三代で受け継ぐりんご園を、次の時代へ。直販と発信で広げる幸作りんご園の挑戦

幸作りんご園 代表 佐藤 淳 氏

山形県朝日町でりんごづくりを営む幸作りんご園。祖父の代から続くりんご農家を三代目として受け継いだ佐藤氏は、おいしいりんごを育てる環境という地域の強みを土台にしながら、個人客への直販やWeb発信、働きやすい雇用の仕組みづくりにも力を入れてきました。農業を「続けられる仕事」にしていくために何を考え、どのように事業を整えてきたのか。これまでの歩みと今後の展望について伺いました。

三代でつないできた仕事を、次の世代へ渡していくために

——幸作りんご園の成り立ちと、現在の事業について教えてください。

私自身はいま、幸作りんご園の代表をしています。「幸作」は幸せを作ると書くのですが、父の名前です。私は佐藤ですが、祖父が戦後にりんご農家を始め、それを父が二代目として受け継ぎ、私が三代目として経営を担っています。幸作りんご園という屋号も父の代から使っているもので、そのまま受け継いでいる形です。

うちの仕事の中心は、生のりんごをりんごのまま販売することです。加工品としてジュースやジャムなども扱っていますが、売上全体で見ると中心はやはり生食用のりんごです。

販売先は個人のお客様への直販の割合が大きく、残りを業者さん向けに出荷しています。いまは個人のお客様への販売比率が年々上がってきていて、そこを今後も大切にしていきたいと考えています。

——幸作りんご園の強みは、どこにあると考えていますか。

まず大きいのは、私たちがりんごを作っている地域の環境です。同じ山形県内、同じ朝日町の中でも、標高、土の状態など、いろいろな条件が重なって、おいしいりんごができやすい土地だと思っています。

実際、お客様からも「ここで買っていたけれど、あなたのところのりんごを食べたらおいしかった」と言っていただくことが多いです。

そのうえで、私たちは不特定多数にただ出荷するのではなく、直接自社サイトで注文を受けたり、直売所に来ていただいたりと、できるだけお客様に近い形で販売してきました。

Google検索で見つけてもらえるように整えたり、InstagramやLINE公式アカウント、YouTubeなどで発信したり、パンフレットを商品に同梱したりと、接点を持った方が次の注文につながるような工夫も重ねています。

異業種での経験が、いまの販売力につながっている

——家業に入る前は、どのような仕事をされていたのですか。

私は最初から農業一本だったわけではなく、社会人になってから10年ほどは、小売業や中古車の買い取り・販売営業など、販売や営業に関わる仕事をしていました。その後、2011年に実家へ戻り、就農したという背景があります。

振り返ると、前職での経験は、いまのお客様との向き合い方や、商品をどう見せてどう届けるかを考えるうえでかなり生きていると思います。

——代表として大切にしていることは何でしょうか。

事業として続けていくには、収益面もきちんと成り立たなければなりません。農業は儲からないから継がせたくない、という話になってしまうと、次の世代にバトンが渡りません。果樹は植えてすぐ収穫できるものではなく、一人前になるまで長い時間がかかります。

いったん途切れてしまうと、ゼロから立ち上げた人は何年も収入がない状態になる。だからこそ、いま収入を生む木があり、畑があり、仕事として成り立っている状態で渡していくことが大事だと考えています。

身内に限らず、将来的に第三者承継も含めて、次に継ぎたいと思える形にしていきたいです。

適材適所の配置と柔軟な働き方が、現場を支える

——組織運営では、どのようなことを意識していますか。

うちは家族でいうと私と父が主に現場に出ていますが、作業全体を二人だけで回すのは難しいので、パートやアルバイトの方にも入っていただいています。人数としては15人くらいですが、全員が毎日フルタイムで働くわけではなく、4時間や5時間勤務、週3日勤務の方も多いです。フルタイム換算にすると5人くらいの規模感です。

働き方はかなり柔軟で、その人が働ける時間に合わせる形を取っています。子育て中の方なら保育園や学校の時間に合わせ、副業のある方なら空いた時間に入ってもらう。フルタイム前提にすると条件に合う人が限られてしまいますし、一人に負荷が集中すると、その人が休んだときの影響も大きくなります。

管理は大変になりますが、短時間勤務の方が複数いる体制のほうが、結果として安定しやすい面もあります。

——従業員の方とのコミュニケーションでは、何を大事にしていますか。

うちの場合、パートさんにお願いしているのは、屋外での作業や出荷作業、繁忙期の直売所対応など、現場の仕事が中心です。経営に対する意見を求めるというよりは、それぞれの人が力を発揮しやすい持ち場で、きちんと働けるようにすることが大事だと考えています。

そのために意識しているのは、適材適所です。作業には、細かい作業を長時間続けるものもあれば、力仕事に近いものもあります。

最近は直売所の運営もあるので、接客やレジ、商品の説明などが向いている方にお願いする場面もあります。採用時には前職やこれまでの経験を聞いて、この人にはどんな作業が合いそうかを考えますし、実際にしばらく働いてもらった後にも「どうですか」「慣れましたか」と声をかけながら調整しています。

苦手なことを無理に克服してもらうより、その人が無理なく力を出せる仕事に割り振ることのほうが、結果として効率も良くなると感じています。

また、子育て中の方が多いため、急なお休みに対応しやすいことも大事にしています。お子さんが熱を出して当日休まなければならない、ということもありますが、うちは誰かの代わりがいないと休めないという形ではないので、その点は働きやすいと言っていただくことがあります。

大きく広げるより、続けられる形を強くしていく

——今後、どのような会社にしていきたいと考えていますか。

経営面でいえば、きちんと収益が上がり、大きなアクシデントがない限りは無理なく続けていける形にしていきたいです。

そのためには、どこか一つの販路に頼り切るのではなく、個人のお客様への直販も確保しながら、条件の合う業者さんとの取引も続けていく必要があります。

業者さんとの取引は、一社なくなると売上への影響が大きいこともありますが、個人のお客様は大きく減少してしまうようなことは基本的にありません。少しずつ増えていく積み上げがあるので、時間はかかっても安定につながると考えています。

規模については、闇雲に大きくしたいわけではありません。面積も少しずつは増えていますが、何十倍にも拡大したいという考えではないです。規模を大きくすれば、その分だけ人件費やさまざまなコストも増えるので、質を高めて単価を上げていけたらと思います。

——これから特に挑戦していきたいことは何ですか。

ひとつは、農業の働き方にリズムを作ることです。農家は365日休みなく働くもの、というイメージがまだ強いと思います。私自身、子育てと両立するなかで、日曜日を休みにするようにしてきました。

最初は受け入れてもらいにくい面もありましたが、いまは少しずつ形になってきています。仕事は仕事、プライベートはプライベートとして、きちんと時間を取れる。農業でもそういう働き方ができるモデルにしていきたいです。

また、発信とブランディングを積み重ねていくことも続けたいと思っています。ホームページ、Instagram、LINE、YouTubeなど、いまある媒体を丁寧に運用しながら、検索したときに信頼感が伝わる状態を作り続けたいです。

Contact usお問い合わせ

    お問い合わせ内容
    氏名
    会社名

    ※会社・組織に属さない方は「個人」とお書きくだい

    役職

    ※会社・組織に属さない方は「一般」をお選びください

    メールアドレス
    電話番号
    どこでお知りになりましたか?
    お問い合わせ内容

    プライバシーポリシーに同意して内容を送信してください。