“性格の良い会社”が物流を支える――人を育てる経営で食のライフラインを守る
茨城乳配株式会社 代表取締役社長 吉川 国之氏
茨城乳配株式会社は、冷凍・冷蔵食品に特化した物流サービスを展開し、北関東エリアを中心に共同配送ネットワークを構築してきました。人口減少や人手不足が進む地域に物流を届ける一方で、「性格の良い会社を創る」という独自の理念を掲げ、人材定着や組織づくりにも力を注いでいます。本記事では、代表の吉川氏に事業内容や経営への想い、人材戦略、今後の展望について伺いました。
目次
北関東の食を支える共同配送ネットワーク
――現在の事業内容や強みを教えてください。
当社は冷凍・冷蔵という温度帯に特化した食品物流サービスを提供しています。現在は茨城、栃木、千葉、神奈川に拠点を構え、北関東を中心に事業を展開しています。
強みは、茨城県と栃木県における冷凍・冷蔵の共同配送で高いシェアを持っていることです。人口減少が進む地域では、荷物を隅々まで届けることが難しくなっていますが、当社では複数の企業の商品をまとめて配送する共同配送の仕組みを構築しています。
大手企業が参入しにくいエリアをカバーし、地域の物流を支えている点が特徴です。
――物流業界の中でどのような役割を担っているのでしょうか?
私たちは単に荷物を運ぶ会社ではなく、地域の食のライフラインを維持する役割を担っています。
特に人口減少が進む地域では、物流網が縮小すると食品が届きにくくなります。その課題に対し、共同配送によって効率的に商品を届ける仕組みを提供しているんです。
派手な仕事ではありませんが、人々が当たり前に食品を手に取れる環境を支える重要な仕事だと考えています。
家業承継から受け継いだ経営への責任
――経営者になった経緯を教えてください。
私は3人兄弟の末っ子で、兄は医師、姉はデザイナーの道へ進みました。私自身も好きな仕事を選べると思っていましたが、大学卒業後に損害保険会社へ入社して6年ほど経った頃、家業に戻ることになったんです。
正直なところ、最初から強い意志で継ぐと決めていたわけではありません。ただ、子どもの頃から社員の方々に遊んでもらった思い出があり、その存在を身近に感じていたこともあって、「会社とは関係ない」と割り切ることはできませんでした。
入社当初は物流の知識がなかったため営業部門を担当し、その後、営業部長、副社長を経て2018年に代表取締役社長へ就任しました。社長就任前から経営に深く関わっていたため、肩書きが変わったことで大きく仕事が変わったという感覚はありませんでしたね。
「人を育てる会社」を目指す人材マネジメント
――御社の理念にはどのような想いが込められていますか?
「性格の良い会社を創り、社会に貢献する」ことが当社のミッションです。
物流会社ではありますが、実は人を育てることを目的とした会社だと考えています。私は日本人の強みは技術ではなく性格の良さにあると思っています。性格の良い社員が増えれば、その家族や友人、お客様にも良い影響が広がっていくはずです。
だからこそ、物流サービスそのものだけでなく、人として成長できる環境づくりを大切にしています。
――社員との関わり方や人材育成で大切にしていることは何ですか?
社員との関わりで重視しているのは、一人ひとりとしっかり向き合うことです。
物流業界では安全管理が欠かせませんが、その前提として社員が長く働き続けられる環境が必要になります。人の入れ替わりが激しいと、安全教育や技術継承も難しくなってしまうからです。
また、採用においては年齢や経歴よりも、その人自身の姿勢や考え方を重視しています。特に、他人や前職の悪口を言うような方は採用しません。
組織の雰囲気は一人ひとりの言動によってつくられるため、周囲と協力しながら前向きに働ける人かどうかを大切に見ています。
――現在の課題と、今後の人材戦略についてお聞かせください。
現在の最大の課題は人材確保です。
物流業界全体で人手不足が進む中、当社でも応募者の年齢層が上がっています。そのため中途採用に加え、新卒採用にも力を入れています。新卒社員には将来的に管理職や経営層を担ってもらうことを期待しており、現場経験を積みながら育成しています。
また、今後は外国人ドライバーの採用も進んでいくと思います。ただし、外国人材に選ばれるためには、まず日本人から選ばれる会社でなければなりません。だからこそ、働きやすい環境づくりを徹底していきたいと考えています。
物流の未来を見据えた成長戦略と社会への貢献
――今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
現在は人材マネジメントに最も力を入れています。
物流業は人がいて初めて成り立つ仕事です。優秀な人材が定着すれば、受けられる仕事も増えます。そのため、事業拡大の土台は人づくりにあると考えています。
また、お客様の課題である脱炭素化にも対応していかなければなりません。当社はSBT認証を取得し、将来的にはGXに関する提案もできる体制づくりを進めています。
売上面では、グループ全体で50億円を超える見込みであり、3年後には60〜65億円規模を目指しています。
――物流業界の将来や自動運転の可能性をどのように見ていますか?
高速道路などの幹線輸送では自動運転が進む可能性はあると思います。
一方で、物流の現場では荷物を降ろす場所や納品先の環境整備が必要になります。物は人のように自分で降りてくれません。そのため、完全な自動化にはまだ時間がかかるのではないでしょうか。
技術だけでなく、物流を受け入れる側の仕組みも含めて変わっていく必要があると考えています。
――事業を通じて実現したい社会についてお聞かせください。
私は人間性や人間力が改めて問われる時代になっていると感じています。
インターネットやSNSが普及し、昔なら言わなかったような言葉が簡単に発信される時代になりました。だからこそ、人としての基本を大切にする文化を守りたいと思っています。
また、当社は食のライフラインを支える仕事をしています。目立つ仕事ではありませんが、社会に欠かせない役割です。社員にも自分たちの仕事の価値を理解してほしいですし、子どもたちに胸を張って語れる会社であり続けたいと思っています。
経営の軸は「性格の良さ」――譲れない価値観
――仕事以外でのリフレッシュ方法を教えてください。
若い頃はスキー競技に取り組んでいましたが、現在はサーフィンが趣味です。
毎週土曜日は朝4時から海に入り、リフレッシュしています。また、週3回ほど5kmのランニングも続けています。走りながら考え事を整理する時間が、自分にとって大切な習慣になっています。
――経営をする上で「ここだけは譲れない」というポリシーはありますか?
やはり「性格の良さ」です。
当社には「いつも明るく笑顔」「嘘をつかない」「陰口・悪口を言わない」などの10カ条があります。どれも子どもの頃は当たり前にできていたことですが、大人になるにつれて忘れてしまいがちなことばかりです。
これからAIや自動化が進んでも、人間力や道徳観は人にしか担えません。売上を伸ばすことも大切ですが、それ以上に社員やお客様が「この会社と関わってよかった」と思える存在でありたいんです。
そこは、経営者として持っておくべき軸だと思っています。