介護業界に新たな働き方を――“笑顔”を軸にした株式会社IMAIの挑戦
株式会社IMAI 代表取締役 今井 克真氏
介護業界において「働きやすさ」と「持続可能性」を両立させることは容易ではありません。そんな中、従業員の負担軽減と長期的なキャリア形成に焦点を当てた経営を実践しているのが株式会社IMAIです。訪問介護事業を中心に、独自の視点で業界の課題に向き合う同社。今回は代表取締役の今井克真氏に、事業を立ち上げた背景や経営の考え方、そして今後の展望について伺いました。
介護業界の課題に向き合い事業をスタート
――どんな想いで今の事業を始められたのか教えてください。
介護事業を始めたきっかけは、親の存在と当時のパートナーの影響が大きいです。一緒に生活する中で、介護職の給与が低いという現実を知りました。そこに課題を感じ、「もっと給与を上げられないか」と考えたことが起業の原点です。自分で会社を立ち上げれば、働く人により良い待遇を提供できるのではないかと思いました。
もともと小学生の頃から起業したいという思いは持っていましたが、具体的な事業内容が決まっていたわけではありません。
実際に起業する前は、個人事業主として動画編集やプログラミングなど、いわゆる“何でも屋”のような仕事も経験しました。ただ、それらは自分が本当にやりたいことではなく、時代の流れに乗った選択でした。最終的に、自分の中で納得できる事業として介護を選びました。
――現在の事業の特徴や強みについて教えてください。
現在は訪問介護事業を行っており、高齢者と障害者の両分野がありますが、当社は障害者支援に特化しています。利用者様のほとんどが障害をお持ちの方です。
強みの一つは、身内で事業を運営している点です。人材確保が難しい業界において、安定した人員体制を維持することは非常に重要です。当社では、事業の根幹となる人材が離職しない体制を整えており、事業継続の安定性につながっています。
また、理念として「えがお」という言葉を掲げています。利用者様だけでなく、従業員や関わるすべての人を笑顔にしたいという思いから名付けました。
特に重視しているのは“従業員ファースト”の考え方です。身体的負担が少なく、事務作業もほとんどない環境を整えることで、長く働き続けられる職場を実現しています。実際に高齢の方でも無理なく働ける環境づくりに取り組んでいます。
現場視点を大切にした経営判断
――経営者としての価値観や判断基準を教えてください。
経営判断をする際には、「自分がそのサービスを受けたいか」「10年、20年と続けたいと思えるか」という視点を大切にしています。利益も重要ですが、それだけで判断することはありません。現場で働いてきた経験があるからこそ、無理な仕事や現場に負担をかける判断は避けたいと考えています。
また、すべての利用者様を受け入れるのではなく、あえて“選ぶ”という判断もしています。一見すると福祉の理念に反するように思われるかもしれませんが、無理に受け入れることでサービスの質が低下したり、従業員の負担が増えたりすれば、結果的に継続できなくなります。
長期的に見て、利用者様や従業員、そして会社にとって最善の選択をすることが重要だと考えています。
――これまでのキャリアで転機となった出来事はありますか。
大きな転機は離婚でした。精神的には大変な経験でしたが、それによって守りの姿勢から一転し、挑戦する覚悟ができました。結婚していた時はどうしてもリスクを避ける思考になっていましたが、その状況が変わったことで、経営に全力で取り組めるようになりました。
“任せる”と“対話”でつくる組織運営
――組織運営で意識していることを教えてください。
自分は人のマネジメントが得意ではないと感じているため、その分野は信頼できる役員に任せています。適材適所で役割を分担することで、組織としての力を最大化しています。
コミュニケーション面では、毎月1回、必ず社員と直接話す時間を設けています。加えて、役員が社員と食事に行く機会もつくり、日常的なコミュニケーションを大切にしています。形式ばった場では本音が出にくいため、リラックスした環境で話せる機会を意識的に作っています。
――採用や育成で重視しているポイントは何ですか。
最も重視しているのは「やる気」です。ただし、短時間の面接だけで本質を見抜くことは難しいため、最終的には実際に働いてもらう中で判断しています。試用期間を通じて、仕事への向き合い方や利用者への対応を見ていきます。
また、履歴書の書き方や封筒の扱い方など、細かな部分からもその人の姿勢を見ています。とはいえ、中小企業では人材の選択肢が限られるため、まずは受け入れてから判断するスタンスを取っています。
社内の雰囲気は「暖かい」という言葉が一番しっくりきます。自由度が高く、社員同士で食事や買い物に行くなど、自然な関係性が築かれています。
未来を見据えた事業展開と業界への視点
――今後の展望について教えてください。
今後は相談支援事業の立ち上げを予定しています。その後、就労支援B型やデイサービスなどへの展開も視野に入れています。法改定の動向も踏まえながら、柔軟に事業を拡大していく考えです。
――業界の今後についてどのように見ていますか。
今後は大手企業への集約が進むと考えています。資本力のある企業がM&Aを進めることで、業界全体の構造が変わっていくかもしれません。その中で生き残るためには、経営力が不可欠です。
また、独自性も重要になります。他社にはない強みを持ち、それを時間をかけて積み上げていくことが必要です。経験はお金では買えないため、継続して積み上げていくことが大きな価値になると思います。
――現在の課題について教えてください。
最大の課題は人材の確保です。営業や利用者様の獲得については仕組み化できていますが、人材だけは非常に難しい領域です。業界全体の課題でもあり、今後も向き合い続けていく必要があります。
現場主義と学び続ける姿勢
――尊敬する人物について教えてください。
以前働いていた訪問介護事業所の社長を尊敬しています。非常に大きな事業所を一代で築き上げた方でありながら、腰が低く、現場にも出続けている姿勢に強く影響を受けました。独立する際にも多くのアドバイスや支援をいただき、その経験は今の経営にも活きています。
自分自身も現場に立ち続けることを大切にしています。経営者であっても、現場を知らなければ説得力がありませんし、現場の声を理解することができません。
――仕事への向き合い方について教えてください。
現在はほとんど休みがなく、1日10時間以上働くこともありますが、仕事そのものが楽しいと感じています。自分の判断や行動が結果として返ってくる環境にやりがいを感じています。
今後も、働く人が長く安心して続けられる環境を整えながら、介護業界に新しい価値を提供していきたいと考えています。