41年の軌跡が紡ぐ「心と身体の解放」――声にならない声を聞き、命を預かる整体師の矜持
株式会社ボディサイン 代表取締役 宮本 晋次氏
16歳でこの世界に足を踏み入れ、以来41年。延べ20万件以上の施術実績を誇る宮本晋次氏は、単なる「体の不調を整える人」ではない。オリンピック選手や著名人、そして海外からもオファーが絶えないその技術の根底にあるのは、「整体とは命を預かる仕事である」という揺るぎない信念だ。
「全身骨格矯正®」を商標登録し、数々のメディア出演や累計10万部超のベストセラー著者としても知られる宮本氏。しかし、その輝かしい実績の裏側には、かつて自身が病に苦しみ、一人の恩師によって救われた原体験がある。科学では証明しきれない「感覚」の世界を言語化し、クライアントが自分でも気づいていない心の叫びを読み解く。身体と心の両面からアプローチする、宮本氏の歩んできた「経営道」に迫る。
目次
「声にならない声」を読み解き、痛みの根源を解放する
――「全身骨格矯正®」という独自の看板を掲げていらっしゃいますが、他にはない強みはどこにあるとお考えですか?
私にとっては「当たり前のこと」を積み重ねてきただけなのですが、客観的に見れば、この業界の人間が叶えたいと思うことはほぼ実現してきました。テレビ出演や、累計10万部を突破した商業出版、そしてプロスポーツ選手のサポートなどです。
しかし、本質的な強みは「本人が言語化できない感覚を瞬間的に把握し、その場で結果に繋げられること」だと思っています。例えば、あるプロゴルファーの方は「左足がコピー用紙1枚分短い気がする」と仰いました。科学的に証明するのは不可能な感覚ですが、その違和感を受け取り、調整することで「ぴったり揃った」と確信していただく。そうした、ご本人にしか分からない感覚的な不調を、心と身体の両面から解放していくことが私の仕事です。
――心と身体の両面、という点について詳しくお聞かせください。
41年この業界に携わってきていますが、近年の特徴として、身体の辛さはメンタル面の影響も非常に強いと実感しています。施術中、お客様が「こんなこと誰にも話したことがない」と、心の奥底にある悩みを打ち明けてくださることも少なくありません。今、私の中では身体とメンタルの不調の比率が「2:8」に逆転するほど、心を整えることの重要性を感じています。
絶望の淵で救われた体験が、一生の仕事に変わった瞬間
――この道に進まれたきっかけは、ご自身の経験にあると伺いました。
中高時代は柔道をしていましたが、16歳の時に腰椎椎間板ヘルニアと診断され、激しい痛みとしびれが続き、じっとしているのも辛い、夜眠ることもできない状態になりました。大きな大学病院に行ったり、ありとあらゆる治療も試しましたが原因が分からず、精神的にも不安定になっていた時期です。
そんな時、ある先生に出会いました。60分の施術でしたが、開始5分もしないうちに眠ってしまい、目が覚めた時にはあんなに苦しんでいた痛みとしびれが一切消えていたんです。嬉しくて、その場で号泣しました。その後、何度か通ううちに「お前、将来何の仕事するんだ?」と聞かれ、「整備士になろうと思っています」と答えたら、「同じ直すなら、人間を治してみないか?お前が本気なら俺の技術をお前に伝承する」と言われたんです。
――その一言が運命を変えたのですね。
当時、父との関係が良くなかった私にとって、その先生は理想の父親像でもありました。即座に「お願いします」と答え、そこから一子相伝の技術を継承する修行が始まりました。人をこれほどまでに感動させ、喜ばせることができる仕事があるのかと。あの時の感動が、今の私の原動力になっています。
「黒電話」の時代に培った、本質を外さない教育
――コロナ禍を経て、現在は紹介制のスタイルに移行されたそうですが、教育に対する想いをお聞かせください。
今は特定の店舗でスタッフを抱える形ではなく、店舗スタッフ丸ごとの『技術力』+『ヒアリング力』+『判断力』の底上げを外注で請け負うようなサポートに力を入れています。
多くの整体院・リラクゼーションサロンの院長先生は、朝から晩まで仕事に追われ、スタッフの教育やコミュニケーションまで手が回らないのが実情です。その結果、スタッフのお客様への配慮や整体師としての意識、技術力も伸び悩み、やりがいを感じられずに辞めてしまう。この業界の離職率が高い大きな要因です。
現代はオンラインで技術を教える時代ですが、私は現場主義です。手の角度が数ミリ変わるだけで効果が激変する。それはリアルでしか伝えられません。
サロンや各店舗での【運営】の流れは「マニュアル」で十分まかなえますが、【施術】に関しての「意識レベル・技術レベル」は、マニュアルを教えても、基礎ができていなければ、”磨かれること”はありません。
これは、昭和世代の古い考えなので、電話機で言えば、『黒電話』を大切にしていると言うことです。
ですが、今の施術者は効率を求めますので、電話機で言えば『スマホ』が欲しいんです。
基礎を教えても、手間をかけること、経験を積み重ねて引き出しを多くすること、どんな状況にも対応できるものを”手”に覚え込ませると言う流れを避ける傾向があります。
ですので、大して数もこなさず、技術が染みつかないうちから「もっと楽なやり方ありませんか?」という反応が多々みられます。
これは独立した時に自分が苦労することになるんですが、そこまでしてこの業界にいようと思わず、職業の一つで捉える時代背景も影響しているのかもしれませんね。
時代に逆行していますが、私はあえて「基本(=黒電話)が大切」という教育をしています。
100人いれば100通りの、1000人いれば1000通りの教え方がありますが、根底にあるのは「人の命を預かっている」という自覚です。単なるサービス業の一つとして整体に携わるのではなく、『その人の人生を変える仕事である』というマインドセットを伝えていきたい。
孤独な経営者の負担を減らし、スタッフをプロに育てる
――今後の展望として、どのようなことに挑戦していきたいですか?
サロンを持つと、院長先生って現場にいることが少なくなったり、いても常にやることが多かったりと、スタッフとの関係性が希薄になるんです。そうするとコミュニケーションの部分でも目が届かない事案が多くなり、「とりあえずいてもらってる」と言う状況になりがちで、院長先生は毎日毎日業務に追われコミュニケーションが減るんです。スタッフも院長忙しそうだからと質問も減り、自然と勉強会なども無くなり、スタッフは”作業をするだけ”になって、モチベーションが下がるんです。
理由としては、院長先生も何かやらなければと思っても手が回らなかったり、自分のやることが山積みで「後回し」になるから。スタッフもそのサロンにいる意味や自分への”重要感”を感じなくなることで離職が続き、さらに求人コストも嵩んでしまうんです。
私はそうした院長先生の負担を減らすため、技術指導やヒアリング・カウンセリングのレベルアップを店舗単位で代行し、売上を1.5倍、2倍へと引き上げるサポートを加速させたい。マニュアルを超えた「心の奥の声を聞き出す力」を伝授することで、スタッフがプロとしての誇りを持ち、離職率が下がる。そんな好循環を世の中に増やしていきたいと考えています。
戦国の世に想いを馳せ、仲間と高め合う日常
――お忙しい日々の中でのリフレッシュ方法を教えてください。
昔は公園のベンチで一日中ぼーっと過ごすこともありましたが、今は自分の中で日々の疲れを処理できるようになりました。家ではよくゲームをしています。ファミコン世代なのでゲームは手放せません。特に『三國志』や『大戦略』のようなシュミレーションの世界に没入するのが好きで、時間が許すなら1日中やっていたいですね。
また、最近は映画を観に行ったり、2万人規模のコミュニティに所属しており、そこで仲間と過ごす時間が大きな刺激になっています。頭のグルグルや心のモヤモヤにつながるメンタルメンの相談やビジネスの相談を受けることも多いですが、志を同じくする仲間と語らうことが、私にとっての最高の休息です。