独居高齢者の不安を解消し、誰もが最期まで安心して暮らせる世の中へ

一般社団法人献身会 代表理事/行政書士 山下博正氏

日本の高齢化が進む中、家族の支援を受けられない「頼れる身寄りのない高齢者」の増加は深刻な社会課題となっています。病院への入院や施設への入居に際して求められることが多い「身元保証人」。この役割を家族に代わって担い、日常生活の支援から死後の事務手続きまでを一貫してサポートしているのが、一般社団法人献身会です。

代表理事の山下博正氏は、行政書士として成年後見制度に携わる中で、制度だけでは支援が行き届かない現場の課題に直面し、13年前に同会を設立しました。高齢者等終身サポート事業の健全な発展を図るべく、業界団体である一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会の設立幹事会社に就任し、認証制度の構築にも尽力しています。単なるビジネスを超え、社会的インフラとしての使命感を胸に走り続ける山下氏に、事業の原点とこれからの展望を伺いました。

成年後見だけでは守れない「生活の現場」を支える

——まずは、一般社団法人献身会が展開されている事業の内容について詳しく教えてください。

私たちは一言で申し上げますと「高齢者等終身サポート事業」を行っています。具体的には、身寄りのない方や家族による支援が期待できない高齢者・障がい者の方々に対して、入院や施設入居時の「身元保証」、日常生活の金銭管理や通院同行といった「生活支援」、そして亡くなった後の葬儀や家財整理を行う「死後事務」などを総合的に提供しています。

——なぜ、行政書士という専門職でありながら、あえてこの事業を立ち上げられたのでしょうか。

もともと行政書士として成年後見制度に関わっていました。しかし、実際に現場を回っていると、後見制度という「法的な枠組み」だけでは支援しきれない分野があることに気づいたのです。後見人は主に財産管理を行いますが、入院時の保証人になったり、日々の細かな買い物や生活の困りごとに即座に対応したりする役割は、制度上、手薄になりがちです。

こうした「日常生活支援」や「身元保証」の分野を民間の立場でしっかりサポートすることで、より手厚い支援ができるのではないか。そう考えたのが13年前の設立のきっかけです。当時はまだこうした事業を行う先駆者が少なく、誰もやらないのであれば自分がやるしかないという使命感もありました。

ルール作りと行政・医療との強固な連携

——高齢者等終身サポート事業は、最近でこそ認知され始めましたが、課題も多いと伺っています。

おっしゃる通りです。この業界は、まだ一般の方から見れば「うさんくさい」というイメージを持たれがちです。実際に、高齢者の弱みに付け込んで高額な寄付を強いたり、預かり金を悪用したりする悪徳業者が存在することも事実です。国からはガイドラインが出ていますが、あくまで目安であり、法的な強制力や監督官庁がない「野放し状態」と言っても過言ではありません。

——その現状を変えるために、どのような活動に取り組んでいらっしゃるのですか。

昨年、志を同じくする有志の事業者と共に業界団体を立ち上げました。ガイドラインに基づいた明確な業界ルールを策定し、将来的には「認証制度」を確立したいと考えています。どの事業者が健全で信頼できるのか、消費者が一目で判断できる仕組みを作ることが不可欠です。

また、医療機関や介護現場との連携も極めて重要です。現在、私たちの相談の多くは病院のソーシャルワーカーさんやケアマネジャーさんからのご紹介です。閉鎖的になりがちな医療現場に対して、私たちの事業がどのように患者さんの安心に寄与するのか、その熟知度を高めていただくためのアナウンスを粘り強く続けています。この事業を一時的な流行ではなく、誰もが利用できる「社会的インフラ」にまで高めていくことが、私たちの今の大きな目標です。

28年の起業人生で貫く「やりたいこと」に必要な覚悟

——山下代表は複数の事業を経営されていますが、多忙な中で大切にされていることは何でしょうか。

私は28年ほど起業家として活動してきましたが、一貫して「自分のやりたいこと、好きなこと」しかやってきませんでした。経営には必ず波があります。苦しい時や困難に直面した時、それが本当にやりたいことでなければ、すぐに諦めてしまうと思うのです。この高齢者等終身サポート事業の仕事も、正直に言えば非常に大変で、泥臭い作業の連続です。それでも、その先にある利用者様の安心した表情や、社会的な必要性を理解しているからこそ続けていけます。

——利用者様への対応で、特にスタッフの方々に求めている姿勢はありますか。

頼れる身寄りのない方、あるいは親族と疎遠になっている方は、どこか寂しさを抱えていらっしゃることが多いです。対応するスタッフには、専門知識以上に「相手の気持ちに寄り添える感覚」を求めています。例えば、お子さんのいない方の前で自分の家族の話を慎むといった細かな配慮。個々に違う孤独の形を理解し、どう寄り添うかがこの仕事の核心です。

また、私たちは一度関わった以上、その方の「最期」まで面倒を見る責務があります。だからこそ、会社を絶対に潰してはいけません。安易に料金を下げるのではなく、事業を永続させるために適正な対価をいただく。それが最終的には会員様を守ることにつながるという覚悟を持って、日々運営にあたっています。

休みのない日常を支える「自宅筋トレ」

——現在、三つのわらじを履いていらっしゃいますが、リフレッシュはどうされていますか。

最近は本当に休みがありません。唯一、毎日欠かさず取っている時間は「筋トレ」です。ジムに行く時間も惜しいので、自宅に器具をすべて揃えて、家で黙々とトレーニングをしています。お金も時間もかからず、自分を追い込むことで精神的なバランスを保てているのかもしれません。多忙ではありますが、先駆者としてこの道を切り拓いていくこと自体が、今の私にとっての最大のエネルギー源になっています。

——読者の方へのメッセージをお願いいたします。

これから起業しようと思っている方には、ぜひ「本当に自分がやりたいこと」を見つけてほしいと思います。困難を乗り越えられるのは、そこに強い情熱がある時だけです。

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