「わかる・できる・考える」を土台に、親子と学校をつなぐ。わでかくらぶが実践する“保護者支援”という教育のかたち

株式会社わでか 代表取締役 髙山 陽介 氏

教育事業として立ち上がった「わでかくらぶ」は、他の塾で断られた子どもや、保護者・学校が対応に悩むケースと向き合うなかで、少しずつ独自の役割を見いだしていきました。学習支援、保護者支援、保育士試験対策という三本柱を持つ髙山氏。現在も現場に根ざして活動を続ける背景には、どのような思いや経験があるのかを伺いました。

困っている親子の支援から見えてきた、会社の現在地

—―現在の事業について教えてください。

もともとは、教育業界で実績のある先生が作った教材の普及から始まりました。「わでか」という名前も、「わかる」「できる」「考える」の頭文字を取ったものです。

わかると面白くなり、できるようになると楽しくなり、考えることの面白さを身につけてほしい。そういう思いから、クラブ活動のように楽しく学べる場として立ち上げました。

ただ、実際に子どもたちと関わっていくなかで、最初に想定していたようなプリント中心の学習だけでは機能しない子がいることがわかりました。

読めない、書けない、座れない、落ち着かない。そういう子どもたちや、そのことで困っている保護者と出会い、そこで初めて発達障害という言葉とも向き合うことになりました。

—―大切にしている理念や視点は何でしょうか。

子どもだけを見ていても、本当の意味での支援にはならないと感じています。例えば、教室では落ち着いて過ごせるようになっても、家庭での関わり方や環境が変わらなければ、同じ困りごとが繰り返されてしまうことがあります。やはり土台は家庭ですし、その家庭を支えることが、子どもの支援に直結すると考えています。

一方で、保護者は家庭での関わり方に悩み、学校の先生も集団の中でどう対応すべきか迷っているという状況があります。みんな一生懸命にやっていて、誰も悪くない。それでも、少しずつベクトルがずれてしまうことで、うまくいかなくなる。だから私は、子どもの言葉をそのまま受け取るだけではなく、保護者の話も聞き、学校の状況も踏まえながら、三者の間に入って整理することを大事にしています。

営業職から教育の世界へ。経営者になったきっかけ

――教育の道に進まれたきっかけを教えてください。

私はもともと教育とはまったく関係のない仕事をしていました。金融やメーカーで営業職を続けていて、ずっと営業畑でした。ただ、リーマンショックや勤務先の経営破綻を経験するなかで、数字だけを追いかける価値観に疑問を持つようになったんです。

稼いだ方が偉いという世界で生きてきましたが、その数字の価値とは何だろうと考えるようになりました。そうした迷っていた時期に、いろいろな出会いがあったのです。その一人が学習塾の先生で、その先生の教材の販促を手伝うところから教育に関わるようになりました。

営業職だった自分にも何か貢献できることがあると思ったのが始まりです。その後、子どもたちと実際に接するようになり、教材の良さや学ぶことの面白さを強く感じ、自分でも新しい事業としてやってみようと考えるようになりました。

――印象的だった出来事や、考え方が変わった経験はありますか。

子どもたちの困りごとに直面したことです。当初は、良い教材と指導法があれば、ある程度はうまくいくと思っていました。でも、実際にはそれだけでは支えきれない子どもたちがいたんです。そこで、子どもだけでなく、保護者や学校の状況や関係性も含めて見て、三者それぞれの思いや状況を整理し、つなぎ直すことが必要だと気づきました。

もう一つ大きかったのは、以前に出会ったシンクタンクの代表の方から、人生哲学や経営哲学を教わったことです。損得ではなく、人のために動くことが大事だと教えられました。

人のためにやりたくてやることが、本当の意味での利他なんだということが腑に落ちてから、自然と行動が変わり、自分の仕事の向き合い方が変わりました。結果として、目の前の困っている人に向き合い続けたことが、今の仕事につながっていると思います。

本質を見ることから始まる、組織との向き合い方

――現在の組織体制について教えてください。

今は、学習指導にあたるアルバイトが2人います。保護者支援については、私が一人で担っています。そのほか、保育士講座の方では外注の形で関わっていただいたり、教材を作っている会社とタイアップしたりしています。合格した受講生が広報に関わってくれている部分もあります。

株式会社ではありますが、社員が増えているわけでもなく、まだまだ職人的な仕事だと感じています。人に任せられる形に十分できているわけではありませんし、忙しいのに儲からない仕事でもあります。

ただ、困っている親子の支援という性質上、合格実績のようなわかりやすい指標で広げていく事業ではないので、収益性や拡大のしやすさとは相反する現実として受け止めています。

――コミュニケーションで大事にしていることは何ですか。

子どもの言葉や行動といった表面に見える部分だけで判断せず、その背景にある意図や困り間などの本質に寄り添った関わりを大事にしています。子どもの話だけでなく、保護者の話も聞く。必ず立体的に見ることが大切だと、バイトの子たちにも伝えています。また、他人と比べるのではなく、その子の過去と今を見て、どう積み重ねてきたかを見ることも大切にしています。

また、どうしたいかだけでなく、その子がどう育ちたいのかを見ようとしています。まだ言葉になっていない部分も含めて、その人の本質を見ようとすると、見え方が変わってきます。これは子どもへの支援だけでなく、一緒に働く人との関わり方でも同じです。

支援を持続させるために、これから育てたい事業

――今後、力を入れていきたいことは何でしょうか。

大きく二つあります。一つは、保護者支援がもっと社会のなかで必要なものとして位置づけられていくことです。必要だという認識は広がってきていますが、まだ制度としても、予算としても十分ではありません。

学校にはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されるようになりましたが、保護者への支援はまだまだ足りていないと感じています。そのため、これまでも現場で保護者支援に取り組みながら、支援者同士のつながりや行政との連携も広げてきました。こうした取り組みを通じて、保護者支援が社会の中で当たり前に実装されていく流れをつくっていきたいと考えています。

もう一つは、保育士試験対策の事業です。これは、自分で保育士資格を取得した経験をもとに始まったもので、学習方法や対策を伝えたことで、周囲の方が実際に合格されたことがきっかけでした。限られた時間の中で合格点を確実に取るための戦略や、暗記ではなく問題の解き方にフォーカスした実践的な指導を行なっており、再現性の高い形で結果につながっているのが特徴です。

今では紹介が途切れず、年間売上の3割ほどを占める事業になっています。こちらは子どもや保護者への支援に比べて手がかからない面もあるので、うまく育てることができれば、子どもと保護者の支援を無理なく続けていく土台にもなります。

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

私は広報が得意ではなく、自分のことはどうしても後回しにしてしまいます。それでも、紹介を通じて少しずつ必要としていただけるようになり、今の形につながってきました。経済的にすぐ困る状況ではありませんが、発展性や継続性、人を育てていく仕組みづくりという意味では、まだ課題があると感じています。

だからこそ、今やっている支援の価値を、現場だけで終わらせず、必要としている人に届く仕組みとして広げていきたいと考えています。子どもを支えるには、家庭への支援が欠かせない。その実感をもとにこれまで取り組み続けてきました。保護者支援が個人の努力に依存するのではなく、社会の中で当たり前に機能する仕組みとして実装されていくことを目指しています。

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