介護の枠を超え、「人生を楽しむ場」を創る。24時間自由と安心が共存する理想の住まい
合同会社GLAD Life Create 代表取締役 砂川 明彦氏
高齢者施設と聞くと、多くの人が「制限の多い生活」を連想するかもしれません。しかし、福岡県で有料老人ホームを運営する合同会社GLAD Life Createは、そんな固定観念を鮮やかに覆しています。代表の砂川明彦氏が掲げるビジョンは、「介護施設を運営すること」ではなく、「高齢者が生活を楽しく過ごせる場所を創ること」。
同社の施設では、一般的な施設では敬遠されがちな飲酒や喫煙、自由な外出が、家族の同意を前提に認められています。スタッフが24時間常駐する安心感はそのままに、パチンコに出かけたり、数年に一度は皆で温泉旅行を楽しんだりと、入居者は「一人の人間」としての尊厳と自由を謳歌しています。
母が営むグループホームでの修業時代を経て、「理想の施設が世の中にないのなら、自分で創るしかない」と決意し、独立。一軒家を活用したアットホームな環境で、認知症ケアの常識を変えようとする砂川氏。その挑戦は今、入居者が社会と繋がり、働く喜びを感じられる「レストラン」の創設、さらには若き芸術家と共生する「村づくり」へと、壮大なスケールで広がり続けています。
介護の常識を覆す「自由度」と「安心」の共存
——御社の事業内容と、他の有料老人ホームにはない強みについて教えてください。
私たちは有料老人ホームを運営していますが、入居者様を「管理」するのではなく、いかに「余生を楽しんでもらうか」を最優先にしています。最大の特徴は、圧倒的な自由度の高さです。多くの施設では制限されがちな飲酒や喫煙も、ご家族の了解があれば可能ですし、お一人での外出やパチンコ、外食なども自由です。
もちろん、24時間体制で介護スタッフが常駐しており、施設としての安心感は担保した上での自由です。数年に一度は、大分県などの温泉地へ1泊2日の旅行に出かけることもあります。「施設に入ったから何もできなくなる」のではなく、これまでの生活の延長線上で、より楽しく、自分らしく過ごせる場所であることを大切にしています。
最近では、介護業界のミシュランを目指している「介護施設アワード」の第8回に、当社の旅行などの取り組みが面白いとノミネートされました。
後悔しないために選んだ独立
——介護の世界に入られたきっかけと、独立に至るまでの背景をお聞かせください。
母がグループホームを立ち上げた際、「手伝ってくれ」と言われたのが始まりです。そこで13、4年、主に認知症の方々のケアに携わりました。当時、交流会などで「こんな施設があったらいいよね」と理想を語り合う機会が多くありました。周りには経験豊富で優秀な人がたくさんいたので、「誰かがいつか理想の施設を作ってくれるだろう」と他人任せにしていたんです。
しかし、10年経ってもそんな施設はどこにも現れませんでした。母の会社を出るタイミングで、「それなら自分でやるしかない」と。当時は独身でしたし、「やらずに後悔するより、やって後悔しよう」と腹をくくりました。資金も400万円ほどしかありませんでしたが、一軒家を借りる「賃貸スタイル」なら初期費用を抑えられると考え、普通のお家で普通に近い生活ができる今の形に辿り着きました。
認知症になっても「働く喜び」を、
——今後取り組んでいきたい新しい挑戦について、詳しく教えていただけますか。
目下の目標は、入居者様が「働ける場所」を作ることです。具体的には、認知症の方がウェイターとして働く「ご飯屋さん」の創設を考えています。年金だけでは施設費用が足りない方が、自ら働いて補填できる仕組みを作りたい。それ以上に、社会と関わり、誰かに必要とされる「やりがい」こそが、高齢者の方々の活力になると信じています。
その先には、高齢者だけでなく、若き芸術家たちが安価で住めるシェアハウスなども含めた「村(コミュニティ)」を作りたいという構想があります。若者がワークショップを開き、高齢者がそれを見て刺激を受ける。車椅子の方でも、施設で作った加工食品を店頭で販売して小遣い稼ぎができる。そんな、世代を超えて自由に出歩き、人生を謳歌できる「町」を自力で作り上げることが私の最終的な目標です。
判断に迷ったら「原点」に立ち返る
——これから起業を目指す方や、同業の経営者に向けてメッセージをお願いします。
私自身、大した経営者ではありませんが、一つお伝えできるとすれば「なぜ起業したのか」という原点を忘れないでほしいということです。介護業界は法改正で報酬が削られるなど、厳しい判断を迫られる場面が多々あります。「収益を確保するために人件費を削るか、理想のサービスを守るか」。そこで多くの人が収益を取ってしまい、本来やりたかった形を失っていくのを見てきました。
私は、「やりたいことができないなら、潔く会社を畳んだ方がいい」とさえ思っています。利用者様に楽しんでもらうために人を配置し、そのために利益をどう出すかを考える。困難な状況になっても、最初の志を持ち続けることができれば、世の中にもっと良い施設が増えていくはずです。