています。

孫正義氏から受けた刺激、そして原点回帰

――影響を受けた人物はいますか。

前職がヤフーだったこともあり、孫正義さんの存在は大きいです。私は決済サービスのプロデューサーとして10年以上プロジェクトに関わってきましたが、孫さんの意思決定のスピードや視座の高さには常に刺激を受けていました。物事を大きな構想で捉え、そこから逆算して実行していく姿勢は、今の経営にも強く影響しています。リスクを恐れずに挑戦する姿勢、そして「社会をどう変えるか」という視点で物事を考える姿は、今でも自分の中の指標になっています。あの環境で挑戦を重ねられたことは、私にとってかけがえのない経験でした。

――リフレッシュ方法を教えてください。

DIYが好きで、ツリーハウスを作ったこともあります。義理の兄が造園業をしていて、大きくなったどんぐりの木を借り、その上に家を作りました。廃材を集めて組み立てていく作業は大変ですが、無心になれる時間でもあります。自分の手で形にしていく過程が好きなんだと思います。

あとはキャンプやサウナも好きです。家族で自然の中に出かけると、すっきりと頭が整理されます。日常から少し離れることで、自分が何を大切にしているのかを思い出せる時間でもあります。そうした時間があるからこそ、また仕事に向き合える。これからも、自分なりのリズムを大切にしながら挑戦を続けていきたいと思っています。

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