バスケットボールを一生の仕事に。ルールの中で個性を磨き、指導者の輪で未来を創る
株式会社フロムレジェンド 代表取締役 山口貴久氏
「バスケットボールで食べていく」。大学時代に心に決めたその志を軸に、20年以上にわたりバスケットボールの普及と育成に心血を注いできた山口貴久氏。2014年に一般社団法人バスケットボール推進会を設立し、子供向けのスクール運営などで着実に実績を積み重ねてきた。そして2023年、デジタルメディアやアプリ開発を通じたさらなる価値提供を目指し、株式会社フロムレジェンドを始動させた。
指導現場のリアリティを追求した自社アプリ「B.ASSIST」(ビーアシスト)の開発や、指導者同士が学び合えるコミュニティ構築など、同氏の視線は常に「日本のバスケットボール界全体の底上げ」に向けられている。一過性のブームではなく、草の根からの成長を支える山口氏の「経営道」と、情熱の源泉に迫った。
現場の「リアル」を届け、指導者の悩みを解決する
――現在注力されている事業の内容と、その背景にある想いをお聞かせください。
現在は、自社開発のバスケットボール指導・練習支援アプリ「B.ASSIST」の公開準備に最も注力しています。このアプリの最大の特徴は、私たちが運営する「ダイアモンドバスケットボールスクール」の指導現場の「リアルな姿」が見られる点にあります。
一般的な指導動画は、成功した綺麗なシーンだけを切り取ることが多いですが、B.ASSISTでは子供たちの実際の反応や、時には指導者がメニューを提供して失敗しているシーンまで包み隠さず配信します。指導現場では「理屈通りにいかないこと」が多々あります。そのリアルを見せることで、全国の指導者や保護者の方々が抱える「どう教えればいいのか」という悩みの解決に繋げたいと考えています。
また、「YouTube」やWebメディア「スキルクエスト」や「すぽろぐ」を通じて、アマチュアの草の根にある情報を発信しています。コロナ禍でバスケができる場所が減ってしまった経験から、どこにいても良質な情報にアクセスできる環境を整え、日本のバスケ界全体を盛り上げていきたいという思いが根底にあります。
――業界全体で感じている課題や、今後果たしていきたい役割についてはどのようにお考えですか?
今、大きな転換期として「部活動の地域移行」という流れがあります。学校の先生に代わり、民間の指導者が子供たちを育てる機会が増えていきます。しかし現状、スクールやクラブチーム同士の横の繋がりは非常に希薄です。
指導者同士が連携し、学びを共有できる仕組みがあれば、日本の育成環境はもっと良くなるはずです。私たちはB.ASSISTを単なる動画アプリに留めず、全国で実績がある指導者が登壇する勉強会やコミュニティへと発展させていきたい。指導者が繋がり、学び続けることで、子供たちがより成長しやすい未来を創ることが私たちの役割だと考えています。
「バスケ」という軸をぶらさず、一歩ずつ進む経営
――山口様が経営の道に進まれたきっかけと、大切にされている価値観を教えてください。
大学3年生の就職活動中、どの業界にも興味が持てず「好きなバスケを仕事にしたい」と考えたのが原点です。東京のイベント会社でのインターンを経て就職し、レンタルコートの運営などに携わってきました。30歳という節目の年にその仕事を離れることになり、「人生一度きり、自分で全てを判断し、責任を持つ環境でチャレンジしよう」と決意して2014年に独立しました。
この10年余りで痛感したのは、「バスケ」という軸をぶらしてはいけないということです。資金源の確保のため、他の事業を展開する話もありましたが、私自身、結局バスケ以外のことをやろうとしても身が入らず、うまくいきません。大学時代に決めた「バスケットボールで食べていく」というテーマを愚直に守り続けることが、私の経営判断の最大の基準になっています。
――組織運営において、特に意識されている方針はありますか?
ダイアモンドバスケットボールスクールを運営している、一般社団法人バスケットボール推進会では、識学(しきがく)を展開されている安藤広大さんが出版されている書籍を参考に、5年ほど前からマネジメント方針を大きく転換しました。以前は私が全員を直接マネジメントしようとして空回りしていましたが、今は「ルール」と「評価」を明確にし、直属の部下とのコミュニケーションを軸に組織を動かしています。
大切にしているのは、「ルールの中で自分らしさを出す」ことです。これはバスケットボールそのものと同じです。決められたルールがあるからこそ、その中で創意工夫し、素晴らしいプレーや勝利を目指すことができます。会社も同様に、理念やルールを理解した上で、社員一人ひとりが主体性を持って個性を発揮してほしいと考えています。
主体性を育む環境を全国へ広げたい
――採用や育成において、どのような方と一緒に働きたいと思われますか?
まずは「バスケが好き」「子供が好き」という熱意が前提ですが、その上で「主体性」を持って取り組める方です。私たちが伝えたことを素直に理解するだけでなく、「自分がどうなりたいか」「何を実現したいか」を自ら発信し、行動できる人と出会いたいですね。
バスケットボール業界で20年以上活動していく中で、多くの諸先輩方から学びを得て、今の自分があります。関わるすべての人に敬意を払い、「学びの連鎖」を今の組織でも、そしてこれから構築する指導者コミュニティでも生み出していきたいと考えています。
休日は“バスケ以外”を楽しむ――家族との時間がリフレッシュに
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
バスケットボールが好きで普段から関わっていますが、本当の休みの日にはあえてバスケをしないことも多いです。好きなことを仕事にしているからこそ、休日は別のことを楽しみたいという感覚があります。もちろんバスケを堪能することもありますが、仕事でバスケを十分に楽しめていますので、休みの日はそれ以外の時間を大切にしています。
家族で出かけたり、子どもと遊んだりする時間が、一番のリフレッシュになっています。特別に他のスポーツをするわけではありませんが、家族と一緒にレジャーを楽しむなど、日常とは違う時間を過ごすことで気持ちを切り替えています。
仕事に全力で向き合う一方で、休日は家族との時間を大切にする。そのバランスが、日々の活力につながっています。
これからも、仕事とプライベートのメリハリを大切にしながら、自分自身が楽しみ続けられる環境をつくっていきたいですね。