知財を“コスト”で終わらせない――加藤国際特許商標事務所が貫く顧客本位の仕事
加藤国際特許商標事務所 所長弁理士 加藤佳史氏
中小企業やスタートアップにとって、知的財産は事業を支え事業を守る重要な鍵である一方、十分に取り組めていない現状もあります。加藤国際特許商標事務所は、そうした企業に寄り添いながら特許・商標・意匠などの権利化支援を行う事務所です。本記事では、所長弁理士の加藤佳史氏に、事業内容やこれまでの歩み、そして今後の展望について伺いました。
目次
知財を“形にする”だけで終わらせない仕事
――現在の事業内容について教えてください。
弁理士事務所として、特許や実用新案、商標、意匠といった知的財産を、特許庁への手続きを通じて権利化するのが主な業務です。発明やブランド、デザインといった無形の価値を、法的に守れる形へと落とし込む仕事になります。
ただ、単に出願して終わりではありません。審査の過程では拒絶理由が通知されることもありますが、その際にはお客様の意向を踏まえながら、どのようにすれば権利化できるのかを一緒に考え、意見書や補正書を作成します。最終的に登録まで導くところまでが一連の役割です。
――権利化後の対応についても関わるのでしょうか。
はい。権利を取得した後に模倣などが発生するケースもあります。その場合は相手方への対応を行い、必要に応じて訴訟に関与することもあります。
訴訟は原則として弁護士が対応する分野ですが、特定侵害訴訟代理の資格を有しているため、弁護士と共同で代理人として知財訴訟に関わることが可能です。権利取得後のトラブル対応まで含めて、一貫して支援できる点が特徴です。
また、企業と大学の共同研究における契約書のチェックなど、知財に関するリスクを未然に防ぐ支援にも対応しています。
現場経験が導いた、弁理士という選択
――この仕事を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
もともとは大手企業で設計や開発に約20年携わっていました。その中で自分自身も発明を行い、企業が依頼をしていた事務所の特許技術者に協力して特許出願と拒絶対応を経験しています。
その過程で、特許という仕組みの面白さを感じたのがきっかけです。自分の考えたものが権利として守られるというのは非常に興味深く、そこから弁理士を目指すようになりました。
試験には数年かけて合格し、その後は特許事務所に転職しました。最初は小規模な事務所で経験を積み、その後より大きな事務所に移り、実務を一通り学びました。そこで多くの知識と経験を得たことで独立の目処が立ち、2017年5月に現在の事務所を立ち上げました。
中小企業にこそ、知財という武器を
――事務所として大切にしている考え方と、支援したいお客様について教えてください。
当事務所は規模としては小さいため、大企業の大量出願を扱うというよりは、中小企業やスタートアップの支援に力を入れていきたいと考えています。実際にスタートアップの案件にも携わっており、3回もの拒絶理由通知を受けましたが最終的に特許として登録に至った事例もあります。
多くの中小企業は、日々の資金繰りや人材確保といった課題に追われ、知財まで手が回らないのが現実だと感じています。ただ、その中でも少しでも知財に目を向けようとされる経営者の方がいれば、企業にとって知財をどう位置づけ、どう活用していくかという点についても支援していきたいと考えています。
本来、知財は企業の強みになり得るものです。海外に目を向けると、例えばドイツの中小企業では、特許を活用して海外展開を行い、収益につなげているケースもあります。日本の中小企業にも同様の可能性があると考えています。
そうした可能性を広げていくためにも、単なる出願手続きにとどまらず、企業にとって知財がどのような意味を持つのかを一緒に考えながら支援していきたいと思っています。
「時間をかける」ことを惜しまない理由
――仕事をする上で大切にしている信条や、譲れない価値観について教えてください。
お客様の意向に沿って対応することを、何よりも大切にしています。
大手の特許事務所では、弁理士の人数が多く、業務が専門分化されているため、効率やスピードが重視される傾向にあると聞いています。一方で、当事務所はそのような体制ではないため、一件一件のお客様の要望に合わせて、時間をかけて丁寧に対応することを重視しています。
また、費用に見合わないからといって仕事の質を落とすことはあってはならないと考えています。弁理士の業務は一定の費用が定められていますが、それに対して時間や手間を惜しむべきではありません。
場合によっては、いただいている報酬以上の時間や労力がかかることもありますが、それでも手を抜くことはすべきではないと思っています。単に手数料の範囲内で仕事を終えるのではなく、責任を持ってやりきることが重要だと考えています。
組織づくりにおいて求める“素直さ”
――今後の組織づくりについてどのように考えていますか。
現在は一人で運営していますが、今後人を採用する場合には、コミュニケーションを最も重要にしたいと考えています。
これまで大手の事務所で働いていた際には、直属の上司と何度も打ち合わせを重ねながら明細書を作成しており、密なやり取りの重要性を実感してきました。そうした経験からも、業務を円滑に進めるためには、日常的なコミュニケーションが欠かせないと考えています。
今後、経理や事務などを担う人材を採用する可能性はありますが、業務については任せきりにするのではなく、どのような仕事があるのかを明確に整理し、しっかり共有したうえで進めていきたいと考えています。
――どのような人と働きたいと考えていますか。
自分の考えを持つことは大切ですが、それと同時に、人の意見を素直に受け止められる方と一緒に働きたいと考えています。
これまでの経験から、どれだけ能力があっても、自分の考えだけに固執してしまうと成長は難しいと感じています。一方で、周囲の意見を取り入れながら自分を見直し、改善していける人は着実に伸びていきます。
そのため、仕事においても一方的に主張するのではなく、相手の話を理解し、自分の中で咀嚼しながら前に進める姿勢を大切にしてほしいと考えています。
海外展開への挑戦とこれから
――今後の展望について教えてください。
今後は海外向けの出願にも対応できるよう、取り組んでいきたいと考えています。現在は日本弁理士会の国際活動センターに所属しながら欧州向けの出願対応について学んでおり、海外案件にも対応できる体制づくりを進めています。
そのためには、海外の代理人との関係構築も重要になると考えており、今後取り組んでいく必要があると認識しています。
また、海外対応においては英語でのコミュニケーションが不可欠です。国際的な活動の場で海外の弁理士による講義を受けるなど、実務に活かせる形で学びながら、円滑にやり取りができるよう取り組んでいます。今後は、実務レベルで対応できる体制を整えていきたいと考えています。
仕事に向き合い続けるためのリズム
――リフレッシュ方法について教えてください。
水泳が好きで、定期的に体を動かしています。体を動かすことで気持ちもリフレッシュできますし、ストレス解消にもなっています。
ゴルフも行いますが、どちらかというと業界の方との交流の場としての意味合いが大きいですね。あとは自宅の庭の手入れをするなど、比較的ゆったりと過ごしています。