メンタルヘルスと介護支援で“働き続けられる社会”へ――LifeFactoryが描く支援のかたち
LifeFactory株式会社 代表取締役 西田 美香氏
医療・介護の現場で働く人々の負担は大きく、心身のケアが追いつかない状況が続いています。そうした課題に対し、現場の経験と専門性をもとに新たな支援の形を模索しているのがLifeFactory株式会社です。居宅介護支援事業と専門職支援を軸に、メンタルヘルスケアや介護相談の仕組みづくりに取り組む同社。本記事では、代表の西田美香氏に事業内容や起業の背景、今後の展望について伺いました。
目次
現場を知るからこそ見える課題と事業の原点
――現在の事業内容について教えてください。
事業は大きく二つあり、居宅介護支援事業と専門職支援を軸に展開しています。居宅介護支援では、介護保険制度に基づきケアプランを作成する仕事で、利用者一人ひとりに合ったサービスを組み立てています。いわゆる介護支援専門員(ケアマネージャー)としての業務です。
もう一つの柱である専門職支援では、医療・介護業界の方々に向けた研修やメンタルヘルス支援を行っています。看護師と心理師の資格を活かし、現場で働く人の心のケアに重点を置いています。
――メンタルヘルス支援を始めた背景を教えてください。
医療や介護の現場は、非常にストレスの大きい仕事です。実際に同僚がうつで退職する姿も見てきました。こうした状況を改善するためには、早い段階でのメンタルケアが必要だと感じています。
ただ、日本ではまだメンタルヘルスケアの必要性が十分に認識されていません。専門職ほど自分のケアを後回しにしがちで、結果として限界まで抱え込んでしまうケースが多いと感じています。そのため現在は、サービスの提供だけでなく、必要性を伝える啓発にも力を入れています。
「誰のための仕事か」から始まった起業の決断
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは雇われて働いていましたが、あるとき「これは誰のための仕事なのか」と疑問を持つようになりました。現場での評価が、直接関わる人ではなく、離れた場所の評価制度で決まっていくことに違和感を覚えたのです。
評価が点数化される中で、自分が何のために働いているのか分からなくなり、精神的にも限界を感じていました。相談できる環境もなく、このままでは仕事そのものが嫌いになってしまうと思い、退職を決意しました。
そこから「自分がやりたいことをやろう」と考え、自分の看板を持つ形で事業を立ち上げました。
――現在はお一人で経営されているとのことですが、どのように取り組まれていますか。
現在は一人で事業を行っています。そのためできることには限界がありますが、その分、柔軟に動ける強みもあります。一方で、広報や認知拡大などに十分な時間を割けない点は課題として感じています。
業界の構造変化と新たな支援モデルへの挑戦
――今後の展望について教えてください。
介護保険を軸としたケアマネージャーの仕事は、今後厳しくなっていくと感じています。特に一人で運営する形態では、収益面やサービスの多様性の面で限界があります。大規模法人が人材を確保し、質を高めていく流れの中で、個人での継続は難しくなるでしょう。
そのため、ケアマネージャー業務を軸にするのではなく、そこから派生した新たな事業を展開していく必要があると考えています。
具体的には、メンタルヘルス支援や、企業内での介護相談体制の構築に注力していきたいと考えています。例えば、従業員が働きながら介護について相談できる環境があれば、介護離職の防止につながります。
現在は、仕事を休まなければ専門職に相談できないケースが多く、それが離職の一因になっています。職場の中で気軽に相談できる仕組みを整えることが重要だと考えています。
――具体的にはどのような支援を想定されていますか。
企業の中に相談窓口を設置し、介護やメンタルヘルス、さらには子どもの発達に関する相談まで幅広く対応できる体制をつくることです。専門職が間に入ることで、課題の整理や適切な方向性の提示が可能になります。
ただし、この取り組みは効果の数値化が難しいという課題があります。どれだけ心が軽くなったか、どれだけ離職が防げたかを明確に示すことが難しく、導入のハードルになっています。それでも社会的な必要性は高く、時間をかけて広げていきたいと考えています。
一人ひとりの支援が社会につながる
――会社として大切にしている理念を教えてください。
一人ひとりの支援が社会につながるという考えを大切にしています。メンタルヘルスや介護離職の問題は個人の課題に見えますが、その人は企業に所属し、企業は社会の一部です。つまり、個人の支援は結果的に社会全体への貢献につながると考えています。
そのため、誰かの支えになれる仕事を続けていきたいという思いが、事業の軸になっています。
限られた時間の中でも学び続ける姿勢
――日々の過ごし方やリフレッシュ方法について教えてください。
現在はほとんど休みがなく、仕事と学業を並行しています。大学で心理分野を学び直しており、朝から授業を受けた後に仕事に向かう生活です。
まとまった休みはほとんどありませんが、空いた時間には仕事の準備を進めています。リフレッシュとしては、映画を観ることや、インストラクターとして関わっているフィットネスに参加して体を動かすことがあります。
誰もが気軽に相談できる社会へ
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
誰もが生き生きと働き続けられる社会を支えたいという思いで事業を行っています。メンタルヘルスや介護の悩みは誰にでも起こり得るものですが、身近に相談できる環境はまだ十分ではありません。
気軽に相談できる場所があるだけで、状況が大きく変わることもあります。何か困ったことがあれば、一人で抱え込まずに相談していただければ、力になれることもあると思います。
一人ひとりの支援が、社会全体をより良くしていく――その思いを大切に、これからも取り組んでいきます。