答えを先に描き、実現への道を探る――株式会社LUNA STELLAが貫く「相手優先」のエンターテインメント
株式会社LUNA STELLA 代表取締役社長 小幡 悌弘氏
株式会社LUNASTELLAは、マジックバーの店舗運営を軸に、マジシャンの派遣、さらに舞台やライブにおけるマジック演出まで手がける会社です。一般的な飲食店とは異なり、食事や接客に加えて「マジックを体験する場」を提供している点に大きな特徴があります。小幡悌弘氏は、エンターテインメントの世界に身を置いてきた経験をもとに、自らの店を守り続けることを大切にしながら、目の前の相手が何を求めているかを最優先に考える姿勢を貫いてきました。本記事では、現在の事業内容や創業までの歩み、経営に対する考え方、そして今後につながるメッセージについて伺いました。
目次
相手が求めるものを優先する事業づくり
――現在の事業内容について教えてください。
事業の柱は大きく二つあります。一つは店舗事業で、マジックバーという形の店を運営しています。普通の飲食店ではなく、食事やお酒とともにマジックを見せる、少し特殊な飲食店です。
もう一つはマジシャンの派遣で、忘年会や新年会などの場に出演する仕事です。実際には自分が行くことが多いですが、そうしたイベント出演も大きな柱になっています。
三本目の柱といえるのが演出の仕事です。自分が出演するのではなく、舞台やタレントのライブなどで使われるマジック演出を考えたり、その仕掛けをつくったりしています。誰かが消えるような演出に関わることもあります。
――会社として大切にしている考え方を教えてください。
会社として強く意識しているのは、自分の信念や「こうしたい」という思いを優先するのではなく、相手が何をしてほしいのかを先に考えることです。企業理念を強く掲げること自体には、少し慎重な考えを持っています。理念が強すぎると、相手の希望よりも自分たちの考えを優先してしまうことがあるからです。
もちろん理念を明確に持っている会社を否定しているわけではありません。ただ、自分としては、まず相手の立場に立ち、その人が何を望んでいるのかを考えることを重視しています。その姿勢が、店づくりにも、仕事の受け方にも表れていると思います。
エンターテインメントの世界で見つけた自分の道
――マジックの世界に入ったきっかけを教えてください。
もともとはショーパブで働いていて、ダンサーとして踊った後に接客もする仕事をしていました。接客の場面もありましたが、自分はその中で特別指名が多いわけではなく、どうすればお客様にもっと喜んでもらえるかを考えていました。そこで、玩具のマジック道具を買って試してみたところ、反応がとても良かったんです。
そこから少しずつ練習を重ねていくと、指名も増えていきました。最初は一日に一組、二組だったものが、もっと多くいただけるようになり、自分の進む道はここにあるのではないかと感じるようになりました。ダンスをしながらマジックにも力を入れ、やがてマジックを軸にした店を持つ方向へ進んでいきました。
――独立や店を持つことは、どのように決まったのでしょうか。
最初から自分ひとりで「起業しよう」と決めていたわけではありません。はじめは出資者がいて、「店をやらないか」と声をかけてもらったことがきっかけでした。自分で資金を出して始めるわけではなかったので、その段階では大きな勇気が必要だったという感覚はありませんでした。
ただ、その後に状況が変わりました。出資者側の事情によって事業の継続が難しくなり、店を買い取るか、自分の仕事そのものがなくなるか、という選択を迫られたのです。自分にとって、せっかく見つけたこの仕事がなくなるのは困る。その思いから、買い取る道を選びました。振り返れば、自分の人生はそうした出来事の積み重ねでできているのだと感じます。
夢を叶えた先にあるのは、店を守り続けること
――今後の事業展開や目標については、どのように考えていますか。
大きく事業を広げたいとか、何店舗も展開したいといった目標は、実はあまり持っていません。自分にとって一番の夢はすでに「自分の店を持つこと」で実現していて、その先にある最大のテーマは、その店をなくさずに続けていくことです。
ただ、続けるためには現状維持だけでは足りません。同じことを続けているだけでは、どんな仕事でも続かなくなるからです。だからこそ、接客の技術を磨き続けますし、新しいマジックも考えます。
時代の変化に合わせて、新しい情報収集や研究も行いながら、店を維持するために必要な挑戦を重ねています。何か別の大きな目標があるというより、店を続けるために今できることを更新し続ける感覚です。
お客様の特別な瞬間を、より特別なものにする
――印象に残っているお客様とのエピソードを教えてください。
印象的だったのは、お客様のプロポーズのお手伝いをしたときです。こちらが目立ってしまっては意味がないので、あくまで主役はプロポーズをするお客様です。そのため、最初にこちらがマジックショーを行い、その流れの中で「今日はスペシャルゲストがいます」という演出を入れました。
カーテンが開くと、さっきまで隣にいたはずの男性がステージに立っていて、そこでマジックを披露し、最後に指輪を出してプロポーズする構成にしたのです。そのために一週間ほどかけて練習を重ねました。
ここでも大事なのは、自分たちが見せたいマジックではなく、そのお客様がどうすれば一番喜んでくれるかを考えることです。相手の立場に立つという考え方は、こうした場面でも変わりません。
――仕事を続ける中で難しさを感じることはありますか。
一番大きいのはマンネリです。お客様ごとに内容は変えていますが、こちらが演じるマジックには限りがあります。同じことを長く続けていると、どうしても慣れや飽きが出てきます。実際、2年目、3年目くらいのときに、その壁にぶつかりました。
そこで、自分の中で毎日の目標設定を細かく変えるようにしました。立ち位置をどうするか、使い終わった道具をどこに置くと一番きれいに見えるか、同じ演目でも一つひとつの所作にテーマを持たせるのです。売上面で大きく苦しんだというよりも、このマンネリとの向き合い方が、長く続ける上で最も大きな課題だったと感じています。
目標に「無理」は置かないという考え方
――経営者として大切にしている考え方を教えてください。
マジックは、ある意味で数学的な発想に近いと思っています。先に答えを置いて、そこにどうやってたどり着くかを考えるんです。たとえば「東京タワーを消したい」となったときに、まず「それは無理だ」と言って終わらせるのではなく、どうすれば実現できるのかを考える。予算の問題なのか、技術の問題なのか、人の問題なのか。できない理由を明確にして、解決方法を探っていくわけです。
経営でも同じで、目標に対して最初から「無理だろう」と思ってしまうと、その先の具体策は生まれません。だからこそ、まず答えを置き、そのうえで「どうすればそこへ行けるか」を徹底的に考えることが大切だと思っています。最終的に目標そのものの形が変わることはあっても、その過程で見える課題や必要な要素は必ずあるはずです。
まずは「できる」という前提に立つこと。そのうえで、どうすれば実現できるのかを具体的に考え、行動していくことが重要です。そうやって目標に向き合えば、思い描いた未来に近づいていけるのではないかと思います。