日本文化の“本質的な体験”を世界へ――マイパル株式会社が描くインバウンドの新たな価値
マイパル株式会社 代表取締役 長野京子氏
マイパル株式会社は、訪日外国人向けに日本文化の体験サービスを提供するインバウンド事業を中心に展開しています。単なる観光ではなく、「本当の日本」を体験してもらうことを重視し、文化体験や専門性の高いガイドサービスを通じて独自の価値を提供している点が特徴です。また、海外メディアとの連携による取材支援など、多角的な取り組みも進めています。本記事では、代表取締役の長野京子氏に、事業の背景や理念、組織運営、そして今後の展望について伺いました。
目次
日本文化を“友達のように”伝えるインバウンド事業
――現在の事業内容や特徴について教えてください。
現在は旅行サービス手配業として、富裕層インバウンド向け事業を中心に行っています。それに加えて、海外メディアとの協業も進めており、例えばディスカバリーチャンネルやシンガポールの国営放送などと連携し、日本国内の取材やニュース素材の提供なども行っています。とはいえ、事業の軸はあくまでインバウンド領域にあります。
――事業を始めたきっかけや想いについて教えてください。
会社名の「マイパル」は、「友達のようにフレンドリーなサービスを提供したい」という想いから名付けました。私は海外生活が長かったのですが、現地で多くの外国人から日本文化について質問される機会があり、日本の魅力を改めて実感しました。
その経験から、日本を訪れる外国人に対して、友達のような距離感で文化を紹介できたらいいと考え、この事業を始めました。当初は、日本文化の先生方の中でも英語対応に課題を感じている方をサポートし、体験コンテンツをプラットフォームに掲載するところからスタートしました。
――理念やビジョンについて教えてください。
観光地を巡るだけでなく、「本当の日本」を知ってほしいという想いがあります。例えば、伝統文化の教室や、普段は予約が取りづらい寿司店でのワークショップなど、プロの技術に触れられる体験を提供しています。単なる観光ではなく、日本の文化や生活に深く入り込む体験こそが価値だと考えています。
海外経験から生まれた起業と価値観
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
会社自体はコロナ前に設立しましたが、きっかけは2020年の東京オリンピックです。海外生活の中で日本文化への関心の高さを感じていたこともあり、日本に帰国後は文化に関わる事業をやりたいと考えていました。2018年頃から準備を進め、オリンピックに向けて起業しました。
――実現したい目標について教えてください。
外国人だけでなく、日本人自身にも日本文化の価値を再認識してほしいと思っています。日本には素晴らしい文化が数多く存在しますが、それに気づいていない人も多いと感じています。
海外にいたからこそ見えた日本の良さを、より多くの人に伝え、日本を好きになってもらいたいと考えています。
――経営判断の軸となる価値観は何でしょうか。
最初は本当に小さなことから始めました。コネクションもない中で、自分にできることを積み重ねるしかなかったんです。
周囲の文化講師の方々と話す中で、英語対応に課題があることに気づき、マニュアル作成や実践を通じて支援しました。その結果、ゼロからスタートした講師が1ヶ月で200人を集める人気コンテンツになったこともあります。
こうした経験から、小さな取り組みでも積み重ねることの重要性を強く実感しました。また、日常の会話や人との関わりの中にビジネスの種があるとも感じています。
柔軟な組織運営とコミュニケーション重視の人材観
――組織体制について教えてください。
現在は社員を多く抱える形ではなく、業務委託を中心に運営しています。ガイドや手配担当など約20名と連携し、外注ベースで事業を回しています。その中でキーパーソンとなる人材が1名おり、通訳案内士のスケジュール管理や業務の割り振りを担っています。
――組織運営で工夫されている点はありますか。
柔軟な働き方を重視しています。例えば、フルタイムで働けない方でも、空き時間でコミュニケーション業務を担っていただくなど、多様な人材が関われる仕組みにしています。インバウンドの予約は数ヶ月先になることが多いため、時間的な余裕を持って対応できる体制が適していると考えています。
――採用で重視するポイントは何でしょうか。
最も重要なのはコミュニケーション能力です。メールだけでは伝わらない部分も多いため、相手の意図を正確に汲み取り、円滑に調整できる人が求められます。多様な関係者と連携する中で、状況を理解しながら調整できる力が非常に重要だと感じています。
専門性と地域拡張で広がるインバウンドの可能性
――今後の展望について教えてください。
現在は東京都内が中心ですが、今後は神奈川や郊外エリアにも展開していきたいと考えています。地方にも魅力的なコンテンツが多く存在しており、それを発掘し提供していきたいです。
また、インバウンド需要自体は今後も伸びると感じています。
――現在の課題と取り組みについて教えてください。
富裕層向けのサービスが多いため、より専門性の高いガイドの確保が課題です。例えば、食や酒、自然など特定分野に精通したガイドは非常に価値が高く、顧客満足度にも直結します。
リピーターが増える中で、より深い体験や専門的なニーズに応えられる体制づくりが重要になっています。
――業界の今後についてどのように見ていますか。
今後はリピーター向けのコンテンツがより重要になると考えています。初回は定番観光地でも、2回目以降はよりローカルで深い体験を求める傾向が強まっています。そのため、地方やニッチなテーマに対応したコンテンツ開発が鍵になると思います。
人とのつながりが生む価値とこれからの想い
――大切にしている価値観について教えてください。
人に親切にすることを大切にしています。一見ビジネスに直接つながらないことでも、長期的には信頼関係となり、新たな機会を生むことがあります。実際に、過去にサポートした方から仕事を紹介していただいた経験もありました。短期的な利益だけでなく、長い目で人との関係を築くことを意識しています。
――リフレッシュ方法について教えてください。
アメリカ人の友人たちとガーデン巡りをすることがあります。季節ごとの庭園を訪れることで気分転換になっています。
日本文化の魅力は、まだ十分に知られていない部分が多くあります。それを丁寧に掘り起こし、国内外の人々に届けていくことが、この事業の本質だと感じています。これからも“本当の日本”を伝える体験を通じて、多くの人に新たな発見を提供していきたいと考えています。