変化に適応し続ける経営――広告からマーケティングへ、企業価値を高める戦略
株式会社壱吉コーポレーション 代表取締役 瀧 美千代氏
株式会社壱吉コーポレーションは、総合広告からスタートし、現在はマーケティングを軸に企業の課題解決を支援する会社です。時代の変化を見据えながら、柔軟な発想と対応力で事業を展開してきました。本記事では、代表の瀧氏に、創業の背景や事業の特徴、経営において大切にしている考え方について伺いました。
目次
総合広告から進化したマーケティング事業の本質
――現在の事業内容と強みについて教えてください。
2009年に設立し、現在18期目になります。
もともとはテレビやWebなどを活用した総合広告、いわゆるメディアミックスの会社としてスタートしました。当時はまだ「マーケティング」という言葉自体が一般的ではなく、広告が中心の時代でした。
転機になったのは、2006年頃にマーケティングの概念を学んだことです。これからは広告単体ではなく、マーケティングの時代になると感じ、いち早く取り入れました。
愛知県でも早い段階でマーケティングを掲げたことが、当社の強みにつながっています。
――マーケティングをどのように捉え、どのような価値を提供していますか?
マーケティングは「人・物・金」を総合的に見ていくものだと考えています。
広告のように物だけをつくるのではなく、その背景にある人材や制度、資金の流れまで含めて整えなければ成果にはつながりません。
一部だけを切り取るのではなく、企業全体の生産性や力を高めていくことが本来のマーケティングです。こうした考え方をもとに、講演などを通じて外部へ発信する機会もいただいています。
――講演や外部での活動では、どのようなテーマを大切にされていますか?
講演ではマーケティングの話をベースにしながらも、内容は依頼に応じて柔軟に変えています。実際には、経営者の考え方や会社のつくり方といったテーマを求められることも多く、単なる手法の話にとどまらない内容になることが多いです。
例えば「人・物・金」といった基本的な要素をどう捉えるか、それを経営の視点でどう組み立てていくかといった話をすることもあります。マーケティングは一部の施策ではなく、会社全体に関わる考え方なので、その深さや本質を伝えることを意識しています。
クライアントゼロからの独立と意思決定の背景
――起業に至った経緯を教えてください。
もともとは広告代理店で会社員として働き、営業やマーケティングの分野に携わってきました。
当時、現在グループとして関わっている会社の広告も担当しており、一定の成果を出せていたと思います。独立を決めた際には、その会社に挨拶へ伺ったところ、「子会社としてやらないか」とお声がけをいただきました。
ただ、特定の企業や業界に特化する形では、広がりに限界があると感じ、一度はお断りしました。マーケティングの視点で考えると、特定領域に閉じるのではなく、さまざまな業種に関わることで価値が高まると考えたからです。
その後、他業種の仕事にも関わりながら、その経験を活かして支援していく形であればという提案をいただき、最終的にその形で会社を立ち上げました。それが2009年になります。
――独立にあたって、前職ではどのように区切りをつけられたのでしょうか?
当時はおよそ90社ほどのクライアントを担当していましたが、お声がけいただいたグループ会社以外はすべてきちんと引き継ぎを行い、自分から声をかけることもありませんでした。やはり仕事の中で築いてきた信頼関係がありますし、そこは筋を通すべきだと考えたからです。
その結果、クライアントゼロの状態からのスタートになりました。
今振り返ると少し格好をつけすぎた部分もあるかもしれませんが、当時の判断があったからこそ、前職の上司や先輩とも今でも良い関係を築けているのだと思います。
実際に最初の仕事を新規顧客から受注するまでには4ヶ月ほどかかり、初年度は決して楽ではありませんでしたが、その経験は大きな糧になっています。
変化の時代に求められるフレキシブルな経営戦略
――事業計画においてどのような考え方を大切にしていますか?
今は、長期計画を前提に物事を見る時代ではないと感じています。社会情勢や市場環境の変化が激しく、わずか1か月でも状況が大きく動くことがあるからです。そうした中で長期計画を過信すると、思い込みのまま古い施策を続けてしまうおそれがあります。
そのため重視しているのは、1年単位で計画を見ながらも、状況に応じてフレキシブルに対応できる視野をもつことです。新しいことに踏み出す判断もあれば、撤退や改善を選ぶ場面もあります。
ひとつのやり方にしがみつくのではなく、その時々に合った形へ切り替えていくことが、これからの事業計画には欠かせないと考えています。
――複数の事業を展開している理由を教えてください。
当社はひとつの分野に特化した会社ではなく、複数の領域に対応しています。そのため、お客様から「何が一番得意なのか分かりづらい」と言われることもありますが、それは意図的なものです。
ひとつの領域だけに絞ってしまうと、時代が変わったときに対応しにくくなり、事業そのものが立ち行かなくなる可能性が出てきます。そうなれば、従業員に不安を与えることにもなりかねません。
だからこそ、マーケティングという軸はぶらさずに持ちながら、複数の柱を横につなげる形で事業を展開しています。どんな時代でも必要とされるものに対応できる柔軟さこそ、今の時代に求められる会社の強さだと考えています。
地域と顧客に向き合うマーケティングのあり方
――地域や社会に対してどのように価値を提供していきたいと考えていますか?
これからの会社は、自社の利益だけでなく、どれだけ人や地域に貢献できるかが重要になってくると感じています。当社が存在することで、地域経済や地域活性化にどれだけ寄与できるかに価値を見出したいと考えています。
創業当初から、その考えは変わっていません。時代が変わっても、人の役に立つという軸は持ち続けたいと思っています。
――顧客ごとの課題にどのように向き合っていますか?
お客様の規模や環境によって、抱えている課題は大きく異なります。同じ自治体でも人口規模によって状況は変わりますし、企業ごとに必要な支援も違います。
だからこそ、どんな予算や状況でも対応できる柔軟さが必要です。ひとつのやり方に固執するのではなく、その都度最適な形を考えることを意識しています。
経営者とは何か――役割としての覚悟と資質
――瀧氏が考える経営者とはどのような存在ですか?
経営者はなりたくてなれるものではないと思っています。周囲から「この人に任せたい」と言われる存在でなければ、本来は務まらないものです。
立場としての権限ではなく、あくまで役割です。会社は一人で成り立つものではなく、環境や人、資金などすべてが揃って初めて成立します。その中で経営者はひとつの役割を担っているに過ぎません。
――経営者に求められる資質について教えてください。
知恵や才能、行動力、立場、人間性といった要素をどうバランスよく持てるかが重要だと思います。そして何より、その責任や重みを受け止める覚悟が必要です。
周囲から望まれない経営者は続きません。だからこそ、自分の在り方を問い続けることが大切だと感じています。
――お休みの日はどのようにリフレッシュされていますか?
乗馬をしています。馬を所有しており、週に1回ほど乗りに行ったり世話をしたりしています。維持には手間も費用もかかりますが、それも含めて楽しんでいます。
長く続けてきたこともあり、今年は「特技は乗馬です」と言えるレベルまで上達したいですね。