「一次産業×先端技術」で社会課題に挑む――持続可能なまちづくりを実現するFDSの革新
株式会社FDS 代表取締役 五十嵐 優樹氏
気候変動や災害の増加、国際情勢の不安定化などにより、日本の食料や水を取り巻く環境は大きく変化しています。そうしたなか、「人が生きるために必要な資源をいかに安定的に確保するか」という問いに真正面から向き合い、革新的なソリューションを提供しているのが株式会社FDSです。本記事では、代表の五十嵐優樹氏に、先端技術を組み合わせて持続可能なまちづくりを実現しようとする同社の取り組みや起業の背景、今後の展望などについて伺いました。
持続可能な社会を支える事業モデル
――現在の事業内容について教えてください。
当社では、植物工場や空気から水を生成する装置といったような、先進技術を活用して水と食料を安定的に確保できる仕組みを提供しています。
現在、日本を取り巻く環境は、農業や防災の観点から見ても非常に厳しさを増しているのが実情です。気候変動による影響や災害の頻発、さらには国際問題による供給リスクなど、さまざまな課題が顕在化しています。
そのなかで当社は、人が生きていくうえで不可欠な「水」と「食料」を自ら生み出せる環境を構築することで、持続可能なまちづくりの実現を目指しています。
――他社にはない強みはどのような点にありますか。
一般的な植物工場は、水や電気といったインフラが前提となっています。しかし当社は、それらが止まった場合でも稼働できる仕組みを提供可能です。空気から水を作る装置や発電・蓄電設備、生ゴミ処理機などを組み合わせることで、インフラに依存しない自立型の生産環境を実現しています。
さらに、人工土壌の技術を活用することで、葉物野菜だけでなく根菜や果物、米といった多様な作物が生産できます。農業の枠を超え、医療や教育、防災、観光といった幅広い分野に展開できる点も特徴の一つです。
官僚から起業へ――原体験が生んだ使命感
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
私はもともと農林水産省に勤務しており、食料安全保障や気候変動といった国家レベルの課題に携わっていました。その後、イスラエルやパレスチナに関わる業務に従事し、現地での経験が大きな転機となりました。
イスラエルではスタートアップが盛んで、高校生でも起業する文化があります。さらに国が積極的に支援する環境も整っており、新しい挑戦がしやすい土壌がありました。そうした環境に触れるなかで、自分自身も社会課題の解決に直接関わる事業を立ち上げたいと考えるようになりました。
また、パレスチナではインフラ整備や食料供給の課題に直面し、技術によって人々の生活を支える重要性を実感しました。これらの経験が、現在の事業の原点となっています。
――なぜ農業分野に着目されたのでしょうか。
「AIが進化する時代においてもなくならない産業は何か」と考えたときに、一次産業に行き着きました。特に日本は食料自給率が低く、これが有事の際には大きなリスクとなりかねません。
もし物流が止まれば、これまで当たり前に手に入っていた食料が手に入らなくなる可能性があります。そうした事態に備えるためにも、自給できる仕組みを社会に実装する必要があると考えました。
――経営者としてのターニングポイントを教えてください。
1つ目の転機は、創業1年目の終盤のころです。当初は私自身が生産管理と営業の両方を担い、生産の実務はパートスタッフで運営していました。しかしこの体制では、私がどちらかの業務に注力すると、もう一方の業務が滞るという課題があったんです。
そこで正社員を採用し、工場運営を任せる体制に切り替えました。その結果、生産と営業の両立が可能となり、事業の基盤が安定しました。
2つ目の転機は、創業3年目ころに、野菜の生産販売だけでは収益の限界があると感じたときです。植物工場に対する誤解やネガティブなイメージもあり、価値が十分に伝わらないという課題もありました。
しかしそうしたタイミングで、体験型施設との連携が生まれました。栽培システムそのものを販売・リースする方向へと転換したことで、単なる農産物販売から、仕組みそのものを提供するビジネスへと進化し、事業の拡張性が大きく高まりました。
社会実装に向けた課題と、グローバル・宇宙へと広がる未来構想
――現在の課題は何ですか。
1つは、自治体への導入です。自治体では企業と比べて予算面の制約が大きいため、導入のハードルが高い状況にあります。
もう1つは、システムの量産化です。現在は受注生産が中心のため、納品までに時間がかかるという点が課題となっています。今後は量産体制を整え、より迅速に提供できる仕組みを構築していく必要があります。
――どのように事業を拡大していく想定ですか。
まずはBtoBで実績を積み、ブランド力を高めていくつもりです。そのうえで富裕層向け市場に展開し、最終的には自治体や公共領域へと広げていく想定でいます。
すでに飲食店やカーディーラー、商業施設などへの導入が進んでおり、これらの実績を基盤にさらなる展開を目指しています。また、展示会や商談会を活用し、意思決定者との接点を増やすことも重要です。
――今後の展望についてお聞かせください。
3年後には現在の売上の100倍といった規模を目指しています。さらに5年以内には、IPO(新規公開株式)も視野に入れています。
さらにその先に見据えているのは、海外展開の加速です。そして最終的には、宇宙事業への参入も考えています。宇宙空間でも食料を生産できる仕組みを構築することで、新たな価値創出につなげていければと思っています。
また、植物由来の成分を活用した健康分野への応用や、ペットと共生する社会の実現など、新たな領域への展開も進めています。
挑戦を続けることで未来を切り拓く
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
自分が限界だと感じたときこそ、諦めずにやり続けることが大切です。強い想いを持ち続けることで、困難な状況でも前に進めます。
すぐに成果が出るわけではありませんが、地道に積み重ねていくことで、応援してくれる人や仲間が増えていくでしょう。私は、挑戦を続けることが、未来を切り拓く力になると信じています。