幸せを届け、社会へ循環する菓子店経営の挑戦
株式会社ミラベル オーナーシェフ 十河 達造 氏
株式会社ミラベルは、1996年に創業した洋菓子店です。複数の店舗展開と閉店を経て、現在は大阪市東住吉区杭全の店舗で営業を続けています。オーナーシェフである十河達造氏は、洋菓子店やホテルの現場で経験を重ねたのちに独立し、自らの会社を立ち上げました。その背景には、単に店を経営するだけではなく、会社の利益を社会に還元し、働く人たちの将来や暮らしにもつながる仕組みをつくりたいという思いがありました。今回は、会社の歩みや経営に込めた思い、これから目指していきたい未来について伺いました。
循環を描いた創業の志
――現在の事業内容や創業の歩みについて教えてください。
創業は1996年6月8日で、この日に第1号店をOPENしました。その後、2003年に2号店、2006年に3号店として現在営業している東住吉区杭全の店舗兼工場を立ち上げました。その後2店舗は閉店し、現在は3号店のみが営業しています。
会社を作ろうと思った理由は、勤めている中で体調を崩したりすることがあり、「このままでは自分がなくなってしまうのではないか」と感じたことがきっかけでした。もともと、最終的には独立したい!という思いはありましたが、自分で会社をつくって何かできないかと考えるようになりました。私には当時から、社会の仕組みに対して疑問がありました。自分のつくった会社でゆくゆくは老後や自分の将来的なことをうまく循環できないか?と思ったのです。どういうことかと言いますと、会社を大きくしその利益を使って保養施設を作り、弊社で働いた人たちが将来的に安心して余生を過ごせるような場をつくれないかと考えていたのです。会社で得た利益をその施設の運営資金にあてがえ弊社で働いていた人以外にも多様な業種の方、例えばお医者さんや食材や資源を調達できる方、調理師・美容師・建築関係者・農業を営んでいた方などが一つの街に集まり、助け合いながら暮らしていける。”自給自足の年金”のような仕組みです。そんなシステムを作りたいと思い、会社を立ち上げましたが実際には思い描いたように簡単にはいきませんでした。
幸せを届ける仕事の本質
――経営者になられた経緯を教えてください。
私は1982年3月に日本調理専門学校を卒業しました。その後、数件の洋菓子店で経験を積み、1988年には大阪ヒルトン・インターナショナル(現:ヒルトン大阪)に入社、1991年守口プリンスホテル(現:ホテルアゴーラ大阪守口)に入社して1993年にはウエスティンホテル大阪の開業にともない入社し製菓料理長として仕事をしていました。
そして1996年に独立し、株式会社ミラベルを立ち上げました。
ホテルや洋菓子の現場で働く中では、技術だけでなく、仕事の進め方やお客様との向き合い方など、多くのことを学んできたと思います。実際に自分で会社を経営するようになってからは、働いているだけでは見えなかったこともたくさんありました。会社を運営するというのは、こんなことまでしなければならないのかと感じることも多く、経営者になって初めてわかる難しさがありました。
――仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
私たちの仕事は人に幸せと笑顔を与え、喜びを感じてもらえるような良い仕事です。非常にやりがいはありますが、一から手作りでやらなければならないと言うのが製品になるまでの努力や労働力と現在の基本的人権との間でなかなか歯車が合わないところです。 しかし上手くやれば価値や、幸せを与えられる仕事であると思っています。
働く姿勢が未来を変える
――組織運営で意識していることを教えてください。
現在はパートさんのみですが、以前は飲み会や小旅行など企画してコミュニケーションをとっていました。
――社員に求める姿勢はどのようなものですか。
特にやる気や夢のある方です。やる気、根性、そして将来に明るい希望を持ち、「自分」というものを持っている人と一緒に働きたいです。
私たちの仕事はとても特殊で、職人さんを育てないといけません。今の若い方達を見ていると、自分が若かった時と比べても意欲がなかったり、目標を持っていなかったり、ただただ給料をもらって、あとは余暇を楽しむという、(特にそれが悪いとは思っていませんが)そんな方がどんどん増えているのかな?と感じています。もちろん、私たちの時代にもそういう人がいましたが、年々増えている印象はありますね。
焼き菓子で広げる未来
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
今後は、焼き菓子の分野にもっと力を入れていきたいと考えています。もともと自分自身は焼き菓子系のほうが得意で、その強みをもっと伸ばしたい思いがあります。生のケーキは販売の面で難しいところもありますが、焼き菓子であれば広げていける可能性があります。
現在、商品の評価に関わる取り組みにも挑戦しており、フードアナリスト協会主催の「ジャパンフードセレクション」という、フードアナリストが審査を行う認定制度に推薦ノミネートを受けて応募しているものもあります。そうした機会も活かしながら、焼き菓子や別注文関係の展開に力を入れ、今後はもう少し販路を広げていきたいと考えています。
全国展開が必要となれば、事務の方も必要となります。私は昔の職人気質なところで、圧をかけられて育ったところがあって、会社設立当初は朝から晩まで働くのが当たり前みたいな考えがありましたが、今はそういう時代ではありません。人の生活基盤として働く場を提供していかないといけないと思っています。「会社は社会貢献の場である」と設立当初考えておりましたが、雇用を広げ、雇用されている人が幸せに生活ができる、そういった部分で社会や世の中のためになっていければ良いと思っています。
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
外に出かけて何かをするというのはあまり得意ではないです。今、ハマっているのは、ミニチュアハウスを作ることです。小さなお店を組み立てるキットみたいなもので、時間がある時に行っています。
あとは、映画ですね。NetflixやAmazonプライムで観ています。