テクノロジーへの恩返しから生まれた広告のかたち――スタートアップ支援に懸けるアルチの想い
合同会社アルチ 代表 森谷 盛広氏
合同会社アルチは、広告制作を軸にスタートアップやベンチャー企業の成長支援を行う企業です。代表の森谷盛広氏は、CMディレクターとして長年第一線で活躍してきた経験をもとに、テクノロジーの進化とともに歩んできたキャリアを背景に独立し、自身が受けてきた恩を次の世代へとつなぐべく、新たな挑戦として会社を立ち上げました。本記事では、事業の成り立ちや経営に対する考え方、これからの展望などについて伺いました。
テクノロジーの進化とともに
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
当社は広告制作会社として、主にスタートアップやベンチャー企業の支援を行っています。私自身はもともとCMディレクターとして活動しており、現在もその仕事を続けながら事業を展開しています。
キャリアの出発点となったのは、20代の頃に起きたテクノロジーの大きな変化です。AppleのMacintoshや映像編集ソフトの登場によって、それまで専門的な環境がなければできなかった映像制作が、パソコン一台で可能になりました。会社に所属せずとも自分の力で映像を制作できる時代が到来したことは、私自身の進路に大きな影響を与えました。
この技術革新をきっかけに、独自に学びながら映像制作のスキルを磨いてきました。その後、インターネットの普及やIT革命の流れのなかで、ベンチャー企業に関わる機会も増えていきました。そうした環境のもとで広告に携わり続け、現在に至るまで約20年以上にわたり業界で経験を積んできました。
これまでの経験を踏まえ、現在は広告という手段を通じて、成長途上にある企業の支援を行っています。特にスタートアップや中小企業など、これから伸びていく可能性を持つ企業に対して、広告の力で価値を届けていきたいと考えています。
――事業立ち上げの背景にある想いについて教えてください。
「恩返しをしたい」という想いです。これまでのキャリアは、AppleやAdobeといったテクノロジー企業の存在があったからこそ成り立ってきました。彼らが提供してきた技術や環境が、私の仕事の幅を広げてくれたと感じています。
また、過去に関わってきたベンチャー企業での経験も、私の成長に大きく寄与しました。そうした数々の経験を振り返るうちに、「社会は循環しているものだ」と実感するようになりました。自分が受け取ってきた価値を、次は誰かに返していく――その循環の一端を担いたいという想いが、会社設立の原動力となりました。
現在は、これから成長していく企業に対して広告という形で支援を行うことで、その循環を実現していきたいと考えています。単なる制作にとどまらず、企業の成長に寄り添う存在でありたいという意識で事業に取り組んでいます。
キャリアの転機がもたらした視点の広がり
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
法人という形を取ることで新たなつながりや機会が生まれ、より多くの企業と関わることができると感じたことがきっかけです。
以前は個人事業主として活動していましたが、個人での活動では、どうしても信頼という面で限界がありました。そのため、法人化することで企業との関係性をより強固にし、仕事の幅を広げていきたいと考えました。
――これまでのキャリアで印象的な転機はありますか。
大きな転機の一つは、若いころに映像編集ソフトが登場し、自分で映像制作ができるようになったことです。さらに、30歳のころにブラジルへ渡り、サッカーのドキュメンタリー制作に携わった経験も大きな転機でした。現地のスタッフとともに制作を行うなかで、文化や価値観の違いを強く実感しました。
この経験からは、「自分がよいと感じるものが必ずしも他者にとってもよいとは限らない」ということを学びました。視聴者や消費者の感じ方は多様であり、広告は一方向的に届くものではありません。時には、予想外の反応が生まれることもあります。
だからこそ、常に謙虚な姿勢で制作に向き合うことが重要だと考えています。広い視点を持ち、多様な価値観を受け入れることが、広告の質を高めることにつながると感じています。
理念を主軸に据えて――経営者としての視点
――経営判断の軸となる価値観について教えてください。
経営の軸となっているのは、「世界に通用するスタートアップやベンチャー企業を1社でも生み出したい」という理念です。この想いが、すべての判断の基準になっています。
日々の意思決定においても、この理念に立ち返りながら判断しています。目の前の利益だけではなく、支援する企業の成長にどれだけ寄与できるかが重要です。この価値観をぶれずに持ち続けることが、経営において最も大切だと考えています。
――採用や組織づくりについてはどのようにお考えですか。
現在は一人で事業を行っていますが、今後もし仲間を増やす場合には、理念に共感してくれる人と一緒に働きたいと考えています。
私が会社を立ち上げた背景には明確な想いがあるため、その想いに共感してもらえるかどうかが非常に重要です。単にスキルがあるだけではなく、同じ方向を向いて取り組めるかどうかが、長くよい関係を築くうえで欠かせない要素だと考えています。
――将来的にはどのような組織を目指していますか。
現時点では、大きな組織を目指しているわけではありません。無理に規模を拡大するのではなく、適切な規模で質の高い仕事を継続していくことを重視しています。規模よりも中身を大切にし、一つひとつの仕事にていねいに向き合うことで、価値を提供していきたいです。
AI時代に向けた挑戦
――今後の展望や取り組みについて教えてください。
現在、AIの登場によって業界は大きな変化の渦中にあります。新しい技術に伴い、これまでにないサービスや表現の可能性が広がっています。
こうした変化に対応していくためには、私自身も学び続ける必要があると感じており、その一環として、大学での学び直しも検討しているところです。新しい知識を取り入れながら、時代に取り残されないようにしていきたいと考えています。
一方で、「ものをつくる」という本質的な価値は、時代が変わっても変わらないものだと感じています。いくら技術が進化したとしても、最終的に価値を生み出すのは人の創造力です。だからこそ、普遍的なものづくりの価値と時代の変化をうまく融合させながら、事業を展開していきたいと思います。