音楽を楽しむ人を支え、街に寄り添う小さな楽器店の歩み

株式会社安原楽器 代表取締役 安原 幸雄 氏

楽器販売、音楽教室、レンタルスペースの三つを柱に、音楽に関わる事業を展開している安原氏。先代から事業を引き継いだ二代目として、時代の変化に合わせながら、現在は管楽器や弦楽器、教育楽器などを中心に取り扱っています。音楽を楽しむ人を増やしたいという思いを大切にしながら、夫婦で事業を営み、Web制作や管理も自ら手がけています。音楽教室では講師との信頼関係を重んじ、商店街でのイベントやコンサートなど、地域との関わりも続けてきました。今回の取材では、これまでの歩み、経営において大切にしていること、そして今後について伺いました。

音楽を楽しむ人を増やすために、形を変えながら続けてきた事業

――現在の事業内容について教えてください。

楽器全般の販売、音楽教室、レンタルスペースの三つの事業を展開しています。現在は、基本的にネット販売を中心にしています。

もともとは先代が始めた事業を引き継いだ形で、私で二代目になります。創業当初は、ピアノやオルガン、レコードなどを扱っていました。昔ですから、CDではなくレコードですね。ただ、今はピアノやオルガンも、レコードも取り扱っていません。

現在は、管楽器や吹奏楽器、弦楽器、それから教育楽器などを中心に扱っています。先代の頃とは、経営方針も大幅に変わっています。時代やお客様のニーズに合わせながら、扱うものも変わってきました。

――会社として大切にしている理念や思いはありますか。

今は一般消費者を対象に、楽器を中心に販売しています。基本的には、音楽の普及も含めて、楽器を幅広く普及させ、音楽を楽しんでいただきたいというのが理念です。

楽器を販売することだけが目的ではなく、音楽に触れる人が増え、楽しんでいただけることが大切だと考えています。

音楽教室やレンタルスペースも、その一つの形です。楽器を手にする人、音楽を習う人、演奏する人が、それぞれの形で音楽を楽しめるように支えていくことが、事業の基本にあります。

音楽に導かれ、二代目として歩んできた経営の道

――経営の道に進まれたきっかけを教えてください。

先代から引き継いだというのが大きいです。もともと父が事業を始め、私が二代目として引き継ぎました。ただ、幼少の頃から音楽は好きでした。ピアノを習ったり、吹奏楽部に入ったりしていました。

最初はクラシックに触れていましたが、ビートルズの影響を受けて、ポピュラー音楽、ポップスの方にも関心が広がりました。その後、ジャズにも傾いていき、実際にジャズスクールにも通いました。そういう意味では、環境が私を音楽の方へ導いていったのかもしれません。

――経営判断をするときの軸や信条はありますか。

特に、価値観や信条という形で明確に言えるものはありません。今は本当に小さい企業で、いわばパパママストアのような形です。ですから、経営は私の独断と偏見によるものです。

ただ、経営の中では、やはり利益を上げていくことは大切です。商売をしている以上、儲けていかなければなりません。そのために何をやるかということになると、できることはすべてやっていくという考えです。そうして続けてきた結果が、今の事業につながっています。

信頼関係を土台に、音楽を教える人と場をつくる

――組織運営について教えてください。

実際には、社員はいません。音楽教室の講師についても、社員ではなく、業務委託契約の形で来ていただいています。事業主として関わっていただいているという形です。

そのため、一般的な意味での社員との関係というよりは、講師の方々との関係が大切になります。音楽教室を続けていくうえで、講師の方とのつながりや信頼関係は欠かせません。

――講師の方とのコミュニケーションで大切にしていることは何ですか。

基本的には、やはり人柄だと思います。私の妻も事業に従事していますが、気が合う人とタッグを組んでいるという感覚です。

音楽教室を長年続けてきましたが、レッスンをする人のことを私たちは「レスナー」と呼んでいます。レスナーとの人間関係が一番大事で、お互いの信頼関係で成り立っている世界です。

相手も音楽を教えることが好きで、音楽そのものも好きであること。そして、こちらもそれをお手伝いすることで教室が成り立っていると思っています。音楽を教える場は、人と人との関係があってこそ続いていくものです。

――一緒に働きたいと感じる人には、どのような共通点がありますか。

基本的には、人間性、人柄です。技術や経験も大切ですが、音楽教室では信頼関係が何より重要になります。長く関わっていくには、お互いに人として信頼できることが欠かせません。

音楽を教えることが好きで、音楽が好きであることも大事です。こちらとしても、その人が音楽を伝えていくことを支える立場ですので、同じ方向を向いて関わることができるかどうかを大切にしています。

事業の終活を見据えながら、街への関わりを続ける

――今後取り組んでいきたい挑戦や展開はありますか。

今のところ、新しい展開を大きく考えているというよりは、年齢的なこともあり、事業の終活に入っている段階です。私は昭和28年生まれで、今年で72歳になります。将来的にこの事業を承継してくれる人もいませんので、私でこの事業は終わることになります。

夫婦二人で、なんとか食べていければいいという店です。大きく広げていくというより、今ある事業を続けながら、できることをやっていくという考えです。

――地域との関わりについて教えてください。

店が商店街にありますので、イベントもいろいろ行っています。コンサートなどのイベントもありますし、街に対するお手伝いはずっと続けています。

音楽に関わる仕事をしていることもあり、商店街の中で音楽を通じた場づくりに関わることがあります。自分の事業だけではなく、この街に対してできることを手伝っていくという形です。

カメラを持って街を歩き、人との会話を楽しむ時間

――リフレッシュの方法を教えてください。

趣味は街歩きです。カメラも趣味なので、カメラを持っていろいろな街を歩いています。特に商店街が多いです。街並みをカメラに収めていくことを楽しんでいます。

歩く場所は、中国地方が多いです。特に田舎の方が好きです。古い建物も残っていますし、その土地の人たちと会話を楽しむこともあります。そうした人とのやりとりも、街歩きの楽しみの一つです。

食べ歩きもします。街を歩き、建物を見て、写真を撮り、その土地の人と話をする。そうした時間がリフレッシュになっています。

音楽に関わる事業を続けながら、商店街という場所に身を置き、街との関わりも大切にしてきました。これからも、できることを一つひとつ続けながら、音楽を楽しむ人と街を支える歩みは続いていきます。

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