明日も行きたい会社をつくる。就労継続支援A型事業所に込めた「まごころ」とは
株式会社ステップライク 代表取締役 小川 信也 氏
就労継続支援A型事業所を営み、利用者一人ひとりに合った仕事を提供しながら、一般就労への支援にも力を注ぐ小川氏。もともとは企業側として仕事を発注する立場にありましたが、障害福祉の現場で働く人たちの姿に触れ、より近い立場で支えたいという思いから独立を決意しました。大切にしているのは、仕事の前に「毎日来られる会社」であること。利用者が自分の役割を感じ、社会に貢献している実感を持てる場所を目指しています。今回は、事業に込めた想い、組織づくり、今後の展望について伺いました。
目次
まずは「会社に来られること」から。また行きたいと思える事業所を目指す
——現在の事業内容について教えてください。
就労継続支援A型事業所を営んでいます。企業様から仕事をお預かりし、利用者の方に取り組んでいただきながら、訓練やスキル習得を支援し、できる方については一般就労につなげていく事業です。
職場に勤めることが苦手な方や、働きたくてもなかなか仕事が継続できない方は少なくありません。だからこそ、まずは毎日出勤できる環境をつくることを大事にしています。仕事はその次という考えです。朝起きたら会社に行ける、また行きたいと思える、そういう雰囲気をつくりたいと考えています。
利用者の中には、精神的な不安を抱える方もいれば、身体的な障害のある方もいます。耳の聞こえない方にはスタッフも一緒に学びながら寄り添い、手が不自由な方にはその方に合った仕事を用意する。そうして、一人ひとりに応じた関わりを続けながら、「ここへ来ると自分が活躍できる」「社会に貢献できている」と感じてもらえる事業所にしたいと思っています。
——具体的にはどのような仕事をされているのですか。
主にギフト関連の梱包や出荷の仕事です。たとえば、楽天市場などで販売されるギフト商品をお預かりし、箱の組み立て、商品の確認、梱包、ラベル貼り、発送まで行っています。
賞味期限の管理を含む案件もあり、利用者の方にはシステムを使った送り状の発行などにも関わってもらっています。
仕事を出す側から、支える側へ——もっと近くで支えるために決断した「独立」という道
——この事業を始めたきっかけを教えてください。
もともとは企業に勤め、仕事を外部に出す立場にいました。その中で、A型やB型の事業所の方から「仕事がなくて困っている」という話を聞いたのが始まりです。
実際に現場へ行くと、仕事があれば一生懸命取り組む姿がありました。その姿を見て、自分が仕事を出すことで少しでも貢献できるのだと感じるようになったのです。
それを何年も続けるうちに、もっと近くで支えたい、仕事を渡すだけでなく、直接指導し、日々の変化にも寄り添いたいと思うようになりました。この事業を始めたのは57歳のとき。会社を退職し、独立しました。
——独立には不安もあったのではないですか。
迷いはずっとありました。家族から反対もありましたし、最初の1年目、2年目は本当に大変でした。ただ、このまま定年を迎えたら、この人たちに仕事が継続して回っていくのだろうかと考えたとき、自分で会社を立ち上げ、自分で営業して支えていきたいと思ったんです。
会社員のときは、自分一人の思いだけでは進められないこともありますが、自分の会社ならスタッフと話し合いながら舵を取ることができます。そこに踏み出した理由がありました。
「まごころ」を持って伝える——相手を想う視点で進める組織づくり
——利用者の方やスタッフとの関わりで大切にしていることは何ですか。
事業所の名前にもあるように、「まごころ」を大事にしています。褒めるときもまごころを持って褒める。注意するときも、ただ怒るのではなく、相手のためを思って伝えていることがわかるように話します。
相談に来たときに指導ばかりでは、もう話したくないとなってしまいます。だからこそ、日々の中で良いところはしっかり褒め、直してほしいことは相手に伝わる言い方で届けるようにしています。
——印象に残っている変化はありますか。
他の事業所では出勤ができなかった方が、うちに来てから「楽しい」と言って、無遅刻無欠勤で通えるようになったことがあります。親御さんにもとても喜んでいただきました。
朝、私が掃除をしていると「一緒にやります」と声をかけてくれる利用者さんもいて、自然に動いてくれるようになったこともうれしかったです。
また、会社に来るのが苦手だった子が、今度はスタッフと話したいからと早く来るようになったこともありました。そうやって笑顔が増え、継続して通えるようになる姿を見ると、やってきてよかったと感じます。
——職場の雰囲気はいかがですか。
現在、スタッフは6人です。私以外は全員女性で、年齢も幅があります。施設外就労も行っているため、余裕を持った体制にしています。
雰囲気としてはファミリー感があり、依頼が入ればみんなで工夫しながら進めています。必要があれば私が直接指導に入ることもありますし、みんなで支え合いながら現場を回しています。
一人でも多く、一般就労へつなげたい。自身の大きな役割と向き合う
——今後の展望を教えてください。
人手に困っている企業様は多いです。そうした中で、障害のある方々も十分に戦力になることを、もっと伝えていきたいと思っています。そして、一人でも多く一般就労へ送り出していきたいです。
実際に昨年10月には、利用者の方の中から1人を職員として採用しました。以前は悩みが多かった方でしたが、今では人のケアや指導もできるようになっています。こうした方を一人でも多く育てていけたらと思っています。
——今、感じている課題は何でしょうか。
A型事業所は最低賃金を保障する仕組みです。だからこそ、それに見合う仕事とスキルをどうつくるかが重要です。
事業所を継続するためにも、企業様との信頼関係を築き、継続的に仕事をいただくことが欠かせません。営業して仕事を取ってくることは、今の大きな課題であり、私自身の大事な役割です。
仕事も遊びも全力で。休みつつ「動く」を大切にするスタイル
——仕事以外で大切にしていることはありますか。
今の楽しみは、バイクとバンド活動です。57歳で大型バイクの免許を取り、休みの日にはツーリングに出かけています。また、学生時代にやっていたバンド活動も続けています。そうした時間が、気持ちを切り替える大事な時間になっています。
——最後に、読者へのメッセージをお願いします。
独立してわかったのは、経営者は本当に孤独だということです。だからこそ、自分の中に一本筋を通しておくことが大事だと思います。途中で諦めたら、そこで終わってしまいます。
休んでもいいから、また動き出せばいい。動けば何か答えは出てくると思っています。どうせやるなら楽しく、そして仕事は一生懸命に。これからも止まらずに進んでいきたいです。