現場発想のDXで飲食業に新たな価値を――龍雲株式会社が描く次の一手
龍雲株式会社 代表取締役 土屋拓也氏
静岡県伊東市で和食レストランを営む龍雲株式会社は、40年にわたり地域に根ざした飲食事業を展開してきました。現在は観光地という立地を活かしながら、店舗運営にとどまらず、独自のシステム開発にも取り組んでいます。現場で培った知見をもとに、飲食業の可能性を広げようとする土屋拓也氏に、事業の歩みや経営の考え方、今後の展望について伺いました。
事業承継と再建――ゼロからのスタート
――現在の事業内容について教えてください。
伊豆の伊東市で和食レストランを運営しています。創業から約40年が経ち、モダンな和風建築の店舗で営業を続けています。
――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。
もともとは父が親戚とともに立ち上げた飲食店です。私は学生時代にアメリカへ留学していたのですが、その最中に父が別事業で厳しい状況となり、学業を続けることが難しくなりました。そのため帰国し、まずは冷凍食品の卸業者に就職しました。
その後、さまざまな経験を経て、約16年前にこの飲食店を引き継ぐことになります。当時は経営的にも厳しく、倒産しかけている状況でした。なぜその状態の店を引き継ぐのかという声もありましたが、建物は残っており、これまでの経験も蓄積されていました。それらを活かして、自分が立て直すという決意で取り組みました。
――留学経験は現在に活きていますか。
現在は翻訳機能などもありますが、それに頼らずに直接お客様とコミュニケーションが取れるのは大きな強みです。特にインバウンドのお客様にとっては、安心して利用していただける要素になっていると思います。
現場から生まれた独自システム開発
――現在取り組まれている新たな挑戦について教えてください。
飲食店の運営をする中で、約15年前にファミリーレストランでオーダーエントリーシステムを見たことがきっかけでした。当時、Android端末で自分でもソフトを作れると知り、根拠はなかったものの「自分でもできるのではないか」と考え、開発を始めました。
最初は全く知識がなく、インターネットで質問しながら試行錯誤を繰り返しました。現在では、オーダー管理に加え、衛生管理、シフト管理、勤怠管理など、店舗運営に必要な機能を一通り自作しています。
さらに近年では、卓上タブレットから直接注文できる仕組みも導入しました。従来のシステムと連携させることで、新しいサービスの提供が可能になっています。
――具体的にはどのようなサービスでしょうか。
例えば、タブレットにAIを組み込み、占いサービスを提供しています。カメラ機能を使って簡単なエンタメとして楽しんでいただき、その利用条件として特定メニューの注文につなげるといった形です。
こうした取り組みを通じて、単なる飲食提供にとどまらず、付加価値のあるサービスを展開できると考えています。今後はアプリ開発なども視野に入れ、さらに発展させていきたいと思っています。
観光地ならではの戦略と課題
――現在の課題について教えてください。
一つは宣伝活動です。これまでSNS広告などは積極的に行ってきませんでしたが、今後はSNSを活用し、投稿の仕組み化を進めていきたいと考えています。システムを活用することで、手間をかけずに情報発信できる体制を構築したいです。
――観光地としての特徴についてはいかがですか。
昼は来客が多い一方で、夜は日帰り客が多いため弱くなりがちです。その対策として、宿泊施設への仕出しを行っています。通常の弁当ではなく、店内と同様の器を使った料理を提供することで、品質を維持しています。
売上拡大と効率化の両立
――今後3年間の目標を教えてください。
観光地という特性上、急激な成長は見込みにくいと考えています。ただし、インバウンド需要などを踏まえながら、売上は緩やかに伸ばしていけると思います。目標としては、3年後に現在の約1.5倍を目指しています。
一方で、人材コストの最適化も重要です。システムを活用することで、新たな人員を増やさずに繁忙期にも対応できる体制を整えていきたいと考えています。
飲食からITへ――次のステージ
――5年後、10年後の展望について教えてください。
将来を考えるうえで、AIの進化は避けて通れません。地域として大きな市場拡大が見込みにくい中で、飲食事業だけに依存するのではなく、システムの提供も一つの柱にしていきたいと考えています。
現在開発しているシステムは、飲食店に限らず、サロンやホテルなどにも応用可能です。基本的な構造は似ているため、少し調整すれば他業種にも展開できます。大手企業がすでに参入している分野ではありますが、ニッチな領域で差別化を図ることで、独自の価値を提供できると考えています。
行動こそが可能性を広げる
――読者へのメッセージをお願いします。
人はどうしても「できない理由」を先に考えてしまいがちです。前例がないと不安になり、自分で限界を作ってしまうことも多いと思います。
しかし、実際にはやってみないとわからないことがほとんどです。頭で考えるだけでなく、まず行動して検証することが重要です。新しいことに挑戦するときこそ、その姿勢が必要だと思います。
実際、私自身も29歳から独学でシステム開発を始めました。最初は何もわからず、試行錯誤の連続でしたが、行動を続けることで形にすることができました。考える前に動く――その積み重ねが、新しい可能性につながるのではないでしょうか。